【及川幸久 海外を分かり易く解説!】トランプの大減税は誰のため?

トランプチャンネル №24

 
こんにちは、及川幸久です。今日は、いつもより少し前のトランプ大統領のTwitterを見てみます。

突然予告された、大規模な税制改革と税額控除の発表
4月23日、トランプ大統領は、このようなツイートをしています。

 

「大規模な税制改革と税額控除についての発表を、来週の水曜日――来週の水曜日というのは4月26日を示しますが――にやりますよ」

 
と、これだけです。

Steven_Mnuchin_official_portrait

スティーブン・マヌーチン財務長官

この予告のとおり、4月26日(水)にホワイトハウスで記者会見を行いました。出てきたのは大統領ではなく、トランプ政権のスティーブン・マヌーチン財務長官です。マヌーチン財務長官は、トランプ政権の大規模な税制計画について発表し、この財政計画を「アメリカ史上最大の大減税である」と述べています。

ホワイトハウスから発表された、アメリカ史上最大の財政計画とは?
その内容は、どういうものか?

大きくいうと、「個人の所得税」と「企業の法人税」、その両方にわたって、大きく税率を下げるという内容です。今日は、「この個人の所得税」にフォーカスしてお話ししたいと思います。

現在のアメリカ制度では、累進課税が7段階あります。一番高いところで39%。この7段階ある累進課税を3段階に減らし、10%、25%、一番高くても35%という、このシンプルで低い税率に変えるということです。

さらに税額控除、夫婦2人のカップルの税額控除が、今は1万2000ドルぐらい(日本円で150~160万円)なのですが、これを倍の2万4000ドル(約300万円)まで無税にするという大きな税額控除も入っています。

複雑な税額控除は、基本的にほぼすべてやめる。また、税率を低くするので、抜け穴になるような税額控除も基本的にやめる。ただし例外として、宗教やチャリティーへの寄付金、住宅ローンの利払いなどは引き続き控除する、という内容です。

“そんなに税率を下げて、財源はどうする!!”

当然、このような質問が出ましたが、記者会見でマヌーチン財務長官は、「これらの減税による財源は、アメリカ経済全体の経済成長でまかなう」と、はっきり述べています。

 

なぜ、大減税を行うのか?

では、なぜ今、このような大減税をするのでしょうか。

トランプ大統領が選挙時から主張してきた経済政策は、3つの大きなポイントがあります。

  1. Job Creation(雇用を増やすこと)
  2. 経済成長
  3. 中間層から低所得者の家庭を支援する

 
アメリカ経済は過去20年間で3倍に大きく発展しています。しかし、アメリカ経済全体が3倍になっても、中間層の年収は過去20年間でまったく変化がありませんでした。

経済全体が3倍になっているのに、中間層の年収は変わらない。彼らのことをアメリカの経済成長から忘れられた人たち、“Forgotten People”という言い方をしています。

この“Forgotten People(忘れられた人たち)”のための政策が、トランプ大統領の経済政策の一番の目玉なのです。そのポイントが、この大減税にあたります。

 

たった1枚のメモに込められたトランプ大統領からのメッセージ

中間層の人たちに対して、ホワイトハウスから減税策が発表された時、集まった記者たちに資料が配られました。その資料が、実はわずか1枚の紙だったのです。たった1枚の紙、メモみたいなものですが、それが配られました。非常にシンプル。

このわずか1枚の紙に込められたメッセージ、それは何かというと、この中間層やそれよりもっと下の低所得者の方々は、皆、自分で納税するのですが、とにかくこの税制というのは複雑でよくわかりません。納税するにも、専門の税理士を雇わなければ、自分ではできないのです。

私も、アメリカに住んでいて実際に納税したことがありますが、これが本当に複雑なので、まずはいい税理士を探さなくてはいけない。また、その税理士に対するお金がすごくかかります。

税制が複雑というのは、どういうことか。腕のいい、専門の税理士を雇える人は、さまざまな抜け道を探して、本来払わなければいけない税金をどんどん減らすことができるわけですが、それができない普通の人たちは、ただその税制に従うしかないのです。

この複雑な税制のイメージを一新するために、「シンプルな税制にする」というのが、本当の目的です。税制をシンプルにして、アメリカに住む、普通の人たちにわかりやすくし、納得して税金を払えるようにすること、それが目的なのです。

 

今、必要となるトランプ大統領の税制改革

しかし、そもそもトランプ大統領の税制改革は、一体なぜ、必要なのか。

それは、ここ10年ぐらいのアメリカ経済の現状にあります。2008年、リーマンショックが起こりました。これ以来、アメリカ経済は戦後最低の低成長を続けています。この事態に、アメリカの個人も企業も苦しみ続けてきました。

その結果、アメリカ政府の借金が9年前は約10兆ドルだったのが、今では20兆ドルを超えています。日本政府の負債も大きいことは確かですが、日本はこの10年で倍にはなっていません。確かに増えていますが、そんな勢いでは増えていません。

アメリカ政府の負債の増え方は異常です。

この10年のアメリカ経済の停滞の中で、一番割りをくったのがこの中間層、“Forgotten People”です。彼らのための税制。しかし、これが実現できるかどうかはわかりません。

 

世界経済を変えるトランプ大統領の財政計画

一番よく言われるのが財源のことです。これからトランプ政権は、この財源問題にぶち当たることになります。

この税制改革を行うためには、議会で新しい法律を作らなければいけません。そして、議会を説得しなければなりません。その議会は今、FBI長官の罷免問題で大騒動になっています。ただでさえ大騒動になって、トランプ大統領に対しての不信感が積みあがっている議会を、説得しなければいけない。

この税制改革がはたして実現できるかどうか。これからが勝負です。

もしトランプ政権がこのアメリカ史上最大の大減税を実現することができたら、それはアメリカだけではなく、世界の経済を変えることになるでしょう。

“これは一つの革命なのです。”

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