こんにちは、及川幸久です。トランプチャンネル第25回では、トランプ政権が打ち出す大減税について解説を致しました。
トランプ大統領もう一つの目玉政策とは
今日は、大減税とともに、トランプ政権のもう一つの目玉政策について、トランプ大統領のTwitterではなく、アメリカの有力なメディアの一つであるUS News & World ReportのTwitterを見ていきます。
.@POTUS is considering paring tax reform and infrastructure overhauls at the same time. https://t.co/49E8v6Bmmq pic.twitter.com/JEpskjcHRu
— U.S. News (@usnews) 2017年3月28日
「合衆国大統領は今、税制改革とともにインフラの再建を同時に進めようと考えています」
という内容です。
トランプ政権がまさに税制改革と同時に実施しようとしているのが、約1兆ドル規模とも言われている大規模インフラ投資です。すごい金額ですが、「いったいそんなお金、アメリカ政府のどこにあるんだ。そんなことをしたら政府の負債が増えるだけだろう!」と言われていますが、現在のアメリカのインフラ、いったいどういう状況なのでしょうか。
現在のアメリカのインフラ状況とは
ニューヨークと首都ワシントンDCを結ぶアムトラックという鉄道があります。この鉄道で、2年前に大きな事故が起きました。事故の原因は、交通インフラが古すぎて十分なメンテナンスを行っていなかったことにありました。
アメリカでは、交通インフラに十分な投資がされていないため、鉄道だけに限らず、高速道路、空港、橋、ありとあらゆる交通インフラが非常に古い状況であるため、このような事故を引き起こしています。
このアムトラック、私もニューヨークとワシントンの間を行き来する時に、いつも使っています。このアムトラックの中にカフェトレイン(食堂車)がありまして、そこにフードサービスがあります。このフードサービス、チーズバーガーが約7ドル(800数十円)にも関わらず、とんでもなくまずい。このフードサービスだけで、アムトラックは年間8,700万ドル(約100億円)以上の赤字を出しています。
そして、このアムトラック全体に、国民の税金が投入され、毎年アメリカ国民の税金が14億ドル(約1,700億円)以上、使われているのです。
インフラを再建する方法とは
では、この古くなってしまったアメリカのインフラを、どうやって再建するのか。そのための資金は、いったいどこから集めるのか。その答えは、「起業家にやってもらう」―これが答えなのです。
アメリカという国は、すばらしい起業家がたくさん出てきたことによって、世界でもっとも偉大で、自由の気風にあふれた世界最大の経済大国です。
しかし残念ながら、ここ数年アメリカは、起業家にとって最も重要な「自由な空気」が失われつつあると言われます。特にオバマ政権の時代です。
では、アメリカの自由の雰囲気を失わせていった、その「犯人」は誰なのか?その犯人は、政府なのです。政府の支出が多すぎる上に、税金が高すぎる。そして、規制が多すぎる。結局、政府がアメリカ本来の力である「起業家たちの自由な雰囲気」を奪い取ってきたのが、この数年の出来事でした。
その結果、オバマ政権が始まる時、アメリカ政府の負債は約10兆ドルだったのですが、8年間のオバマ政権の間に、倍の20兆円になってしまいました。
もし先ほどのアムトラックの経営を、政府ではなく民間の起業家に任せていたら、全然違う結果が出たでしょう。民間の起業家がアムトラックのような交通インフラを経営する手法として出てきたのが、“Public Private Partnerships”という方法です。PPPもしくはP3と言われています。このPPPが、新しいインフラの経営手法です。
インフラの経営手法「PPP」とは
今まで税金を投入して道路や橋を造っていたのですが、そうした公共投資ではなく、民間資金を使って投資してもらう手法が「PPP」です。
ここ数年、地方の州政府によって、この「PPP」という手法が使われてきました。例えば、ワシントンDCの隣のバージニア州では、高速道路がすごく良く出来ているのです。必要な所に必要なだけの高速道路が通っており、そして料金が安い。
この高速道路は、「PPP」手法で造られています。民間経営者が、どこに高速道路を造り、パーキングエリアでどのようなサービスをするか、そしてどのような料金設定をすることが、一番効率的で利用者にとって良いかを、考え抜かれた結果、高速道路が出来ています。
その結果、政府のお金を使わないで済むというだけではなく、民間投資によって利益が出て、その利益が次の資金となって、新たな高速道路や橋を造ることができるようになっています。これがPPPです。
トランプ大統領が有権者と交わした契約書
トランプ大統領は、選挙期間中に自分の公約を、このような誓約書の形にして出していました。ドナルド・トランプとアメリカの有権者との契約書(Contract)です。ここに、自分が大統領になったらこれだけのことをしますよ、ということを書いています。この中に、実は「PPP」が出てきます。
自分が大統領になったら、議会と協力しあって新しい法律を作ります。それはインフラ法案であり、「PPP」という手法を使うことで、アメリカのインフラを再建させるということを記載しています。
雇用を増やす手法でもある「PPP」
この「PPP」を使うことによって、税金を使うのではなく、民間経営者の力をうまく引き出して、かつ、雇用を増やすというのが本当の目的です。この「PPP」によって、本当に1兆ドルもの投資ができたら、すごい数の雇用が生まれます。
政府の新しい役割
今、トランプ政権はFBI長官の更迭問題やロシアとの疑惑、さらに、トランプ大統領がロシアの外務大臣に国家機密を漏らしたのではないかという話題など、さまざまな話がアメリカのマスコミで報道されていますが、今話し合わなければいけないことは、もっと肝心なことです。それは、政府が新しい役割を示すこと。政府の新しい役割、それが”Public Private Partnerships”です。