ワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)の活用の問題点

幸福実現党政務調査会ニューズレター No.25(2021.9.10)

幸福実現党政務調査会
2021年9月10日
No.25

 

ワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)の活用の問題点

 

政府は、新型コロナウィルスのワクチン接種証明書の活用に向けて、9月9日に方針を示しました。活用には、飲食店やイベント等での証明書の提示を事例として挙げており、今後、非接種者への人権侵害が助長されかねません。また、政府が感染症対策の名目の下、自由を制限し、国民を監視していくことは全体主義への道です。政府も、ワクチンの効果の限界を認めており、ワクチン接種証明書の活用が感染対策と経済再開の両立となるかは疑問が大きいです。こうした不確実な制度で、国民の自由を大きく抑圧してはなりません。幸福実現党政務調査会としては、このようなワクチン接種証明書の活用には、断固反対であり、即時見直しを政府に強く求めます。

 

ワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)の活用の問題点

 

1. ワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)とは、政府の経済再開の切り札

ワクチン接種証明書は、ワクチンを接種したことを示す証明書になります。

これによって、政府は、経済再開の起爆剤となることを期待しています。緊急事態宣言等によって、経済を止めたことによって、不況が深刻化しています。ワクチン接種によって、自由な行動を許可すれば、経済を再開できるとバラ色の未来を描いているわけです。

 

ワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)の活用の問題点

 

2. 問題点① ワクチン接種証明書の感染症対策の効果は疑わしい

ワクチン接種しても、感染は防げない(ブレークスルー感染)

しかし、そもそもワクチン接種証明書は、感染症対策として機能するか疑問が残ります。
ワクチン接種を二回しても、感染することはあります。これをブレークスルー感染と呼びます。

 

デルタ株は、ブレークスルー感染を増やしている

日本におけるコロナの陽性者のうち、インド発祥のデルタ株が8月末時点で、9割以上となっておりますが(*1)、イスラエルの報告では、デルタ株によって、ワクチンの有効性(感染予防)が9割近くから、63%まで減少したと言われています(*2)。つまり、デルタ株には、ワクチンが効きづらいことを示唆しています。

 

ワクチン接種をしても人に感染させることがある

もちろん、ワクチン接種をすれば、重症化を防ぐとよく言われます。しかし、たとえ重症化せず、無症状感染であったとしても、人に感染させるリスクは残り続けます。

特に、ワクチン接種者も、鼻の中まで免疫を維持し続けるのは難しいと指摘されています(*3)。ある実験では、ワクチン接種者もそうでない人と同じように、デルタ株を増殖させ、人に感染させる能力があると報告されています(*4)。つまり、無症状の接種者が飛沫感染を引き起こす可能性が示されたわけです。

実際、アメリカでも、ワクチン接種者が、自主的な感染対策をほとんど講じなかったことが原因で、ワクチン接種をした人がデルタ株を拡大させていると報じられています(*5)。つまり、ワクチン接種証明書によって、お上からの「免罪符」を国民に贈れば、かえって感染拡大も起こりかねません。

 

ワクチンの有効期間は短いという説もある

ちなみに、厚生労働省は、先述のイスラエルのブレークスルー感染の理由として、ワクチン接種から長い時間(半年)が経過していることを挙げ、イスラエルが3回目の接種を進めていることを紹介しています(*6)。つまり、ワクチン接種証明書が発行されたとしても、本当に体内の中で、免疫が残っているのかが不明なわけです。

なお、ワクチン接種を2回ではなく、効果が切れる度に接種すればいいという考えもあります。しかし、その場合、ワクチンの効果が切れたら、その度にワクチンを接種しないといけなくなります。それは半永久的にワクチン接種を続けることを意味するかもしれません。

 

ワクチンが効かない変異株が生じうる

また、これからワクチンが効かない変異株が生じる可能性もあります。WHOによれば、注目すべき変異株(VOI)として、インド発のカッパ株(*7)やコロンビア発のミュー株(*8)などを挙げており、これらはワクチンの効果を弱める可能性が指摘されています。

加えて、東京五輪のせいか、日本でもデルタ株のさらなる変異株も発見されています(*9)。つまり、日本型変異が発生したのではないかということが示唆されたわけです。こうした新たな変異がワクチンの有効性を更に下げることもあり得ます。

ちなみに、こうした変異株の発生を防ぐためにも感染の数を減らすべく、ワクチン接種を進めるべきだという意見があります。これには一定の合理性はあるでしょうが、ワクチン接種を希望しない人に、事実上接種を強制するワクチン接種証明書を導入することなど断じてあってはありません。

なお、コロナが生物兵器である可能性を幸福実現党は指摘していますが(*10)、その場合、新たな変異株に偽装した生物兵器による攻撃も想定されます。つまり、変異株の発生を防ぐという戦略は水泡に帰すということです。

 

ワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)の活用の問題点

 

3. 問題点② ワクチン接種証明書で、憲法の基本的人権が侵害される

接種証明書なしで、飲食店の利用ができなくなる恐れ

政府は、接種証明書の活用によって、営業時間、酒類提供、会食等の制限を緩和する方針です(*11)。「接種者と未接種者が分け隔てなく利用できるよう」としつつも、具体例として、接種証明書を「利用したグループの会食については、人数制限を緩和」としています。明らかに自己矛盾です。

つまり、未接種者が飲食店利用で不利益を被るのは間違いが無く、後はその程度の問題になります。最悪の状態は、未接種者の入店拒否ですが、報告書では言及がありません。しかし、検査システムを導入する以上、そうした事態が発生しても不思議ではありません。また、その際のトラブルの責任は民間が負うことになります。

また、政府の各種規制に苦しむ飲食店にとって、制限緩和は渡りに船と言えます。雪崩を打って飲食店が検査システムを導入すれば、未接種者が飲食店の利用ができなくなる未来もありえます。

なお、政府は、ワクチン接種以外にも、PCR検査等の陰性証明も認めていますが(*12)、1回で数千円以上かかる陰性証明を繰り返し発行するのは困難です。なお、陰性証明の有効期限は、PCR検査が72時間で、抗原定性検査は24時間です。加えて、検査費用には、公費は原則投入されません。

 

イベントへの参加を監視される恐れ

政府は、さらに摂取証明書の活用として、イベントを挙げています。緩和措置の条件として、ワクチン摂取証明書等に加え、「QRコードによる感染経路追跡などの手法の活用を含む、包括的感染対策」も入れています。

つまり、感染対策の名目で、接種情報と位置情報を組み合わせて活用される恐れがあるわけです。そうなれば、誰が何のイベントに参加したのかが第3者が管理できるようになるわけです。また、言及はありませんが、未接種者がイベントに参加できない可能性は拭えません。

 

接種証明書なしで、県をまたぐ移動が制限される恐れ

政府は、ワクチン接種・検査を受けた人への自粛要請をしない方針です。裏を返せば、未接種者には、引き続き自粛要請を続けるということです。

これだけなら今までと変わりませんので、一見問題がないように見えます。しかし、公共交通機関が、政府の方針を錦の御旗にして、検査システムを導入する可能性があります。つまり、ワクチン接種をしない者は、自由な移動ができなくなる恐れがあります。

 

接種証明書なしで、部活ができなくなる恐れ

政府の方針では「大学等の部活動や課外活動における感染リスクの高い活動についても、ワクチン・検査パッケージを活用すること等により、原則可能とする」とあります。

つまり、ワクチンを接種しない者だけが、部活ができなくなるわけです。これは事実上の接種の強制と何も変わらないでしょう。

 

こうした制限は、憲法違反になりうる

こうした規定は、憲法に定める基本的人権を侵害します。具体的には、憲法第13条の「幸福追求権」(*13)や、憲法第22条に関する「移動の自由」(*14)などが当てはまります。もちろん、これらは「公共の福祉」によって、制限を受けるものでもあります。

しかし、ワクチン接種証明書は、「公共の福祉」を考えても、憲法違反である恐れがあります。公共の福祉に関しては、通常、制限する利益と、制限した結果生まれる利益を比較して、後者の利益が大きければ、人権の制限が認められます(比較衡量論)(*15)。今回の場合、ワクチン接種証明書の効果が疑わしいのにもかかわらず、その結果の人権制限は、幅広く、かつ、深刻です(*16)。

 

先行する海外でも、憲法違反の批判が起きたり、証明書の偽造が頻発したりしている

海外でも、ワクチン接種証明書への批判は高まっています。CNNの報道によれば、米インディアナ州では、大学が登校の条件として、ワクチン接種を義務付けたことを「違憲」として学生が裁判を起こしています(*17)。また、フランスでは、接種証明書利用の義務化をめぐり、黄色いベスト運動と連動したデモが頻発していると報じられています(*18)。さらに、デモに加え、偽造証明書が発行され、問題化しているようです。

 

ワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)の活用の問題点

 

4. 問題点③ ワクチン接種証明書は、全体主義への道

ワクチン接種証明の活用で、最も先行する国の一つが監視国家「中国」

ワクチン接種証明と監視社会の相性は、とても高いです。事実、デジタル技術を駆使して、国民を総監視している中国は、ワクチン接種証明の活用で、最も先行している国の一つです。一部のメディアの報道によれば、「接種証明書がないと生活に支障をきたすようになってきた」という現地の声もあります(*19)。

 

条件付きの自由は、簡単に制限される

ワクチン接種者からすれば、この問題は自身には関係ないようにも見えますが、条件付きの自由は、簡単に制限されかねないことを忘れてはいけません。今は緩い条件でも、一度それを許してしまうと、簡単に条件を厳しくすることができます。例えば、ワクチンが2回で効かなくなれば、定期的な接種が義務付けられたり、「ワクチン以外のことが感染対策に効果的だ」となれば、新しい規制が導入されたりするわけです。

しかし、ワクチン同様、効果があるかどうかを決めるのは政府です。その決定から外れる者の自由は、簡単に制限されるようになります。

 

健康を理由にした自由の制限は、ナチス・ドイツも歩んだ道

また、歴史的に言えば、ナチス・ドイツも健康を大義に、さまざまな自由の制限を課していきました(*20)。まずガン検診を国民に義務付け、検診を怠ると罰則がつくようになりました。さらに無農薬栽培を進め、タバコやアルコールを禁止し、妊娠している女性の検診を強化するなどして国民の健康管理に努めました。

そうした制限は、最終的には、アーリア民族の健全性をユダヤ人が蝕むと言ってユダヤ人虐殺につながっていきます。

つまり、健康という誰もが反対できないことを理由に、国家権力が、自由を制限することは非常に危険なことであり、全体主義へとつながっていくのです。

 

ひとつの価値観の押しつけは、全体主義につながる

全体主義というのは、独裁主義とほとんど変わりません。それには主義や主張は関係ありません。一見、全く理想が違うように見えるナチスもソ連も、ともに全体主義国家でした。

大川隆法 党総裁の『奇跡の法』(2001)には、「民主主義と全体主義は別のものではないのです。民主主義は、多数の力を前提とし、民衆の心をつかんだ人が上がってくる制度なのですが、その人が一つの価値観を国民全員に押しつけて、国家総動員的に動きはじめると、全体主義になります」と述べられています。

現在、コロナウィルスへの感染対策を名目とした、こうした動きに徹底して反対していく必要があります。

以上

 


 

  1. 厚生労働省(2021.9.1)「第50 回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 国立感染症研究所 感染症疫学センター サ
    ーベイランスグループ作成資料(資料3-2 鈴木先生提出資料)」
    https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000826599.pdf
  2. Israel Ministry of Health (2021, June 7) “Explanation About the Effectiveness of the Vaccine for Coronavirus in Israel”
    https://www.gov.il/en/departments/news/06072021-04
    なお、重症や入院を防ぐ有効性は93%としている。
  3. 日本経済新聞(2021.9.8)「デルタ株、ワクチン接種しても鼻腔で増殖 米で確認」
    https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD252Q60V20C21A8000000/
  4. medRxiv (2021. Aug, 11) “Shedding of Infectious SARS-CoV-2 Despite Vaccination when the Delta Variant is Prevalent –
    Wisconsin, July 2021”
    https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.07.31.21261387v3
    査読前の論文であるため、注意が必要である。
  5. Business Insider Japan (2021.7.12)「米専門家、ワクチン接種済みの人がデルタ株の拡大を助けていることは「疑いようがない」」
    https://www.businessinsider.jp/post-238324
  6. 厚生労働省(2021.8.27)「「ワクチン接種後のブレークスルー感染」 なぜワクチンと感染予防対策の両方が必要なのか(森内浩幸 著)」
    https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/column/0006.html
  7. 厚生労働省(2021.9.1)「第50 回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料4 新型コロナウイルス感染症(変異
    株)への対応等 (新型コロナウイルス感染症対策推進本部)」
    https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000826604.pdf
  8. WHO (2021. Aug, 31) “Weekly epidemiological update on COVID-19”
    https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19—31-august-2021
  9. 東京医科歯科大学(2021.8.30)「N501S 変異を有する新たなデルタ株(B.1.617.2 系統)の市中感染事例(国内第1例目)を確認」
    https://www.tmd.ac.jp/press-release/20210830-1/
  10. 幸福実現党(2021.5.26)「米国で再燃「武漢研究所コロナ起源説」!人民解放軍の関与を示唆する「爆弾文書」とは?【後編】」
    http://hrp-newsfile.jp/2021/4083/
  11. 首相官邸「第76 回(令和3年9月9日開催)資料(新型コロナウイルス感染症対策本部)」
    https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/sidai_r030909.pdf
  12. なお、こうした検査体制を「ワクチン・検査パッケージ」とし、既感染者への取り扱いは要検討としている。しかし、現段階の制度設計では含まれていないため、既感染者にも、ワクチンや陰性証明を強いられる可能性がある。
  13. 第13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
  14. 第22条「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」
  15. 衆議院憲法調査会事務局(2004.4)「「公共の福祉(特に、表現の自由や学問の自由との調整)」に関する基礎的資料」
    https://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/chosa/shukenshi046.pdf/$File/shukenshi046.pdf
  16. なお、政府は、憲法違反と言われないように、実質の人権制限を政府ではなく、民間企業にやらせる仕組みを作っている。これは、通説とされる憲法の「間接適用説」を悪用した手法と言える。
  17. CNN(2021.6.23)ワクチン義務付けは「違憲」、学生が大学を提訴 米インディアナ州」
    https://www.cnn.co.jp/usa/35172799.html
  18. 東京新聞(2021.7.25) 「ワクチン証明義務化のフランスで抗議拡大 不正発行も問題に」
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/119257
  19. ダイヤモンド・オンライン(2021.8.26)「中国版ワクチンパスポートに潜む、国民監視の「真の狙い」」
    https://diamond.jp/articles/-/280429
  20. 幸福実現党(2021.2.13)「コロナ関連法改正、コロナ時代の「自由論」とは?」
    http://hrp-newsfile.jp/2021/4021/

 

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