【幸福実現党 矢内筆勝 総務会長(兼)出版局長インタビュー】 誰も言わない! いじめ問題解決の急所!


 

2016年8月の青森県での2件のいじめ自殺や、11月には横浜市での福島から避難してきた子へのいじめ問題が発覚するなど、全国的にいじめに関する事件が無くなりません。今回は、2006年からいじめ問題の解決に取り組んできた矢内筆勝 党総務会長 兼 出版局長に、現行の法律の問題点などを語ってもらいました。

MC:畠山元太朗 党広報本部長補佐

 

なぜ、いじめで人が死ぬ? NPOを立ち上げて分かった、深刻ないじめの実態

 

「いじめから子供を守ろう!ネットワーク」の資料を手に、いじめ問題を語る矢内会長。

 
畠山: ここ最近、いじめに関する報道がまた増えています。2013年には、政府により「いじめ防止対策推進法」が定められましたが、なかなか解決できない状況です。

 矢内さんは、政治活動を始められる前、いじめ防止のNPO(非営利法人)の立ち上げをされたと伺っています。今回は、そのときに取り組んできたことや、現在の政府が行っている対策の問題点などをお聞きしたいと思います。

矢内: 2006年のことになりますが、今のように、「いじめ自殺」が相次いだんですね。ですが、当時、いじめが深刻化していることを、保護者も教育界もみんな理解していなかった。だから、私が最初に始めたことは、調査です。「そもそも、いったい何が起こっているんだろう?」と。

 その年に、「いじめから子供を守ろう!ネットワーク」というNPOを立ち上げて、2年間で500件ぐらいの「いじめ相談」を受けました。当時は、相談できる行政側の窓口も少なかったんです。

畠山: 毎日のように相談があったんですね。「うちの子供がいじめにあっているが、先生に言っても解決できない」というような相談ですか?

矢内: その通りです。まずは直接お話を伺うのですが、話を聞くだけでは解決しません。
一緒に学校に行ったり、先生と相談したりします。教育委員会に行って対処をお願いすることもありました。

 中でも、一番力を入れたのは、いじめの啓蒙活動です。今でこそ浸透してきましたが、当時、「いじめは悪いことで、犯罪だ」とあまり理解されてなかったんです。「よくある話だし、子供同士のケンカでしょう」という感じでした。

 ところが、現代のいじめは昔と比べて、非常に残酷で陰湿なんですよね。実際に聞き取り調査をしたところ、犯罪と変わらないようなことが、学校で行われていたんです。

畠山: まあ、確かに、いじめは良くないとはみんな思っていても、「犯罪だ」とまでは思っていないかもしれません。その認識を変える活動を行ったと。

矢内: そうなんです。そこで、さとうふみやさんに頼んで、「いじめは犯罪! 絶対にゆるさない!」というポスターを作ったんですよ。このポスターを全国の公立小中学校に貼ってもらおうと、お願いしたんですね。
 それで、全国で9,300校に貼っていただけました。これは、小中高の約1/4に当たります。

畠山: それはすごい! このポスターは、実際に道端の掲示板などいろいろな所で見かけました。

矢内: やはり、いじめで人が死ぬということは、子供だけでは対処できないということですよ。だから、先生方や大人たちが関わってあげないといけないわけですね。

「いじめから子供を守ろう!ネットワーク」のポスター

 

いじめに遭いやすいのは、どんな子?

 

※写真はイメージです。

 
矢内: 現代のいじめって、実に複雑なんですよね。
私は、よくドラえもんのたとえ話をしているんです(笑)。ドラえもんでは、「いじめる側=ジャイアン」「いじめられる側=のび太」ですよね? ところが、現代のいじめられっ子は、のび太じゃないんです。

畠山: では、誰が?

矢内: それが、ジャイアンなんです。

畠山: ジャイアンがいじめられる!?

矢内: 意外ですよね。じゃあ、いじめている側は誰だと思いますか?

畠山: スネ夫ですか?

矢内: スネ夫は実行部隊ですが、首謀者ではないんです。

畠山: 出木杉君ですか?

矢内: そうなんです。クラスの優等生が、塾通いのストレスの発散のために、いじめの首謀者になり、上手にスネ夫たちを操って、ジャイアンをいじめて不登校にさせる。そんなケースも少なくなくありません。しかも、その出来杉君も、しばらくすると、いじめられる側になっているという事もあります。明らかに、昔とは違ういじめが蔓延しています。

畠山: それは、教師側から見ても、いじめの構図が大変分かりづらいと思います。

矢内: ええ。いじめの方法も巧妙になっています。表だって殴ったり蹴ったりなら分かりやすいですが、ラインなどのSNSの中で、集団で無視したりする。そして、だんだんと孤立無援の状態に追い詰めていくんです。そうした目に見えない形の、いじめが流行っているんです。

 これは文科省の資料ですけど、小学校4年生が小学校6年生になるまでの3年間で、一度も被害経験がない児童は11.5%、一度も加害経験がない児童生徒が21.4%となっています(平成28年 国立教育研究所調べ)。

畠山: ほとんどの人が、いじめられる側といじめる側の両方を経験していると。ここからも、ジャイアンとのび太のような単純な構図じゃないことが分かります。

矢内: そして、なかにはエスカレートして、自殺にまで追い込まれる子が出てくるんです。

 

いじめ自殺を防ぐには、まずはいじめを発見すること!

畠山: 例えば、最近では、8月19日に青森の中1男子生徒が、「いじめがなかったら、もっと生きていた」という言葉を残して自殺するという、大変いたましい事件がありました。
 報道によると、担任の先生は、相手の同級生からも事情を聞いていたが、事実確認できなかったと言っているそうです。
 こうしたケースが、水面下では、全国の至る所にあるのではないでしょうか?

矢内: いじめで自殺まで至るかどうかの分岐点は、大人が「いじめを発見できるかどうか」にあります。発見できないと、どんどんエスカレートして、自殺にまで追い込まれるケースが多いんです。逆に、発見できれば、解決する方法はある。

 基本的に、いじめられている子供は、「自分はいじめられてる」と大人に言えないんですよね。言うのに、ものすごく勇気がいるから。

 だから、誰かが発見してあげなきゃいけない。
 まずは親御さんですよね。いじめられると、必ず子供の様子がおかしくなってくるので、お父さんやお母さんが、「どうしたの?」と声をかけてあげることです。
 もう一つは、学校の先生ですよね。子供が学校で頼りにするのは先生ですから。

畠山: なるほど、大人の側が注意して発見してあげないといけないわけですね。

 

なぜ!? 教師がいじめを隠蔽する理由

 

※写真はイメージです。

 
矢内: いじめが発覚したら、次に解決しようとするわけですが、ここで大きな問題があります。具体的には、教師の対応の問題です。
 例えば、子供が「いじめられている、助けて」と言っても、先生がそれを見て見ぬふりをしたり、なあなあで済ませてしまう。要するに、問題に蓋をしてしまうんです。

 よく指摘されているのが、例えば、「誰にいじめられたの?」「○○君です」「じゃあ、○○君と○○君で話し合ってみようね」と、その場で話し合わせて、「お互い悪いところがあったね。じゃあこれからいじめはしないようにね」とシャンシャンにする。こういう対応が、全国で見られました。
 しかし、これは、いじめの「隠蔽」になるんですね。

畠山: 教師側が、いじめを隠蔽するというのは、ちょっと信じられないことですね。

矢内: 自分の学校やクラスでいじめがあると、教師や学校はマイナス評価を受けます。だから、どうしても、いじめを隠蔽してしまうんですよ。

 例えば、2003年、文科省の中央教育審議会が「5年間でいじめを半減させる」って方針を出したんですね。
 これ自体は悪いことではありません。しかし、それでどうなったかというと、学校側は一生懸命いじめを隠蔽するわけです。いじめが発覚すると、自分たちの評価が下がっちゃうから。

 また、「いじめ防止対策推進法」では、「重大事態」という概念があります。「心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき」などに適用されるものです。

 

※コラム……重大事態とは、「いじめ防止対策推進法」第二十八条で触れらており、以下の場合のことである。

  1. いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
  2. いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。

 
 でも、仮に、いじめを重大事態と認定したら、学校をあげての一大事になります。速やかに報告しなきゃいけない。報告書も作らなきゃいけない。報告を受けた教育委員会も大変。上位機関が学校に乗りこんでくるかもしれない……そう考えると、みんな隠蔽しようとしますよね。重大事態と認定されないように。

 例えば、横浜で、福島から避難した子に対するいじめがありましたが、「150万ものお金を自分から率先して渡していた」と学校側が認定していたそうです。普通に考えたら、150万ものお金、自分から渡すわけないないですよね。常識的に。ですが、「自分から渡した」となると、重大事態には当たらなくなる。

 

横浜でのいじめ事件を報じた11月12日付の東京新聞

 

いじめが減らない理由:「いじめ防止対策推進法」には、教師や学校への処罰規定がない!

畠山: 要するに、現在の法律は、いじめを隠蔽するモチベーションが働くようになっていると。何か解決策はありますか?

矢内: 私たちが訴えていた「いじめ処罰法」にヒントがあると思います。これは、大川隆法党総裁が提示されたものですが、政府の「いじめ防止対策推進法」と何が一番違うかというと、罰則規定の有無なんです。

 いじめは犯罪ですから、やっぱり、いじめている子供へのペナルティーは必要ですよね。例えば出席停止になるとか。この部分は、「いじめ防止対策推進法」にも組み入れられています。

 ですが、「いじめ防止対策推進法」には、学校・教師への罰則規定がないんです。例えば、戒告、減給、免許剥奪のような罰則です。ここが致命的です。
 私たちは、いじめを隠蔽したり、黙認していた学校や教育委員会も、やはり処罰されるべきじゃないですかと訴えていたんです。そうしないと、いじめ問題に真剣に取り組んでくれませんからね。でも、その「いじめ防止対策推進法」には、そこの部分がすっぽり抜け落ちているんです。

畠山: 確かに、私も法律の全文を拝見しましたが、教員の処罰規定というところに関しては、ほとんど触れられていない。
 報告義務であったり情報共有、あとは重大事態の認定などについては詳細に規定されていますが、本当に重要な部分が、ガッサリ抜けています。

矢内: 学校の先生には良心的な方が多いし、頑張っていじめ対策に取り組まれていることを私も知っています。
 しかし、自分たちの評価のことを考えると、学校の先生方や教育委員会も含めて、いじめ問題はなかったことにしたいんですよね。

 そういう意味では、「教師への処罰規定」と言っても、処罰がしたいわけではないんです。ただ、そうした規定がないと、いじめを隠蔽したくなる。そうした誘惑から、学校や教師を守るための規定が必要なんです。

 

いじめが減らない理由②:自分たちへの処罰を嫌がる、教師たち

畠山: 私の子供が小学生なので分かるのですが、確かに子供のケンカといじめの線引きは難しいところがあります。教師から見ても、遊んでいるのか、いじめに遭っているのか分からないケースもあると思います。
 だから、なあなあにしようと思えばいくらでもできてしまう。一方、「いい悪い」をはっきりさせる先生なら、しっかりと指導してくれる。つまり、完全に先生任せの状況なんだと思います。

矢内: 先生の対応次第なので、責任を明確にするのは、本当に大事だと感じます。

 これに関して、今年、文科省のいじめ防止対策協議会というところが、「いじめ防止対策推進法」の施行状況に関して議論を行ったそうです。
 ある専門家の方がおっしゃっていますが、その場で、教師の処罰規定を明確にしたらどうかという提案もあったそうですが、「現場の教師を信用していないのか」という声が多くあるので、見送られてしまったそうです。

畠山: 要するに、「情報共有しなかった場合には何らかの罰則がある」ことを明記されたくなかったということですね。実際はもう、「情報共有しなければいけない」と法律に書かれているわけなんけれども(笑)。

矢内: その通りです。

畠山: 生徒や親御さんからしてみると、正直なところ、唯一の頼りは先生です。そこがなかなか動いてくれない場合に、本当に解決が難しい。先生にしっかりやっていただく仕組みにする、というのが基本原則ということですね。

 

いじめは犯罪! 実社会では刑法犯になる!

矢内: これは、一つ明確に言えるのは、学校の先生には子供の命を守る責任と義務があるんですよ。今のいじめというのは、明らかに普通の社会でいったら犯罪と同じことが行われているんですね。

 無視によって、精神的にダメージを受けて、不登校になり、人生狂ってしまう子供は、それこそ何十万人もいます。

 それから肉体的な暴行、殴る蹴る。そしてクラブ活動だと「しごき」と称して、実際にはリンチみたいな暴行を加えて、中には柔道の練習で殴られて脊髄がつぶれ、意識不明のまま寝たきりになった女子高生の例もあります。

 また、性的な暴行もあります。親には絶対言えませんから、最終的に自殺に追い込まれたケースも、私は知っています。

 先ほどの横浜の例もそうですが、恐喝されて親のお金を何百万も持ってこさせられる。また、その恐喝も、今度は犯罪行為をさせられるというのはよくありますね。「万引きしてこい」とか。

畠山: 大人の世界だと、全て刑法犯に当たるということですね。

矢内: そうです。これは、学校から一歩外に出たなら、普通に犯罪ですから。学校だったら殴ってもいいのか、暴行してもいいのか、恐喝してもいいのか、ということでしょう。

 いじめをなくすと言っても、要するに刑法犯を取り締まるというのと同じことだと思います。学校だから、好き放題やっていいというのもおかしい話です。それを放置するから自殺する子も出てしまう……。

 これに関して、親御さんは早期発見して対処しなければいけませんが、安全配慮義務という法律上の概念があり、学校の先生には、子供たちが学校の中で安全に生活できる義務があるんですよ。

 現代のいじめが犯罪行為とほぼイコールとなってきているので、安全配慮義務違反をした学校の先生は、ペナルティーを負わなければいけないということは、当然、法律的にもなければおかしいです。

 そこの肝心な部分が抜け落ちているので、いじめがいつまでもなくならない。

畠山: 今のいじめは、大人で言えば刑事事件に当たるようなことが、実際に行われているということですね。

 また、「いじめている子供にも人権がある」と、いじめる側に過度に配慮をするケースも見かけますが、まずは、いじめられている子供を守ることを徹底することが大事ですね。

矢内: いじめは犯罪行為なので、知らないで社会に出ると後々大変です。それを、小学校、中学校のうちから教えるのが教育であり、教師の責任です。それが抜け落ちている。

畠山: 善悪をはっきりさせないようにしてきたところが、見直しを求められている。

矢内: 戦後、日本の教育界の過ちの一つでしょうね。その根底は、教師が聖職から労働者になった。教育者としての使命感を見失っているところもあるでしょう。

 

 

いじめを立証することは難しい!

畠山: ちょっと各論にはなりますが、実際にいじめがあったとしても、「いじめがあった」と証明することは、かなり難しいのではないでしょうか。先生にいじめを理解してもらい、相手の親にも理解してもらうわけですよね。
 もちろん、何とかしたいから、訴えるわけですが……。

 いじめ問題を解決するにあたって、このあたりに何か工夫がいるのかと。告発できずに、泣き寝入りするケースもよくあると思います。

 それに関しては、大川隆法総裁の「いじめ処罰法」で、「真剣にいじめを訴えたときには、いじめが存在するとみなす」としています。これは、法律用語で言うと、あまり「立証責任」の負担を負わせないために、大切なところだと思います。

矢内: ただ、「いじめ防止対策推進法」ができてから、国を挙げていじめを防止することが定められて、いじめ問題を解決する方法が、少しずつですが、ある程度現場で共有されるようになったそうです。この点は、前進していますね。

 だから今度は、「立証責任を学校の先生方が負うんだ」という点についても、これからの法改正で検討する必要があるでしょうね。

 

STOPいじめ! 幸福実現党の取り組み

畠山: 現在の法律に関して伺ってきました。幸福実現党としてもいじめ問題解決に力を入れています。今、各地で行っている具体的な政治活動について教えてください。

矢内: 党総務会として、「ハッピー・ライフ・ネットワーク」といって、いじめ問題解決のバックアップ活動を立ち上げています。今、どこに行っても、いじめがない学校ってないですからね。
 いじめがあったら親御さんに具体的なアドバイスをし、学校・教師、場合によっては政府に対しても、いじめを解決するよう具体的な政策提言や活動を始めているところです。

 やはり、これだけいじめが蔓延して、犯罪行為が行われているということは、日本の教育界にとって非常に大きな問題です。

畠山: 青森や神奈川、東京、栃木、宮城などでは、教員の処罰規定を入れた方がいいんじゃないかと、陳情活動も行っていますね。

 

各地で陳情を行う幸福実現党員(三國佑貴 青森4区選挙区支部長、壹岐愛子 神奈川3区選挙区支部長、中岡茉妃 東京6区選挙区支部長)。

 
矢内: また、横浜のいじめでは、政府やマスコミの問題のしわ寄せが、子供たちに行っているんです。私は、参院選で、福島は安全だと「福島安全宣言」として訴えてきましたけど、そうした本当のことが知らされていない。

 加えて、新潟でも同じようなケースでいじめられたってことがありますね。そこでは学校の先生が、福島から避難している子供を「ばい菌」扱いしていたそうです。

畠山: ちょっと信じられないですね。また、そうしたいじめを助長させた、マスコミの風評被害が背景にあることも無視できません。

矢内: そのとおりです。だから、私たちは、様々な政策を通して子供たちを守る活動を行っているのです。

畠山: 矢内局長、今回はいじめ問題のかなり具体的なところも含めてお話しいただき、ありがとうございました。

 

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