【幸福実現党 及川幸久 外務局長インタビュー】「トランプショック」徹底解剖!

~マスコミが報じない、次期大統領の真相~

© JStone / Shutterstock.com

 

「トランプショック」――トランプ氏が米大統領選に勝利し、世界中に衝撃が走りました。

なぜトランプが勝ち、来年以降どのような余波を各国にもたらすのか、アメリカ国内から大統領選の様子を見続けてきた、及川外務局長にインタビューを行いました。

MC:畠山元太朗 党広報本部長補佐

 

「大統領選投票前に、トランプの追い上げを肌で感じた」

 

11月8日、大統領選に勝利し、スピーチするトランプ氏(© lev radin / Shutterstock.com)

 


:及川幸久外務局長 (Web Site )
:畠山元太朗広報本部長補佐


 
:アメリカ大統領選でトランプ氏が勝利しました。話題のトランプ次期大統領について、選挙戦そのものにどのような意味があったのか、今後日本にどのような影響があるのかなどを、及川外務局長にお話しいただきたいと思います。

 まず最初に、及川外務局長ですが、幸福実現党に入られる前に、どのような仕事をされていたんですか。

:元々、国際金融市場で財務コンサルタントのような仕事をしていました。
最初に就職した会社は、ニューヨークのウォール街にあるメリルリンチという投資銀行で、その後は、イギリスの投資顧問会社におりまして、本来の専門は、金融なんです。

 その後に宗教法人幸福の科学の職員になりまして、宗教が2つ目の専門分野です。4年前に、幸福実現党に入党して、現在の外務局長を担当しています。

:はい。外務局長になられてからは、日本人としては非常に珍しく、アメリカでラジオ番組に出たり、現地のアメリカ人たちとやり取りをしながら、活動されてきたと。

:幸福実現党に入ったちょうど4年前に、ニューヨークの知り合いから、「従軍慰安婦問題がアメリカで大きな問題になるよ」ということを聞いたんですね。
 今は日韓合意とか、大きな問題になりましたけれども、そのはるか前のことです。

 ニューヨークの知り合いから、「韓国系のアメリカ人ロビイストが、アメリカの政界で動いてる」と。「従軍慰安婦という話をでっちあげて、どんどん大きくしようとしている。一方、日本の政府は何も動いてないよ」ということを聞いたんですね。

「じゃあ、早速ニューヨークに行って、調べてみよう」と、取りかかりました。
 調べると、確かに、韓国系アメリカ人ロビイストが、アメリカの政界で動いていて、その中心人物に話を聞くことができたんですよ。
 日本のマスコミもずっと狙っていた「デビット・リー」という人ですが、私がマスコミじゃなかったので会ってくれたんです。彼と話をしてよく分かったのが、韓国は国家ぐるみで日本政府に慰安婦問題で攻め込んでいると。

 さらに、韓国が、アメリカの政界を味方につけるために、アメリカの下院議員とか、ユダヤ系のロビイストとかとタイアップして進めていたんですね。「これは大変だな」と。

 これに対して、訴える術を持っていなかったんですが、ちょうどそのころに、幸福実現党の大川総裁が、「この問題は大きい」と、従軍慰安婦問題に関する本を出されました。それで、政党としてこの問題を取り組むようになったわけです。

 日本政府の動きがほとんどないので、「従軍慰安婦というのはまったくのでっちあげだ」と言う、機会を狙ってたんですね。そこで、1年半くらい経ち、たまたまアメリカのラジオ番組で、「コメンテーターをやらないか?」と言われて、従軍慰安婦問題を訴えてみたわけです。

 アメリカはラジオ社会なので、すごい数の番組があるんですよね。人気なのはトーク番組で、ホストと司会者がいて、テーマに合わせてゲストが出ます。
 ラジオ番組には、大統領候補もそうなんですが、基本的に電話で出るんです。その全米のラジオ番組に出まくってですね、それから2年あまりで、100回以上は出てると思います。

 話がおもしろいと、また使ってくれるんですよ。中には、「話がおもしろい」ということで、準レギュラーみたいになっている番組がいくつかありまして、そういう番組には7~8回出ていますね。

及川局長は、アメリカ各地のラジオ・テレビに出演している。

 
:今回、割と接戦だった地域のラジオ番組にも出演されたということですが。

:そうですね。今回接戦だったフロリダ州、それからオハイオ州には私が良く出ている番組がいくつかあるんですよ。

 私は日本人ですけど、ドナルド・トランプに勝っていただきたいと強く思っていたので、ラジオ番組で、「世界の立場から見ると、アメリカの大統領はトランプであってほしい」と話したんですね。
これがウケたんです(笑)。こんな話、アメリカのなかではめったに出てこない。特に、フロリダとかオハイオとか地方では、そういう海外の視点は出てこない。

 また、番組の中で、司会者の人とやり取りするわけですよ。私が何か話すと、司会者の人が突っ込んでくる。すると、インタビューを通してその司会者や、地域の意見が見えてくるんですね。

:現地の感覚が?

:「ヒラリーの方が有力で、トランプは変な人」というのが言葉の端々から伝わってきたんですけど、投票直前までやってますと、「ヒラリーではだめなんじゃないか?」「じゃあトランプじゃないか」という風にだんだん変わってきたんですね。

:ああ。報道でも、「トランプが追い上げてきた」というニュースがありましたけれども、やっぱりそういう、「空気の変化」みたいなものを実感されたと。

 

「トランプが、旧・工業地帯を味方につけた理由」

 

廃屋となった旧・工業地帯(ラストベルト)の工場

 
:ラジオは、新聞とテレビと違って、地元密着なんですよ。やっぱり地元密着だと生活なんですよね。

 差別発言や女性スキャンダルとかどうでもよくて、生活・経済をどうしてくれるのかと。それに、ヒラリー・クリントンは、明確な政策を出していなかった。「オバマ政治を継承する」ということだけだったんですよ。

 そのオバマ政治の象徴がオバマケアです。ですが、オバマケアによって、保険料が上がってしまって、とんでもない保険料を強制的に払わなければいけなくなった。
 これが、実質的な増税なんですよね。これは、民主党・共和党の党派に限らず、フロリダの人たちも、オハイオの人たちも、全米の人たちも、みんな参ってたんですよ。

 もうひとつは、NAFTAとかTPPとかに代表される、自由貿易協定ですね。結局、アメリカの結んだ自由貿易協定で、国内の企業がどんどん海外に行ってしまった。
 オハイオなんか典型ですよ。オハイオにあったフォードの工場とか、全部メキシコに行って、地元の仕事がどれだけなくなったことか。これに対してトランプは、「自由貿易をやめる」「アメリカに企業を戻す」と。これも、党派によらず、人々の求めていたものなんです。

:今の話が、ある意味で、本当の争点だったわけですね。このアメリカの五大湖周辺は、今まで民主党が取っていたエリアです。にもかかわらず、今回トランプが取りました。この辺りとも関係があるのでしょうか。

:この結果自体は、予想外だったと思うんです。ただ、世論調査の結果がそんなに外れた訳ではない。
 全米レベルでみると、ヒラリー・クリントンの方が支持率は高かった。得票数もヒラリーの方が約200万票上だったわけですね。しかし、選挙は、トランプが勝ったと。

 これは、アメリカの選挙制度が、得票数ではなくて、選挙人の獲得数で争う特殊な選挙だったからです。予想外のことが起きたのは、五大湖周辺の、ごく一部の州に過ぎません。アメリカに50州ありますけれど、ほとんどの州は、世論調査の結果通りです。
 フロリダにしてもオハイオにしても、激戦でしたけど、事前の予想通りトランプでした。でも、トランプは、それ以外で勝たなきゃいけなかったんですが、そこで、この五大湖周辺のRust Belt(ラストベルト)で勝てた。

:ラストベルト?

:ラストベルト(錆びたベルト地帯)という、昔の工業地帯ですね。この地域で、異変が起きたわけです。この地域は、まさに工場が自由貿易によって海外に移転してしまった地域。で、収入が減ったなかで、追い打ちをかけるように、オバマケアで保険料が思いっきり増えた地域です。

:一番あおりをくらった?

:その通り! 恩恵を受けたのは、オバマケアによって優遇されたマイノリティーであり、貧困層だったわけですよ。この人たちは、今までは入れなかった健康保険に入れるようになった。しかし、この人たちのために、多くの中間層が、今まで以上に負担を強いられたんですね。
 オバマ政治は、典型的な「大きな政府」だったわけですよ。これを、民主党の支持者たちは支持したわけですよね。だけど、やってみたら大変な負担だった。企業はなくなっちゃうわ、職はなくなるわ、賃金はさがるわ、そこに大増税のような保険料がかかってくる。これに、みんなうんざりしてたんです。

:そのオバマの政治に対して、トランプはわかりやすい言葉で訴えた。だから、支持されたと。

:そうです。「自由貿易やめます」「自由貿易協定やめます」「企業戻します」「オバマケアは廃止します」。非常に分かりやすい。

: 日本の報道のなかには、そうした見方が出てこないですね。

:結局は、生活なんですよ。人々は、女性の権利だとか、暴言だとか、人格では投票しませんから。

 

「トランプの経済政策で、アメリカは復活する!?」

 

景気回復を求めるトランプ支持者たち

 
:日本ですと暴言や女性問題がメジャーでしたが、そこが本当の争点ではなかったということですね。

 では、ちょっと改めまして、トランプの経済政策の特徴を教えていただければと思います。

 事前の予想では、トランプの政権になると円高になって日本の株価も下がると言われていました。しかし、実際は、円安になって株価も上がり、アメリカではダウ平均株価が上がり続けています。
「トランプノミクス」と言われて、非常に期待感も高まっています。

:トランプの前に、オバマの政治はというと、典型的な大きな政府だったわけです。貧困層とか、マイノリティーを優遇する。つまり福祉優先だったわけですね。
 そのためにはお金が必要なので、お金持ちとか企業から税金をたくさん取って、それを再配分する政策ですね。

 その結果、多くの人の所得が増えて、景気が良くなればよかったんだけれども、景気は良くならなかった。
 去年のアメリカの経済成長率は1.5%ですので、戦後最低になってしまった。アメリカみたいな大国は、最低でも3%ないと持ちません。

 トランプの経済政策は、この全く逆と言ってもいいと思います。大きな政府に対して小さな政府。富裕層や大企業から税金を高く取ったのを、逆に、個人や企業に対して大減税をする。
 例えば、法人税が35%以上だったのを、15%に下げると。ものすごくドラスティックな減税ですよね。場合によっては、期間限定で10%に下げると。

 この目的は、自由貿易協定で海外に行ってしまったアメリカ企業をアメリカに戻す。そのために思いっきり減税すると。これがトランプの特徴ですね。

 で、もう一つは、積極的な財政政策です。特に、インフラへの大規模投資。
 アメリカの橋だとか、高速道路、港、空港。これがもう老朽化していて、トランプに言わせると、「アジアの後進国、途上国よりよっぽどひどい」と。そのアメリカのインフラを作り直すと。そのために思いっきり、積極的な財政投資を行うと。つまり、政府がお金使うわけですよね。これが今、金利高に向かっています。

:アメリカの長期金利が上がってきたという話はよく聞きますね。

:長期金利が思いっきり上がっています。要するに、トランプが大規模投資をやろうとしているから、アメリカはたぶん思いっきりお金を借りるだろうと。これで金利が上がっている。それで、金利高がドル高になって、ドル高イコール円安となる。

:その恩恵を日本が受けている(笑)。

:恩恵を受けているだけなので、経済を反映した相場ではないわけです。完全な為替相場になっているわけですね。たぶんアメリカの金利高は続くだろうと思います。ただ、そうなっていくと、今度はアメリカの金利が上がりすぎるのに対してどう調整するかというのは大きな課題になると思います。特に、トランプの場合、アメリカの金利政策を司っているFRBを非常に批判していますので

:FRBの議長をクビにするとか(笑)。

:クビにするとかね(笑)。そもそも、トランプのような小さな政府の発想の人は、FRB、中央銀行の存在自体を否定しますので。そもそもいるのかと。中央銀行が勝手に、国の金利を操作するというのは間違っているという発想なので。だから、今後、FRBとうまくやっていけるかが焦点になると思いますね。

:かなり注目ですね。

:そこで失敗すると、思いっきり金利が高くなり、インフレが進み過ぎる可能性があります。

:そうすると景気にマイナスも……。

:行き過ぎるとマイナスになる可能性があります。

 

「トランプと共和党の知られざる関係」

 

トランプ氏の勝利集会であいさつするプリーバス氏(写真中央、© lev radin / Shutterstock.com)

 
:トランプは、小さな政府の象徴として、大規模な減税政策をするのでは、という話でした。
 ちょっと話がそれますが、大統領の首席補佐官に任命された、ラインス・プリーバス氏という方います。ティーパーティー派に属する方だという話も出ていまして、そのあたりから政策にも影響があるのですか。

:ラインス・プリーバス氏という方は、日本でいうと党本部に当たる、共和党全国委員会(Republican National Committee)の会長ですね。
 ちょっと余談になりますが、アメリカの場合、政党の制度が日本と全然違うんです。党の総裁とか党首という存在がない。幹事長とかもない。党本部もないんですね。その代わりにあるのが、Republican National Committee。

:共和党の全国委員会ですね。

:全国委員会です。そのビルがワシントンD.C.にあって、4階建てくらいの小さなビルです。

:4階建てですか!

:ええ(笑)非常に小さいです。そこの委員会のチェアマン(会長)なんですけれども、日本だと党本部の事務局長といった感じですかね。主に、選挙の資金集めとかをやられていて、日本の政党みたいに、政調会で政策を考えるだとか、そういうことは一切やってない。要するに事務機能ですね。
そこの会長なので、党の大物との調整役なんですよ。共和党なら上院下院に大物議員がいますけど、そのなかで誰がトップとかはないんですよ。

:それはちょっと、日本の感覚だとわかりづらいですよね

:要するに、党首に当たるものがない。共和党が今、下院の多数を占めていて、下院のトップが共和党のポール・ライアンって人です。かといってポール・ライアンは共和党の党首ではない。プリーバス会長は、このポール・ライアンや、上院の大物とパイプを持っている人ですね。

ポール・ライアン共和党下院議長(© Christopher Halloran / Shutterstock.com)

 
:今後、トランプ次期大統領の減税政策が、ティーパーティー派とも関係してくるんでしょうか?

:基本的に、今の共和党の中核の人たちは、小さな政府で減税をやるっていう考え方です。
 そのなかには、ティーパーティーにつながっている人も、つながってない人もいます。ラインス・プリーバスは政治家や議員ではない。あくまでも共和党を仕切っている人です。プリーバスは、ティーパーティー系の人たちと人間関係を調整して、これからトランプがしようとしている政策と議会とをつなぐ役割をすると思うんですよね。
 で、これも日本の政治と違うのは、大統領には法案の提出権がないんです。安倍首相は日本で「こういう法案作りたい」って提出するじゃないですか。でも、アメリカは完全な三権分立なので、大統領は何一つ法案が出せないんですよ。

:拒否権だけはある?

:拒否権はある。だけど自分からは出せない。法案を出すのはあくまでも議会なんですよ。だから、大統領が「こういう法案やりたい」って言っても、議会に出してもらわないといけないわけですよ。

:なるほど。大統領だけでは具体化できない仕組みなんですね。

:リンカーン大統領だって、奴隷制を廃止したくても、奴隷制廃止の法案は出せなかったんですよ。だからリンカーンは、抵抗していた共和党の大物を一人一人説得して、彼らに法案を出してもらったんです。

:ああ、そこは三権分立といっても、日本とだいぶ違いますね。

:違います。議会制民主主義がないので。完全な三権分立なので。トランプが色々やると言っても、実際にやるのは議会なので。

:それはちょっと、日本にない視点ですね。そのコミュニケーションのところが非常に重要になってくるというわけですね。

:特にトランプの場合、選挙期間中に、共和党の批判もしていました。共和党の大物は甘んじてそれを受けていたわけなんです。
 ところが、選挙の終盤で、女性スキャンダル出てきましたよね。そこで、先ほどのポール・ライアンだとか、議会の大物がみんなトランプを見限ったんです。「もうトランプはだめだ」「トランプを応援しない」となったんです。これ、異例中の異例なんです。

:そのトランプが勝ってしまった(笑)。

:勝ってしまった。でも、彼らはそう言わざるを得なかった。というのは、彼らは彼らで選挙やってるから。

:ああ。ということは、彼らのバックにいる保守派への配慮も必要だったということですか?

:必要だった。で、彼らはもう、トランプは負けると思っていた。このままトランプを支持していたら、自分たちも負ける。だから、「トランプとは関係ありません」って言ったんですよ。そこで亀裂が起きた。でも、トランプが勝っちゃったので、関係悪いですよね。

:ここはどうなるか、これから非常に大変な……。

:そこの間に入るのがプリーバスなんです。

:なるほど。調整役を兼ねているということですね。

:その通りです。

 

「トランプの外交政策① これから米露関係が大転換を迎える!?」

 

会議に出席するロシアのプーチン大統領(© Evgeny Sribnyjj / Shutterstock.com)

 
:さて、今後世界に大きな影響を及ぼしてくるところとして、トランプの外交政策が挙げられます。
 とくに、米露関係ですね。プーチンとトランプは非常にお互いを尊重し合って、前のオバマ政権よりは関係が非常によくなるんじゃないかと言われています。
 このあたりの米露関係と、それに伴って、日本にどんな影響が出てくるのでしょうか。

:はい。米露はずっと冷戦をやっていた、ある種、戦争を長年やってきた間柄ですよね。
 だから、特に共和党はロシア嫌いです。共和党の大物議員がトランプを応援したくなかった理由の一つは、トランプが、ロシアとの友好政策を打ち出したからなんです。

 今は、共和党も民主党もロシア嫌い、プーチン嫌い。それを決定したのは、プーチンのクリミア侵攻ですね。これでヒラリーも共和党も、「プーチン=ヒトラー」と、ずーっと批判していたわけですね。

 そこに、共和党の代表になったトランプが、「いや、プーチンこそ、現代のリーダーだ」と。「アメリカはプーチンと手を組んでIS問題を解決すべきだ」と。
 でもこんなこと、共和党は絶対受け入れられないわけです。そこをトランプは押しきっちゃったわけですね。そして、実際これから大統領としてやろうとしてる。これは、アメリカの戦後外交史の歴史のなかで革命的なことですね。

:そういう意味では、共和党とか民主党とか、ちょっとその枠を超えた存在になってきている。

:そう思いますね。トランプとプーチン、アメリカとロシアが結び付くとなるとですね、世界秩序が一変すると思うんですね。一番影響があるのは、中東です。

:中東ですか。

:結局、中東の問題を長年解決できず、かつ、アメリカが下手な介入をした結果、ISという組織を作ってしまった。これを解決するには、アメリカとロシアが手を組んで、一緒に戦うしかないんですよ。

 これを公約として掲げているので、かなり早い段階で方が付くんじゃないでしょうか。この影響がアジアにも出てきます。特にオバマ政権時は、ロシアやプーチンをいじめすぎたんですね。

ウクライナ問題で、オバマ氏に抗議するモスクワの人々

 
 巷で言われているのは、クリミア問題は、オバマ政権が仕掛けて、プーチンが巻き込まれたんだっていう強い説があるわけなんです。真相はわからないですけど。

:ある意味でプーチンを徹底的に悪者にするというわけですね。
ブラジルのオリンピックでロシアのドーピングスキャンダルがありましたが、それもアメリカがロシアの孤立化を狙ったという説もあります(笑)。

:そうですね。とにかくこの、クリミア問題で、アメリカが徹底的にプーチンをいじめたわけですね。ヨーロッパも日本も仕方なく、アメリカに付き合った。しかし、今度はその逆回転をするわけなんです。

 オバマが追い込んだことによって、プーチンは孤立化しました。そこでどうしたかというと、ロシアが中国に接近したわけなんです。
 今度は逆なので、アメリカとロシアが組むことによって、プーチンは別にもう習近平に頭を下げる必要がないわけです。これは日本にとって大きい。

:クリミア問題で経済制裁され、原油も一時期下がって、プーチンにとっては中国と接近せざるを得なかった。ところが、その必要がなくなってくると。

:原油があれだけ下がったのも、狙いはロシア叩きじゃないかと(笑)。これも説ですけどね。でも強い説があって。もうロシアにとっては天然資源しかないですから。もう中国に買ってもらうしかないところまで追いつめられたわけですね。

:なるほど。プーチンとトランプが直接やり取りできるようになってくるわけですね。そうなると、米露の間に入って、調整できるという日本のポジションが弱まるのかなといういう懸念もあります。

:まあ逆に、これもトランプの外交政策の特徴なんですけれど、外国の内政には介入しない。“不介入主義”を取ると思います。

 

「トランプの外交政策② アメリカの“介入主義”が、劇的に変わる!?」

 

武装する米軍レンジャー部隊

 
:トランプが取ろうとしている、外国の内政には介入しない“不介入主義”。これは、戦後のアメリカの外交政策を根底から覆す大変革だと思いますね。

:よくアメリカ外交史を学ぶと、モンロー主義というか、孤立主義がアメリカの基本だったと出てきますが、その後やっぱり、いろいろ変遷があったということですか。

:そうですね。そのモンロー主義というのは、アメリカの建国以来、アメリカのジョージ・ワシントン以来の国是ですね。基本的に、外国の戦争には関わらない。同盟関係も結ばない。だから、国際連盟ができても入らない。これをずっと貫いてきたわけですが、第二次世界大戦でモンロー主義は終わったわけですね。で、今度は一転して、外国の戦争に関わる。関わるどころか、思いっきり手を出す。

:(笑)どちらかというとそちらの印象が強いですかね、現代。

:そうですね。介入主義になっている。

:介入主義ですね。なるほど。

:さっきのクリミアの問題にしても、もともと仕掛けたのはアメリカかもしれない。それから、アラブの春で、リビアのカダフィ大佐が殺されたのも、仕組んだのはオバマ政権。オバマとヒラリーでやったので、こういう介入を世界中でしまくったと。

 それに対して、トランプは、ジョージ・ワシントン以来の伝統に帰ると。介入しないが、かといって同盟は結ばないという訳ではない。しかし、今までのように、同盟国に不必要な介入はやらない。

 例えば、今までのアメリカであれば、同盟国日本の首相に対して、「靖国に行くな」と言うわけですね。で、日本とロシアが近づいて、北方領土が還ってきそうになると、「やめろ」というわけです。ところが、これをやらないというのがトランプの方針なので。日露関係は逆に進むと思います。

:なるほど。そうすると、アメリカの建国当時は孤立主義で、戦後の介入主義があって、今度は不介入主義になると。そういう大きな変遷の中でトランプ氏は、不介入主義とも言えるような、そうした外交スタンスを取ってくるだろうということですね。

:そうですね。

:で、その流れのなかで、日本としては自主防衛の問題が出てきます。尖閣の問題とか、核装備とかもありますけれども、そのあたりはどのようにとらえればいいんでしょう。

:ちょっと日本の前に、アメリカの同盟国である、ヨーロッパのNATOについて考えてみましょう。このNATOに対してトランプは明確に言っていて、「自分たちで、自分の国は守ってください」と。

 冷戦時代は、ソ連が敵国だったわけですよね。このソ連からヨーロッパを守るのがNATOだった。そのためにアメリカはたくさんのお金と人を使って、ヨーロッパを守ってきたわけですね。でもそれを「もうやりません」と。「第一、もうロシアは敵国じゃありません」と。「ヨーロッパで、ロシアとの間で何か問題が起きたら、自分たちで解決してください」と。

:全部自分で解決してくださいと(笑)。

:「ドイツって大国があるじゃないですか。お金も沢山持ってるじゃないですか。自分たちでやってください」と。そもそもNATOのもともとの取り決めでは、GDPの2%は防衛費をかけるという約束だったのに、各国のほとんどは2%かけてない。アメリカだけがGDPの3%以上かけている。これをトランプが見て、「話がおかしいじゃないか」と。まずGDPの2%は、防衛費のために使ってくれと。

:そこはやっぱり、元実業家としてのバランス感覚から、応分の負担を求めているんですかね。

:そうだと思います。筋が通ってますよね。この考え方をアジアにも適用する。

:日本ですと防衛費は、GDPの1%ぐらいです。

:はい。別に法律で決まってるわけではないのに、なぜか1%。NATOと同じように、「2%は自分で持ってください」と言ってくる可能性はありますね。それと、「地域の紛争に関しては、自分たちで解決してください」と。例えば、尖閣諸島。中国が尖閣を侵略してきても、それは地域紛争なので、同盟国自ら解決してくださいと。

:地域紛争においては、不介入主義ということなんですね。

:もちろん、それが同盟国にとって非常に大きな打撃になり、世界秩序を乱すものであれば、それまで不介入だとは言ってないんですよ。例えば、ISについては、これを撲滅すると言っているので、それと同じような影響が中国の問題にあるんだったら、介入することはあり得ると思うんです。

 ただ、アメリカから見ると、「尖閣諸島って、いったいその島に何人日本人が住んでるんですか?」「一人も住んでないんですか?それをアメリカの若い兵士に守れって言うんですか?」となるでしょうね。それは通用しない。その程度の地域紛争って世界中にあるので、いちいちアメリカが出てこないですよね。

:あるトランプ氏側近の安保アドバイザーの話では、アメリカは、日本にもっと積極的なアジアでの役割を求めているということでした。確かに、お聞きしている文脈でいくと、そういう考え方が確かにあるということですね。

:そうですね。まあ、アメリカの新しいポリシーが不介入主義になるっていうことは、同盟国に対しては「自立してくれ」ということですね。

 

「実はそっくり? トランプの政策と、幸福実現党の政策」

 

スローガン「MAKE AMERICA GREAT AGAIN(アメリカを再び偉大に)」のポスターを掲げるトランプ支持者たち(© Olya Steckel / Shutterstock.com)

 
:各国に「自立してくれ」というトランプの外交政策もそうですが、経済政策についても、幸福実現党の政策にずいぶん似ているなという印象があります。

:その通りですね。ここ10年20年くらいの、アメリカにしても日本にしても、経済の流れは、「所得の再配分」というのがコンセンサスになってたと思うんですよ。もう大きな経済成長はないので、今あるパイをみんなで分け合うと。大きな政府で、福祉優先というのが常識になってたわけですね。

「小さな政府なんてありえない」と。ある種、それを言う人が、カルト的な扱いをされていたわけですよね。
 ところが、トランプの登場によって、改めて小さな政府が浮上してきたわけです。その背景には、富の再配分、大きな政府が失敗したわけですね。それをやったら、みんなが貧しくなっちゃったと。一つの結果が出たんだと思います。

:実際、1月に就任して、具体的に政策を打っていくわけですが、具体的な成果が表れてきたら、日本にも影響があるんじゃないかという気がしますが、そのあたりは。

:そうですね。日本とアメリカが似ているのは、人件費が高いので、自国企業が海外に出ていきますよね。アメリカの企業は、メキシコに行く。日本の企業は、中国や東南アジアに行く。人件費の安いところで稼ぐと。また、政府があたかもそれを推奨しているようにも見えますね。

:その感じはありますね。自由貿易こそがグローバル・スタンダードだと言って。

:でも、その結果何が起きたかというと、富が海外に流出し、国内の雇用が減り、賃金が下がったと。これに対してNoと言ったのがアメリカの大統領選だったので、同じことが日本でも起きてくるでしょう。

:先進国全体が同じような問題を抱えていると。

:おそらく、アメリカで始まったこの波は、日本にもやってくると思います。日本では、大きな政府というのは、自民党も民進党も共産党も公明党も全部一緒ですよね。

:そうですよね。社会福祉政策に関しては、与党と野党の違いがないってよく言われますけれども(笑)

:もう、コンセンサスになってますよね。でもその結果、日本はよくなりましたか?と。

:成長率は上がってない。消費も増えていない。

:アメリカの経済成長率は1.5%ですけど、日本のアベノミクスなんか去年の成長率0.7%ですから。

:1%いってない。

:デフレも脱却してない。だったら、根本的に変える必要があるんじゃないですか? という点では全く同じ。ある種、カルト扱いされていた小さな政府を日本で言っているのは、幸福実現党ぐらいです。

幸福実現党の2016年参院選主要政策集。
国防強化、消費税減税、マイナンバーの廃止などを掲げた。

 
:減税を訴えている政党は、たくさんありますけれども、本当に「幸福実現党しかない」ってよく言われます。

:ない。例えば、消費税ひとつ取っても、消費税を8%に上げるのに反対し、上がった後に「5%に戻せ」と声を張り上げてるのは、幸福実現党ぐらいですね。

:トランプは、所得税の区分も7つから3つくらいに下げると。要するに簡素化ですね。実現党もフラットタックスとか言ってますけれども、方向性は全く同じですよね。

:同じです。個人も企業も大減税です。

:そして、経済を成長させる。

:経済成長重視。そっちがまず大事。だから、富の再配分を先にやるか、経済成長を先にやるか。富の再配分を先にやったら、みんなが貧しくなる。

:そういう意味じゃ、アメリカの国民は、経済成長を選んだというわけですね。

:トランプを選んだということは、そっちを選んだということですね。

:分かりました。今回のインタビューで、トランプ氏の真相がかなりよく見えてきたと思います。及川局長、現地の情報をもとにした貴重な話をありがとうございました。

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