「フジサンケイ・ビジネスアイ」WEBサイトに、連載記事【太陽の昇る国へ】が掲載されましたので、その一部を転載いたします。
**********
--社会保障政策の現状をどうとらえますか
今月15日に、政府の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」が閣議決定されました。しかし、残念ながら、社会保障政策の具体的ビジョンが十分に示されているとは言えません。
日本は、団塊世代が75歳以上となる“2025年問題”や、高齢者の数がピークとなる“2040年問題”をはじめ、少子化に端を発する人口の構造的問題に直面しています。
そして、年金制度において、高齢者をそのときの現役世代で支える「賦課方式」が採用されるなど、世代間の不公平をもたらしている社会保障制度自体にも、本質的な問題があると言えるでしょう。
“支えられる側(65歳以上)”1人に対し、“支える側(20~64歳)”の人数は、1965年が9.1人、2012年が2.4人、2050年は1.2人であると推計されています。
これに従えば、今後、現役世代に対するさらなる増税や、保険料負担の増大が強いられることも、十分に想定されます。
日本は今、制度のあり方の見直しを含め、問題解決に向けた抜本策を提示しなければならない状況にあるのではないでしょうか。
--あるべき方向性は
まず、高齢者に関して、“支えられる立場”から“支える立場”へと考え方を変容させる必要があると思っています。
マレーシアでは92歳のマハティール氏が首相に返り咲き、アメリカでは72歳のトランプ氏が大統領として重責を果たしています。昨年亡くなられた渡部昇一先生も、生涯にわたって言論活動を続けてこられました。
現在行われているFIFAワールドカップ・ロシア大会では、サッカー日本代表・西野朗監督(63歳)がこれまでの経験を生かして好采配を振るっています。これからのシニア世代の方々に、末永くご活躍頂けるよう、幅広く環境整備を行う必要があるのではないでしょうか。
最近、与党から、「エイジフリー社会」到来の必要性の認識が示されましたが、毎年およそ1兆円にのぼる社会保障費を増加させ続け、「増税やむなし」という状況を形成しようとしてきたのもまた、政権与党です。
私はかねて、“生涯現役社会”の必要性を訴えてきました。税負担の圧迫などにより、シニア層の増大が若者のやる気や気力を失わせるような社会ではなく、年配の人と若い人が共存して繁栄する社会の実現こそが大事だと考えています。
2017年版高齢社会白書によると、現在働いている60歳以上の方のうち、約8割が「今後も仕事を行いたい」との旨を回答しているように、シニア世代は働くことに対してポジティブに捉えています。