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幸福実現党政務調査会
2023年6月16日
No.32
国の存続危機を招く“放漫財政”の方針は見直すべき
16日、政府の重要課題や、翌年度予算編成の基本的な方向性を示す「骨太の方針」が閣議決定されました。同方針に対する幸福実現党政調会の見解は、以下の通りです。
- 岸田文雄首相は、若年人口が急減する2030年代までが、少子化対策を打つ「ラストチャンス」と強調しており、今回の「骨太の方針」 の中でも、「政府を挙げて取組を強化し、少子化傾向を反転させる」としています。
- 政府が13日に決定した「こども未来戦略方針」では、来年度から3年間を「集中取組期間」として少子化対策「加速化プラン」を実施し、児童手当の拡充などで年3.5兆円を追加投入するほか、2030年代初頭までに、子ども家庭庁の今の予算4.7兆円を倍増することを目指すとしています。
- 問題なのは、今回の対策が少子化の歯止めにつながるかですが、なぜこれほど多額にのぼる対策が必要になるのか、どのような経路を経て対策が少子化を「反転」させるのか、明確な根拠が示されているわけではありません。
- 対策の財源をどう確保するかも明確になっていません。「加速化プラン」の3.5兆円は当面、つなぎ国債を発行して、医療保険の保険料に上乗せして財源を確保するとの案も出ているようですが、具体的な議論は先送りとなっています。
- 少子化対策の財源確保のために社会保険料が増額されれば、社会保険料を納める家計・企業の負担をさらに増大させることになります。家計の手取りが減るのはもとより、企業は雇用を増やすことのコストが高まることで雇用そのものや賃金アップを躊躇しかねず、景気が大きく停滞することにつながりかねません。
- 総じて、岸田政権の少子化対策は、少子化を「反転」させるどころか、将来不安を一層募らせ、少子化を「加速」しかねない極めて危険な政策だと言えます。また、今国会会期末までの衆議院解散の見送りが表明されましたが、次期国政選挙を見据えた「合法的買収」の色彩が強いことは否定できません。
- いずれにしても、少子化対策を行うのであれば、本来、「いかに若者に未来への希望を持たせることか」という考え方がベースに据えられるべきです。無駄な歳出をなくして健全な財政運営を担保した上での減税を実施したり、企業の活動を縛る規制をなくしていくことこそ、必要な施策ではないでしょうか。
現政権の「新しい資本主義」は、“亡国への道”
- 「成長と分配の好循環」をコンセプトとする「新しい資本主義」について、今回の方針では、好循環を生みだす鍵は「賃上げ」にあるとしています。実質賃金の落ち込みが生活苦をもたらしていることは論を俟ちませんが、企業物価の上昇もあって経営に苦しむ企業に対し、いたずらに賃上げを促すだけであれば、企業体力を消耗させるに過ぎません。また、今回掲げられているように、最低賃金を全国で加重平均1000円以上に引き上げれば、失業者が増える結果に帰着するばかりです。
- 賃金を上げるかどうかは、企業の経営判断にかかわることで、国が押し付けるべきことではありません。賃上げに向けては、法人税や社会保険料のあり方を見直し、規制を緩和・撤廃するなどして、企業が賃上げしやすくなる環境を整えることが求められるのではないでしょうか。
- 賃上げに向けては、人材の適材適所を生み出す意味でも、労働市場の流動化を推し進めることは欠かせません。抜本的な流動性向上のためには、本来、解雇の金銭解決の法制化を含め、解雇規制の緩和に踏み込むべきです。
- 岸田政権は、「新しい資本主義」の一環として、GX(グリーントランスフォーメーション)を推進するとしており、今回の方針でも、「少なくとも今後10年間で、官民協調で150兆円超の脱炭素分野での新たな関連投資を実現する」としています。グリーン投資というのは、企業の利益が増えるわけでもなければ、国の成長をむしろ、大きく阻害する要因になりかねません。政府が主導的にグリーン投資を推し進めて車のEV化を進めるなどすれば、原材料や部品製造で優位性を持つ中国を利するだけの形となります。DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速方針を含め、政府の施策は、民間のお金の使い道、国民の働き方や生活、産業構造を政府の力で作り変えようとする、究極の全体主義的政策に他なりません。
この国の“サバイバル”に向けては効果的な施策を打つべき
- 日本を取り巻く安全保障環境が悪化の一途をたどる中、岸田政権は防衛費を拡大する策として、「2023年度から5年以内に、対GDP比2%以上を念頭に、防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指す」とする方針を示してきました。その財源をどう確保するかが焦点に当たっていましたが、今回示された方針では、防衛増税は2025年以降に先送りしたことが明らかになりました。これは、選挙前に増税実施を明言することを避けたことによるものと考えられます。本来は、抜本的な歳出改革を行って財源確保に道筋をつける必要があるのではないでしょうか。
- また、国家存続の危機が迫る今、本来は防衛費を「5年」で倍増するなど悠長なことを言っている場合ではありません。また、中国や北朝鮮による核ミサイルに対処するために、独自の核抑止力の保有について議論を速やかに始めるべきです。
- 国家の“サバイバル”という観点からは、エネルギー・食糧の自給体制の構築も急がなければなりません。日本の安全保障と経済活動にとって、安定的で安価な電力供給体制を整備することは極めて重要であることは言うまでもありません。電力の安定供給を確保したり電力価格を下げるためには、政府は脱炭素政策の方針を抜本的に見直すとともに、固定価格買い取り制度(FIT)の廃止方針を打ち出すべきです。また、政府として、既に再稼働が決まっている原発に留まらず、安全性が確認された全国の原発を速やかに再稼働させるべきです。
- 食糧安全保障強化に向けては、農地に関する規制を緩和して農業に株式会社が自由に参入できるようにしたり、大規模化の推進、実質上行われている「コメの生産調整」を廃止するなどして、食糧の国内生産体制の強化を図るべきです。
健全財政が国家存続と繁栄への道
- 総じて、今回の方針からは、経済成長、財政健全化への道筋がほとんど見えません。
- コロナ関連の歳出を縮小するとしても、少子化対策や新たな国債の発行を念頭にしたGX投資の推進など、放漫政治を行えば、政府の赤字垂れ流し構造は変わらないどころか一気に拍車をかけることになります。無駄なバラマキで政府が歳出を膨らませれば、将来的に増税が実施されたり、社会保険料が引き上げられるほか、今後、さらに国債を発行するとなれば、これから生まれる世代にも負担を先送りすることになってしまいます。フリーランチというものはなく、バラマキのツケは誰かが払わなければならないのです。
- また、「政府破綻」を避けるという観点からも、政府の無駄な仕事の“減量”を行い、原則として、「歳出は収入の範囲に抑える」よう努めるべきです。
- 政府の「黒字経営」化を図るために欠かせないのは、抜本的な社会保障改革です。社会保障費のうち、多くを占める年金、医療などは、保険料の範囲に支出を抑えれば、税金を投入する必要は本来ありません。拠出は保険料収入の範囲内に収めるという原則に従った運営に向けて、社会保障制度のあり方を抜本的に見直すべきです。
- 健全財政は、国家繁栄と存続の基礎です。赤字体質から脱却し、安い税金・小さな政府の実現こそが、日本の未来を明るくするビジョンであり、少子化を「反転」させるための方策となるのではないでしょうか。
<要旨>
- 政府の少子化対策は、国民負担の増大や将来世代への負担の先送りを助長させ、少子化の「反転」には逆効果である。
- 政府が狙う「賃上げ」を実現するには、本来、企業活動を活性化するための減税や規制緩和こそ必要。
- 国家の“サバイバル”に向けては、健全な財政に裏打ちされた防衛強化策を実施すると共に、エネルギー・食糧の自給体制を早急に整備すべき。
- 財政健全化に向けては、歳出の抜本的な見直しが必要である。経済成長を実現し、少子化傾向に歯止めをかけるためには、「小さな政府・安い税金」路線こそ求められる。
以上
【全文】
詳細は下記のPDFをご覧ください。
PDF 国の存続危機を招く“放漫財政”の方針は見直すべき
国の存続危機を招く“放漫財政”の方針は見直すべき 幸福実現党政務調査会ニューズレター No.32(2023.06.16)