こんにちは、及川幸久です。
5月23日、トランプ大統領が就任後初の海外訪問中、ホワイトハウスではトランプ政権の予算案の発表がありました。
トランプ政権による予算案の発表
トランプ大統領が選挙期間中からずっと繰り返し述べているとおり、「軍事費を大幅に増やすことで、強いアメリカをつくる。」その一方、その他の政府予算を大幅にカットしています。
この予算で特にカットされているのは、福祉関係や地方への補助金です。これに対して、アメリカのマスコミは早速、貧しい人たちに対して冷たい予算だと酷評しています。
予算は、大統領が勝手に決めることができません。大統領は予算案を議会に提出し、議会はそれに基づいて新しい予算の法律を作ることになります。マスコミは、議会はこの予算案を見て、「とてもじゃないが、こんな予算案は地元有権者に話せないと述べている」と報道しています。
納税者のための予算案
ポール・ライアン
こうした中で、トランプ政権の予算案について、まったく違った見方をしている人がいます。それが、ポール・ライアン下院議長です。
今日は、このポール・ライアン下院議長のTwitterを見てみます。
President Trump's budget prioritizes taxpayers over bureaucrats, while making our military and our economy stronger. https://t.co/4dqy5FNUn6 pic.twitter.com/ZMVXMylecB
— Paul Ryan (@SpeakerRyan) 2017年5月23日
「トランプ大統領の予算案は、官僚ではなく納税者を優先する予算になっていて、我が国の軍事力と経済力を強めるだろう」
このように述べています。
予算が、官僚ではなく納税者のための予算になっている――これは、いったいどういう意味なのでしょうか?
それは、今までの予算が納税者のためではなく、官僚や政治家のためのものだったということを表しています。
アメリカの予算は、4兆ドル(約450兆円)ほどの規模です。日本の国家予算が、一般会計と特別会計を合わせて約200兆円以上だとすると、その倍ぐらいの規模ですね。
アメリカの会計年度は、10月1日から始まります。今回トランプ政権が提出した予算案は、今年の10月1日からの2018年度分です。この予算案を9月までに決めて、10月1日からスタートさせるわけです。
オバマ政権時代の予算
では、トランプ政権が提出した予算案は、どういう内容なのか。ポール・ライアン下院議長の説明によると、オバマ政権時代の予算と比較して、このような言い方をしています。
「我々はついに、オバマ時代に膨張し続けた国家予算を止めることができる」
オバマ政権時代には、どのような予算だったか。それは、福祉や補助金のお金がどんどん膨張していく一方、軍事費はどんどん減らされる。そのため、経済発展が起こりません。
その結果、オバマ政権が始まる前のアメリカ政府の負債が約10兆ドルだったのですが、わずか8年間で20兆ドルに倍増しました。日本政府の負債も大きいですが、しかし8年で倍にはなりません。結果、大変な負債を抱えた国家になったのです。
小さな政府を実現する予算カット
トランプ政権の予算は、オバマ政権時代に行ってきたことを反転させるというものです。
まず、予算編成の方針は、国を守るための国防総省、そして国境を守る国土安全保障庁、この2つは予算を増やしますが、それ以外の省庁は、大幅に予算カットとなります。
例えば、
- 国務省は3割カット。
- 環境保護庁も3割カット。
- 労働省は2割カット。
- 教育省は、13.7%カットする。
- 運輸省も12.7%カット。
このような減らし方は、日本の政治では考えられないですね。
例えば、文科省。高等教育の無償化や加計学園の獣医学部許認可問題、その前には文科省の役人の天下り問題、これらはすべて予算、利権に絡まったことです。その文科省の予算をアメリカと同じように13.7%もカットする――あり得ないことです。
つまり、トランプ政権の予算は、小さな政府をつくることで、政府の役割を縮小し、仕事の効率を上げるという考え方なのです。
労働者の尊厳を大切にする予算案
そこで問題になるのが、福祉です。福祉は一体どうなってしまうのか。
トランプ政権の考え方では、現在、重複した福祉プログラムがたくさんあることによってムダが起きているため、そのムダを無くしていくという考え方です。
地方への補助金や福祉プログラムは、ほぼ同一のものがいくつもあり、それによって資金がだぶついている。これらすべてに関わっている官僚や関係者、政治家の利権が存在しているため、思い切って整理するのです。
考えてみれば、1月20日のトランプ大統領の就任式で、このような演説をしています。
「現在、仕事がなくて生活保護を受けている人たちには、仕事を与える。そして、アメリカの労働者の力を結集して、アメリカ経済を再建しよう」
このような演説をしていました。まさに公約の通り、今まで生活保護を受けていた人たち、例えばフード・スタンプというプログラムによって、国家の税金からお金をもらって食べていた人たちには、仕事を与える。仕事さえあれば働くことができる人たちを、労働力に変えていく。ここに、労働者としてのDignity(尊厳)が表れてきます。
国民の人生を変える支援も政府の役割
トランプ政権による全く新しい予算を、“Taxpayers first budget”(納税者ファースト予算)といいます。これは、納税者のための予算であり、政府財政を均衡させ、赤字を減らしていく。そして、3%の経済成長を達成していくための予算案になっています。
ポール・ライアン下院議長のTwitterにあるとおり、この予算案は、税金を払う人たちの視点で作られた予算なのです。今までフード・スタンプによって生活していた人たちを、アメリカの労働力に変える――そのようなことができるのかと、確かにそう思います。
しかし、それが実現したら、その人たちの人生に“尊厳”が生まれます。単に政府が食事を与えるだけではなく、国民の「人生を変えること」を支援する。それも政府の役割です。