【及川幸久 海外を分かり易く解説】トランプのイスラエル訪問は歴史を変えるか?

トランプチャンネル №27

 
こんにちは、及川幸久です。

中東問題について考えてみる
トランプ大統領が、就任後初の海外訪問の地として、中東を選びました。中東のサウジアラビア、イスラエル、そしてパレスチナ、この辺を今、回っています。

中東のことについては、我々日本人にとって非常に分かりにくいですね。今日は、このトランプ大統領のイスラエル訪問を話題として、中東についての基礎知識をカバーしていきます。

まず、イスラエルのネタニヤフ首相のTwitterを見ていきたいと思います。

 

 

「今日は歴史的な一日だった。私はトランプ大統領がウエスタン・ウオール、エルサレムにある「嘆きの壁」をアメリカ大統領として初めて訪問してくれたことに感謝している。彼こそ、イスラエルの真の友だ」

 
このように、トランプ大統領との会談のあと、ものすごく感情的に喜びをストレートに表したようなツイートをしています。

 

トランプ大統領とイスラエル・ネタニヤフ首相は旧友の関係

イスラエル ネタニヤフ首相

もともとトランプ大統領とネタニヤフ首相との関係は、古い友人関係でもあります。ネタニヤフ首相はオバマ前米大統領との関係で、ものすごく苦しみました。

オバマ前大統領は、ネタニヤフ氏の首相選挙に対して、アメリカから介入しています。ネタニヤフ政権を倒すことで、イスラエルにもっとリベラルな政権を立てようとしたためです。それにもめげず、ネタニヤフ氏は、選挙に勝って再選するのですが、その後、今度はイラン問題で、オバマ前大統領と非常にもめて、ネタニヤフ首相はカンカンに怒りました。そのあとオバマ政権が終わって、出てきたのがトランプ大統領だったわけです。

ネタニヤフ首相とトランプ大統領とは、ネタニヤフ首相が80年代に国連大使としてニューヨークに赴任していた時からの知り合いです。そして、ネタニヤフ首相がイスラエル首相選挙に出馬しているとき、トランプ大統領はアメリカから支援をしています。

 

アメリカとイスラエルの「特別な関係」

そして、このアメリカとイスラエルとの二国間関係は、Special Relation(特別な関係)と言われます。何が特別かというと、アメリカには同盟国がたくさんあり、日本もそのうちの一つですが、アメリカにとって2番目に大切な同盟国がイスラエルだと言われます。1番目はもちろんイギリスですが、その次に来るのがイスラエルです。

 

中東戦争とは?

アメリカとイスラエルは、もともとそんなに仲が良かったわけではありませんが、米ソ冷戦時代に中東戦争がありました。

中東戦争では、イスラエルとアラブ諸国の有志連合が戦いました。このアラブ諸国側のバックについていたのが、ソ連です。イスラエルは、ソ連がバックについているアラブ連合と戦い、勝ちまくるわけです。その結果、アメリカはイスラエルと急速に接近していきます。そして、今は、アメリカにとって2番目に大事な同盟国という地位を築いています。

 

イスラエルの抱える外交問題

イスラエルにとって、外交面で大きな問題が2つあります。1つ目がイランの核兵器問題。2つ目がパレスチナとの和平問題です。イスラエルにとってイランは、非常に大きな悩みの種となっており、イランが核兵器を持てば、いずれその核兵器によってイスラエル消滅を狙って戦ってくる。そのような、脅威を一番強く感じています。

これとまったく同じ図式が、日本にとっての北朝鮮ということになるわけです。そのような意味では、イスラエルと日本は、同じような立場にあります。違いがあるとすれば、イスラエルはすでに核武装していて、日本はまだしていないということです。

 

イランの核兵器問題

今回のイスラエル訪問で、トランプ大統領は重要なことをコミットメントしました。それは「決してイランに核兵器は持たせない」ということを約束したのです。これはイスラエルにとっても、本当に大きなことです。

もともとイランは、西側諸国に経済制裁をされていましたが、オバマ前大統領が2015年に、この経済制裁を解くという取引をします。そのかわりに、「核開発はあまりやるなよ」―という制限を加えたのですが、この制限が非常に甘い制限で、実態としては、イランは核開発をどんどん進め、それだけにとどまらずに、テロリストに対して、資金を与え、訓練をし、武器まで与える――。

今、ISISをはじめ、多くのテロが世界で起きている問題の根底にあるのは、実はイランなのです。

結局、オバマ前大統領は中東のイランに対して核開発を許し、アジアでは北朝鮮に核開発を許し、二つの新たな核保有国をつくるのを助けた大統領でもあります。オバマ前大統領は、「核なき世界」という演説をしてノーベル平和賞を取った人ですよね?しかし、その実態は、こういうことでした。

今回、トランプ大統領とネタニヤフ首相は、イランには決して核を持たせない。そして、これ以上、テロリストを支援させない。ということで一致したのです。

 

最も難しいとされる、パレスチナとの和平問題

イスラエルにとって、もう一つの大きな問題。それはパレスチナとの和平問題です。この問題には、アメリカの歴代大統領が介入し、仲介役を演じてきましたが、ことごとく失敗してきました。

この問題は、非常に難しく、トランプ大統領もこの問題について、“The Ultimate Deal(究極の取引)”、世界でもっとも難しいdeal(取引)と述べているのですが、同時に、「決して、解決できない問題ではない」とも述べています。

トランプ大統領はいつも、ビジネスマンとして、deal(取引)に対しては、粘り強い交渉が大事なのだ、と述べています。トランプ大統領の粘り強い交渉姿勢が、このイスラエルとパレスチナの和平に、新しい道を拓くか。これは注目です。

 

歴史的な聖地でもある東エルサレムを訪れたトランプ大統領

エルサレム「嘆きの壁」

トランプ大統領は、イスラエル訪問中に東エルサレムに訪れるという重要な動きをしました。

東エルサレムとは、「ユダヤ教」、「キリスト教」、そして「イスラム教」の聖地が集まっている歴史的な場所です。私も行ったことがありますが、エルサレムという町はもともと東西に分かれており、実は西側のエルサレムはイスラエルの領地ですが、東エルサレムという場所は領有権がいろいろ変わって問題になっているのです。現在は、パレスチナが、東エルサレムを首都だと主張していますが、実態はイスラエルが実効支配しており、これが問題となっています。これまで、歴代のアメリカ大統領が決して足を踏み入れることがなかった、東エルサレムにある「嘆きの壁」にトランプ大統領は訪れました。ネタニヤフ首相がTwitterで「大変感謝する」と大喜びした理由はここにあります。

 

 

東エルサレムの「嘆きの壁」を訪れたトランプ大統領の意思

トランプ大統領は、何故あえて問題の渦中である東エルサレムに足を踏み入れたのか。それは、「この問題をこれ以上、現状のままにはしないぞ」という意思表示だと、私は思っています。

これまで、歴代のアメリカ大統領が仲介をしても、結局解決しなかった。しかし、もうこれ以上、この問題を残しておくことは世界やアメリカのためにもならない。したがって解決をする――という意思表示だと思うのです。

アメリカは「世界の警察官」と言われながら、中東に対して十分な知識がなく、下手な介入を繰り返すばかりで、結局問題は解決せず、今日に至っています。しかし今、大事なことは、誰かが勇気を持って、断固としてこの問題に取り組むことです。

アメリカ大統領が自分のレガシー、歴史に残るような“遺産づくり”のために、この問題に手を突っ込むと、決して上手くいきません。

私は、トランプ大統領の交渉術によって、“新しい世界”の道が拓けることに期待しています。

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