アベノミクスの”成果”に疑問を呈す

政務調査会成長戦略部会

アベノミクスの”成果”に疑問を呈す

平成29年9月1日
幸福実現党
政務調査会成長戦略部会

 
内閣府は8月14日に2017年4-6月期の国内総生産(GDP)を発表し、実質成長率が前期(1-3月)比で1.0%増えて6四半期連続のプラス成長になったことを明らかにした。しかし、アベノミクスによる“景気回復”に“実感”が伴っていないとの指摘が後を絶たない。当部会として、アベノミクスの“成果”について、以下の問題点を提示する。

 

1.名目GDPは、リーマン・ショック前の水準に戻ったに過ぎない。

・デフレ期には、統計的に加工された「実質GDP」ではなく、所得の実額を反映している「名目GDP」が生活者の“実感”に近い。ゆえに、“デフレ脱却”を議論する際には「名目GDP」の水準がどれだけ上昇したかに注目しなければならない。

・今回、「6四半期連続のプラス成長」となったが、この間の成長率は極めて低い水準に留まっている。名目GDPの推移(図1)を見てもわかる通り、第2次安倍内閣時において、確かに回復基調を示してはいるが、その速度は極めて緩やかで、GDPもようやくリーマン・ショック前の水準に戻ったにすぎない。つまり、安倍内閣は4年半かけて、ゆっくり「回復」させたにすぎず、「経済成長」を実現しているわけではない。また、2014年の5%から8%への消費増税などにより、景気回復が“人為的”に遅れたことを問題視すべきだ。

 

(図1)名目GDPの推移(1994~2016(年度))

出所:内閣府国民経済計算データから作成

 
・この度の4-6月期のGDP速報(1次速報値)では、実質GDPの成長率は前期比1.0%増(年率換算4.0%増)を記録。ただ、今回の数値に寄与した個人消費の伸びについては、リーマン・ショックの後に景気対策として打ち出された家電エコ・ポイント制度によって購入された白物家電の買い替え需要による影響や、前年度補正予算の執行による効果が大きいとされる。したがって、今回発表された比較的高い成長率は、今後も持続するとは限らない。

・さらに、有効求人倍率は、43年5カ月ぶりの高水準(2012年12月0.83倍⇒2017年7月1.52倍)にあるとされているが、その理由として、団塊世代の大量退職に伴い、構造的な人手不足が続いていることが指摘できる。

・パートやアルバイトなど非正規雇用の賃金は上昇しているものの、正規雇用含め、就業者全体の賃金は上昇トレンドにあるとは言い難いとする見方がある。

 

2.デフレ脱却に成功していない。

・日銀は2%の物価上昇率目標を掲げ、マイナス金利を含めた金融緩和政策を実施している。安倍政権として、金融政策や財政政策、成長戦略の政策パッケージでデフレ脱却を目指しているものの、(第二次)政権発足後4年半たった今もなお、道半ばである。

・消費者物価指数の値(図2)を見ると、2014年には2%以上を記録しているが、これは単に消費税の増税分の物価上昇に過ぎない。その後、2015年に急落し、2016年には総合指数、生鮮食品を除く総合指数でマイナスを記録している。また、月次ベースで見ると、2017年7月に、0.5%以下の値をとっている。

(参考)消費者物価指数は、実際の値より、1%ほど上振れる傾向にあるとする指摘もある。したがって、1%未満のインフレ率が観察されたとしても、実際にはデフレ脱却が果たされたとは言い切れない。

 

(図2)消費者物価指数

年平均(前年比 %)
2014年 2015年 2016年
総合 2.7 0.8 -0.1
生鮮食品を除く総合 2.6 0.5 -0.3
生鮮食品及びエネルギーを除く総合 2.2 1.4 0.6

 

月次(前年同月比 %)
2017年4月 5月 6月 7月
総合 0.4 0.4 0.4 0.4
生鮮食品を除く総合 0.3 0.4 0.4 0.5
生鮮食品及びエネルギーを除く総合 0.0 0.0 0.0 0.1
出所:総務省統計局HPより

 
・イオンやセブン・イレブンなどプライス・リーダーシップを持つ企業が軒並み値下げを行っており、その他にも家具大手のイケアなども値下げを敢行している。

・安倍政権は「アベノミクスの成果」を強調するが、デフレからの脱却は果たされておらず、その行き詰まりは明らかである。

 

3.明確な“国家ビジョン”や確かな“成長戦略”に欠けるアベノミクス。

・経済水準が、リーマン・ショック前のピーク時に回復後、どれほど伸びるかが重要であるが、現政権には“国家ビジョン”に当たるものが必ずしも明確ではなく、今後、「力強さ」のある成長を十分に期待することができない。

・デフレからの脱却、長期的な成長を実現するためにも、消費減税や法人減税などにより需要喚起を行うと共に、「国家百年の計」として、リニア新幹線、宇宙、防衛産業など未来産業に対する重点的な投資を国として行うべきである。

・また、企業による技術革新を推し進める上でも、研究開発促進税制の拡充も図っていくべきだ。

・若者は、「生涯所得が少なくなることへの不安が根強い」とも言われている。長期にわたる経済成長を実現し、経済的不安を払しょくし、将来に希望が持てるような政策パッケージを提示することも忘れてはならない。

 
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