「便利になる」「行政効率が向上する」というイメージが広がっているマイナンバー制度。しかし、実際には、大きな危険を抱えた制度なのです。この国を安心して住みよい国にするために、国民一人一人がマイナンバー制度の危険性を知る必要があるでしょう。
〇マイナンバー制度とは?
国民一人一人に生涯使う番号を割り当て、あちこちに分散する個人情報を、役所が一元管理するもの。今年10月から各世帯に「通知カード」が届き始め、来年から利用開始となります。最初は、「社会保障」「税」「災害」の三分野で使われる予定です。
また、現在、財務省は、消費税を10%に増税した際に、マイナンバーを利用した還付金給付システムを提案しています。将来的にはさらに利用範囲が広がり、預貯金口座、健康保険証、戸籍、健康診断、パスポート、クレジットカード、民間ポイントカード、交通ICカード、図書館利用などの情報を国家が一括管理する可能性があります。
◎マイナンバー制 5つの問題!
①「財産税」への道になる
マイナンバーが銀行口座などと連結すると、税務当局は個人の資産を把握できます。その結果、金融資産などに課税する「財産税」を掛けることが容易になります。実際、「マイナンバーによって金融資産課税へのハードルが下がる」とする識者の声もあります。
しかし、財産税をかけることは、富裕層や資本を海外へ流出させることになるのです。
②国家による“監視社会”を招く
マイナンバー制度が銀行口座やクレジットカード、健康保険証、戸籍などに拡大していくと、収入から資産、そして生活まで、国家の管理下に置かれてしまいます。国家によってプライバシーが侵害され、国民の「自由」が奪われていきます。
また、万一、独裁的な権力が誕生した場合、治安維持や事件捜査を名目に、個人情報を調べ上げ、国民を監視することができます。
③情報流出リスクが高い
本年6月、125万件に及ぶ年金情報の漏洩が発覚しましたが、利用範囲が拡大するためマイナンバー制度の情報流出リスクはさらに大きいと言えます。しかも、情報が芋づる式に漏れるため、被害も甚大です。
また、諸外国では、こうした共通の社会保障番号に対する危険性が指摘されています。アメリカでは「なりすまし」による被害が、2006年~2008年の3年間で1170万件となり、被害額は毎年5兆円に上るという調査もあります。韓国では、昨年1月、約2000万件の住民登録番号などが流出。アメリカや韓国では、共通番号の使用を見直す動きが始まっています。
④民間企業への負担が大きい
民間企業は自前でセキュリティシステムを用意しなければならず、対応におけるコスト負担の平均額は約109万円。従業員数が多くになるにつれて上昇し、1000人超の企業は平均約581万円を負担することになります(帝国データバンク調べ)。民間にとってはメリットよりも義務感の方が大きいと言えるでしょう。
また、民間企業は、社員のマイナンバーを厳正に管理することが求められます。万一、従業員などの情報を外部に漏らすと、最高で4年以下の懲役や200万以下の罰金刑を科せられます。
⑤多額の費用がかかるが、効果はあまり期待できない
マイナンバー制度の導入には、約3000億の予算が必要とも言われ、総工費が高すぎるとされた「新国立競技場」を上回る費用が掛かります。しかし、数千億単位の投資をしたとしても、捕捉できる税収は未知数で、投資額を下回るという研究もあります。
費用対効果が期待できないならば、監視社会を招き、個人情報流出の危険を犯してまで導入する必要などありません。