2024年8月14日
幸福実現党政務調査会
No.36
日本の経済と安全保障を破壊する原子力規制委員会を今すぐ解体せよ
(ポイント)
- 敦賀発電所2号機は24年以上の安全運転の実績があり、さらに世界最高水準の追加的安全対策が行われており、安全性に問題なし。
- 日本の陸域に約2,000本あるとされる活断層は、過去の地震の履歴を示すことはあっても、将来の地震を予知するものではない。活断層と隣り合う重要構造物は日本中にあるが、それを織り込んだ耐震設計や安全対策が行われている。よって、活断層探しは原子力発電所の安全性の本質とはほとんど関係がない。
- 原子力規制委員会は、旧・民主党政権下で「原子力発電所を簡単には動かせない仕組み」として作られたもの。日本の経済成長や安全保障を考慮したエネルギー政策と相容れず、リスクの確率論やコストを無視した「究極の安全性へのこだわり」を押し付ける、孤立した「専門家」による独善が横行している。このことが日本の脆弱性を高め、かえって安全保障上のリスクを増大させていることから、原子力規制委員会を直ちに解体し合理的で効率的な原子力規制を再構築しなければ、日本に未来はない。
原子力規制委員会は、敦賀発電所2号機が新規制基準に適合しないとの判断を下す
8月2日、原子力規制委員会(規制委)は、日本原子力発電株式会社(日本原電)敦賀発電所2号機が新規制基準に不適合だとする判断を下しました。規制委は原発の安全審査不合格を示す審査書案の作成を、事務局の原子力規制庁に指示しています。
今回の判断にあたって焦点となっていたのは、①2号機の北側約300メートルにあたるK断層に活動性があるのか、そして、②K断層が原子炉建屋直下にまで連続しているのかという点です。
日本原電はこれまで、上記2点を否定するために様々なデータを提出してきましたが、今回、規制委はK断層の活動性について「明確な証拠により否定できていない」とし、また、連続性についても、「可能性が否定できていない」として、いわゆる「悪魔の証明」を求め、日本原電側の主張を却下しています。
日本原電は引き続き再稼働に向けて追加調査等を進める方針を表明し、敦賀発電所2号機の廃炉を改めて否定しています。
活断層は本来、地震を予知するものではない
日本の陸域に約2,000本あるとされる活断層(*1)は、過去の地震の履歴を示すことはあっても、将来の地震を予知するものではありません(*2)。新幹線を含む鉄道、ダム、長大橋、超高層ビルなど、活断層と隣り合う重要構造物は日本中にあり、市街化により地表面にその痕跡が現れていない未知の活断層も多いと考えられることから、日本ではそれを織り込んだ高度な耐震設計や安全対策が行われています。よって、規制委による「活断層探し」は原子力発電所の安全性の本質とはほとんど関係がありません。
敦賀発電所2号機は、国際原子力機関(IAEA)の国際基準に基づいた政府機関による審査を踏まえ、1987年2月に営業運転を開始し、それ以降、24年以上の安全運転の実績があります。さらに2011年以降に世界最高水準の追加的安全対策が行われているため、福島第一原発のような重大事故が発生する可能性は極めて低く、実質的な安全性に問題はありません。
(*1)地震調査研究推進本部「主要活断層帯」
(*2)大川隆法『日本の誇りを取り戻す』『政治革命家・大川隆法』(幸福の科学出版)
「原子力発電所を簡単には動かせない仕組み」として作られた原子力規制委員会
規制委は2012年9月、経済産業省から安全規制部門を分離し環境省の外局の形で、いわゆる「三条委員会(*3)」として新設されました。「三条委員会」は省と並ぶ権限と独立性を持つとされ、このことがマスコミ等でしばしば「アンタッチャブル」な組織と誤解され、他の行政機関が規制委の問題を指摘できない「独善性」の原因にもなっていますが、内閣総理大臣の配下の行政機関であることに変わりはありません。
規制委は、旧・民主党の菅直人政権の意を受けて検討を開始し、野田政権下で設置されましたが、当時の菅氏は「原子力発電所を簡単には動かせない仕組みを作った」と評価したといわれています。
日本の規制委は、委員を5名とするなど米国の原子力規制委員会(NRC)を模して作ったとされますが、実態は全く異なり、米国では日本よりもずっと合理的な規制が行われています。NRCには「良い規制の原則(Principles of Good Regulation)」があり、その一つに「効率性」が定められている点に非常に大きな違いがあります。
日本の規制委は所掌事務(*4)に定められた安全性以外の問題、例えば原発停止による国民負担の増大や化石燃料の供給途絶による安全保障上の危機などは一切考慮しない方針です。
しかし、米国では「規制活動は、それによって低減されるリスクの程度に見合うべきである」という原則を定めています。日本では「効率性」が原子力規制の要件として定められていないために、規制委の方針に従って一度建設した防潮堤を壊してさらに高い防潮堤に建て替えたり、コストを度外視して大型航空機衝突テロにも耐える建物(特定重大事故等対処施設)を作ったり、ほとんどリスク低減に寄与しない活断層の議論を延々と続けたりといった、「職人のこだわり」がまかり通っています。こうしたことは、欧米であれば行政訴訟の対象となり、国家賠償を求められる可能性もあります。
こうして、規制委は一行政機関であるにもかかわらず、日本の経済成長や安全保障を考慮すべきエネルギー政策と相容れず、リスクの確率論やコストを無視した「究極の安全性へのこだわり」を押し付ける、孤立した「専門家」による独善が横行している状況にあるのです。
(*3)国家行政組織法第3条第2項に基づき設置される行政機関
(*4)原子力規制委員会設置法第4条
原子力規制委員会を直ちに解体し、合理的で効率的な原子力規制の再構築を
今回の規制委の判断は、全国の原発再稼働のさらなる遅れにつながり、電力料金の高止り、ないしは台湾有事などによるシーレーンの途絶で深刻なエネルギー不足に陥る危険性も高まります。今の原子力規制のあり方は、日本のエネルギー安全保障上の脆弱性を高め、かえって別のリスクを増大させています。
また、世界では原子力が再び有力なエネルギー源として見直されるとともに、高速炉、高温ガス炉、小型モジュール炉(SMR)といった新しい原子炉や、核融合炉の基盤技術も着々と開発が進んでいます。米国では大量の電力を消費するデータセンターの電源としてSMRが商業ベースで検討されています。BRICS諸国では原子力の全てのサプライチェーン(供給網)を持つロシアや、中国・韓国による原子炉の受注が進んでいます。
他方、日本のメーカーも福島事故の教訓を踏まえた最高水準の安全対策技術を満載した「革新軽水炉」を設計し、高速炉、高温ガス炉、SMR等の研究開発も進めています。しかし、仮に政府が現行のエネルギー政策を改め原子力の新増設推進を明確にしたとしても、不合理・非効率な原子力規制のままでは、諸外国のように新しい原子炉を次々と市場投入していくことは全く不可能で、その議論すらできない状況にあります。日本の原子力は世界から取り残され、かつて世界最高水準を誇った技術が失われ、やがてはロシアや中国に日本国内の原発のメンテナンスを委託することになるかもしれません。
原子力規制は、単に「職人のこだわり」を追求するだけでは不十分であり、経済性はもちろんのこと、エネルギーや核戦略等に係わる外交・安全保障の状況、世界と日本の原子力産業の競争力やサプライチェーンの動向、日本の地域の産業構造などを十分に理解し、総合的にみて日本の国益を追求していく必要があります。それができない現行の原子力規制委員会は直ちに解体して、原子力規制のあり方を根本から見直すべきです(*5)。
エネルギーは経済と安全保障の基盤であり、特に原子力は「国力の要」です。合理的で効率的な原子力規制を実現しなければ、日本に未来はありません。
(*5)エネルギーフォーラム「非合理な敦賀2号機の「活断層」審査 原子力活用に向け規制委改革の時」(2024年8月8日)
以上