【及川幸久 海外を分かり易く解説】トランプのパリ協定離脱の真意とは?

トランプチャンネル №34

 
こんにちは、及川幸久です。

 

アメリカの「パリ協定離脱」を正式に発表

6月1日、トランプ大統領は、アメリカの「パリ協定離脱」を正式に発表しました。それによって、さまざまなトランプ批判がマスコミやインターネットでヒートアップしています。特にアメリカのセレブや有名人からヨーロッパ各国首脳まで、公然とトランプ大統領を批判しています。

みなさん何が言いたいかというと、「”地球温暖化”というこの大きな問題を一番作っている国の一つ、アメリカがパリ協定から離脱し、好き放題することによって、地球の温暖化は致命的なレベルを超えて、私たちはみんな死ぬ――」という話です。

 

トランプ大統領の真意とは?

では、トランプ大統領の真意はいったい何なのか?

その答えは――パリ協定とは、アメリカにとって”ハンディキャップ戦”の試合になるため、参加を取りやめるということです。

今日のTwitterで、トランプ大統領はこのように述べています。

「私の大統領としての仕事は、国際競争の中でアメリカのハンディをなくすこと。公平にすること。そのために、自分ができることをすべてやること。これが私の仕事だ」

 
“a level playing field”とは、「ハンディをなくす」ということです。”playing field”とは、テニスやサッカーのグラウンドやコートのことです。

それをlevel(平らにする)、平らなグラウンドのことを意味します。つまり、競争においてのハンディをなくすということを意味しています。

現在のアメリカは、パリ協定によって完全にハンディキャップ戦を強いられているということを述べています。ここに、トランプ大統領の「パリ協定離脱」の真意が込められています。

 

そもそも「パリ協定」とは?

パリ協定の目標とは、産業革命前からの世界の平均気温上昇を「2℃未満」に抑えることです。問題は、「温室効果ガス」というもので、この温室効果ガスが原因で、地球全体の気温が上がっているというのが、その前提です。

そして、世界で温室効果ガスを排出している第1位は中国、2位がアメリカ、3位がインド、この3カ国で全体の半分近くを占めていると言われています。

そこで、先進国を中心に、この温室効果ガスを削減していきましょうという誓約をしています。

 

削減目標

  • 日本は26%削減
  • アメリカは26~28%削減
  • ヨーロッパはEU全体で40%削減

 
実際には、「2005年に遡って2020年までにこうします」等々、その国によって期間が違うため、一概に比較することはできないのですが、非常に大きな温室効果ガス削減目標を出しています。

 

「パリ協定の実態」とは?

しかし、ここで私たちが目を向けなければいけないのは、「パリ協定の実態」です。例えば、「パリ協定」には中国も参加していますが、どのような目標を出しているかというと、「GDPの成長率に対して、CO2の排出量を2005年から60%削減する」と述べています。

この「GDPの成長率に対しての削減目標」という部分がポイントで、中国は毎年GDPが上がっていくので、実質的に削減目標はほぼゼロということになります。そして、何故か2030年までCO2の排出量を削減する努力をしなくてもいいことになっており、向こう13年間は中国のやりたい放題です。

さらに、「パリ協定の実態」として、参加コストが高い割には、それに見合う効果は極めて低い。もし、「パリ協定」に参加しているすべての国が、経済にどのようなダメージを受けようとも、自主目標に対して温室効果ガス削減に取り組んだとして、2100年までに世界の気温上昇をどれだけ抑えられるかというと、0.17℃です。

そもそも、「パリ協定」の目標は、産業革命前に遡って、地球全体の気温上昇を2℃未満に抑えることだったのですが、実際に抑えられるのは、ほぼゼロです。

 

「パリ協定」に支払う代償とは?

もし、アメリカが「パリ協定」にそのまま残り、目標を実行したとしたらどうなるでしょうか?

2025年までに、アメリカの製造業だけで、44万人分の雇用を失うと想定されています。また、全体では650万人の雇用を失います。そして、各家庭の平均年収は7000ドル(80万円)減ることになります。GDPにおいては、2040年までに3兆ドル減ることになります。これが、地球温暖化のためにアメリカが払うコストです。これだけ高いコストを払うにも関わらず、効果はほぼゼロなのです。

さらに「パリ協定」に参加することで、国民の税金を無駄に使います。パリ協定には、Green Climate Fund (GCF) というものがあり、「パリ協定に参加する国々を先進国と途上国に分け、先進国がファンドにお金を出しましょう。先進国がお金を出し合い途上国のために使うことで、地球温暖化防止のために温室効果ガスを削減してください」というファンドです。

 

アメリカの「パリ協定」参加は、議会承認されていない

このファンドは、2020年までに1000億ドルを集めることになっており、オバマ前大統領は、このファンドに対して、約3割をアメリカが持つと約束しています。また、もうすでにお金を一部出してしまっていますが、アメリカ議会は承認していません。

そもそもアメリカの議会は、「パリ協定」への参加自体を、正式に承認していないのです。本当は議会承認を採らなければいけないにも関わらず、オバマ前大統領は議会承認なしにサインをしてしまったのです。

 

中国は、何もしなくてよい?

上海の大気汚染

そして、「パリ協定」最大の疑問の一つが、中国です。Green Climate Fund(GDF)は、先進国と途上国に分けて、先進国がお金を出すことになっていますが、中国はなんと「途上国」なのです。そのため、中国はファンドに対して、お金を一切出しません。

中国こそ、史上最大の大気汚染の問題を抱えていて、地球温暖化問題に一番直面しなくてはいけないはずですが、向こう13年間は何もしなくていいことになっています。
それどころか、石炭はどんどん使っていいことにもなっています。これが「パリ協定」なのです。

 

「パリ協定」は、各国の経済成長率を下げることが目的

結局「パリ協定」とは、国際リベラリズム(共産主義の変形)の典型なのです。リベラリズムなので、例えば日本政府は「パリ協定」を使って新しい「炭素税」という税金をつくろうとしています。これによって増税ができるわけです。

したがって、地球温暖化対策は、世界各国の経済成長の足を引っ張ることになります。そして、経済成長率を下げることこそが、リベラリズムの本当の目的なのです。リベラルは、地球に優しいフリをして、本当の狙いは経済成長を止めることなのです。

これが「パリ協定の正体」です。

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