【及川幸久 海外を分かり易く解説】国家に献身した真の英雄たち

トランプチャンネル №32

 
こんにちは、及川幸久です。

 

戦死者を追悼する『メモリアルデー』


アーリントン国立墓地

アメリカでは、5月の最後の週の月曜日は「メモリアルデー」という、過去の戦争で戦死された方を追悼する日となっています。

この日アメリカ合衆国大統領は、必ずワシントン郊外にある「アーリントン国立墓地」へ慰霊に訪れます。合衆国大統領であり、米軍最高司令官として最も大切な任務の一つだからです。

日本で例えると、靖国神社に天皇陛下や内閣総理大臣が参拝に行くのと同じ意味ですが、日本は、残念ながらそのようにはなっていません。

今日は、5月29日のトランプ大統領のTwitterを見ていきます。トランプ大統領は以下のように述べています。

「私は今日このあと、アーリントン墓地に眠っている私たちの勇敢なる男女兵士たちのために、敬意を表しに行くことが大変楽しみだ」

 

国民に尊敬されるアメリカ軍人

私がアメリカに住んでいた頃、一番勉強になったのは、民間のアメリカ人たちが、アメリカを守るために戦った軍人たちに対して、リスペクト(尊敬)しているということです。

例えば、空港ビルの中でアメリカ軍の制服を着た人たちが集団移動している時があります。そうした制服を着た軍人たちに気づいたら、人々はすぐ道をあけて、そして全員が拍手で彼らを送ります。

 
また、飛行機に1人でも制服を着た軍人がいたら、必ずその飛行機のCA(キャビンアテンダント)は機内アナウンスで「今、この機には光栄なることに、○○さんという軍人の方が搭乗しています」とアナウンスして、機内にいる乗客たち全員で拍手をします。

(下:アメリカン航空のCM)

 
なぜ、このような事が起きるのか。それは、国民一人一人が自分たちの生活が、アメリカ軍一人ひとりの命を懸けた奉仕によって、成り立っているということを知っているからです。

 

一人の兵士と家族に向けられた、トランプ大統領のメッセージ

さて、アーリントン国立墓地を訪れる3カ月前、トランプ大統領は、就任後はじめてアメリカ議会で演説をしました。この日のトランプ大統領の演説は、大注目でした。なぜならば、選挙期間中のトランプ大統領は、いつも失言・暴言を続けていたので、大統領として議会でいったいどのような演説をするのかを、国民すべてが注目していたのです。しかし、まったく予想外に、静かな語り口による演説でした。

そしてスピーチ途中、トランプ大統領は、ライアン・オーエンズというアメリカ海軍兵士について語り始めます。

ライアン・オーエンズ氏は、1カ月前に中東イエメンで、テロリストとの戦闘中に戦死しています。彼は、トランプ政権が始まってから初の戦死者なのです。

そして、ライアン氏が属していたのはアメリカ海軍特殊部隊SEALSでした。SEALSとは、アルカイダのビン・ラディンを殺害した部隊です。

トランプ大統領と娘のイヴァンカ・トランプ氏は、ライアン氏が戦死したあと、遺体がアメリカ空軍基地に帰ってくるまで、基地で出迎えていました。そして、この日の議会演説の中で、トランプ大統領はライアン氏について、このように語りました。

「ライアンは、アメリカとアメリカ国民を守るために、偉大なる任務を果たした。そして彼のLegacy(遺産)は、アメリカの歴史に永遠に刻まれる」

 
会場には、ライアン氏の奥さんが招かれていました。会場にいる人たちは、奥さんがいることを知っていたため、トランプ大統領の言葉を聴いた聴衆は総立ちで、奥さんに向かってスタンディングオベーション、拍手をしました。

拍手を受けた奥さんは一人、涙でいっぱいになっていました。それでも、会場にいる人たちは、ずっと拍手を送っていました。

この日のトランプ大統領の演説は、1時間にもわたる演説なので、事前に原稿が用意されていました。しかしこの時、原稿にはないアドリブのような言葉で、傍聴席にいるライアン氏の奥さんに、このように語りかけ始めます。

「ライアンは今、この場所にいるよ。この上のほうにいて、上から私たちを見ているんだ。そしてその表情は、とても幸せそうだ。なぜならば彼は今、アメリカの歴史を塗り替えたから」

この言葉を聴いたライアン氏の奥さんの表情は、涙の顔から笑顔いっぱいに変わります。会場の人たちは、笑顔に変わった奥さんに対して、再び、喜びの拍手を向けます。その拍手は、鳴り止みませんでした。

私は、毎回アメリカ大統領の議会演説を聴いていますが、このような演説は聴いたことがありません。そして、大統領の議会演説で感動して涙が出たのは、この時が初めてでした。

CNN  YouTubeより https://youtu.be/1y7soOGq5z0

CNN  YouTubeより https://youtu.be/1y7soOGq5z0

 

議会演説について報道したメディア

翌日、この演説をアメリカメディアは一斉に報道します。そして、いつもトランプ大統領に対して辛辣な批判的なコメントをしているCNNのコメンテーター、ヴァン・ジョーンズ氏がコメントをしています。

「トランプはあの瞬間、本当の意味で合衆国大統領になった」

 

ヴァン・ジョーンズ

ヴァン・ジョーンズ氏は、オバマ大統領時代の、ホワイトハウスのスタッフだったのです。そのため、トランプ大統領とは、考え方がまったく逆であり、いつも批判的でした。

アメリカのマスコミは、CNNのヴァン・ジョーンズ氏のコメントのほうに驚いてしまい、このコメント自体が大ニュースになりました。

 

Make AMERICA great again

トランプ大統領の公約は、

Make AMERICA great again
(アメリカをもう一度偉大な国にしよう。)

 
かつてのアメリカは、「アメリカの使命とは世界を自由と繁栄に導くことである」――これを大統領や政治家だけでなく、国民も信じていました。現在のアメリカは、経済が衰退し、特に中間層の生活は疲弊し、オバマ前大統領は、「アメリカはもう世界の警察官ではない」と、アメリカの衰退を認めるようなこと述べていました。

しかし、トランプ大統領は国民に対してMake AMERICA great again(もう一度アメリカを偉大な国にしよう)を訴えるために、この議会演説中に、国家のために命を捧げたライアン・オーエンズという偉大なるヒーロー、英雄を採り上げて、国民に語りかけたのです。

 

私達が決して忘れてはならないこと

「偉大な国」とは、経済力や軍事力だけではできません。国民一人ひとりが真の意味での英雄、真の意味でのヒーローに対するリスペクト(尊敬)が必要です。

アメリカのアーリントン墓地に祀られている人々、そして日本の靖国神社に祀られている人々も、真の意味で私たちのヒーローです。

私たちはこの英雄たちを、決して忘れてはいけない。

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