【及川幸久 海外を分かり易く解説】トランプ政権はパレスチナ問題を解決できるか?

トランプチャンネル №28

 
こんにちは、及川幸久です。

今トランプ大統領は、中東からヨーロッパへ向けて、大統領就任後初の外国訪問をされています。前回のトランプチャンネルでは、イスラエル訪問を取り上げました。

 

パレスチナから中東問題を考えてみる

前回と同様に、今回は5月23日に訪問したパレスチナ訪問をきっかけとして、中東問題に触れてみたいと思います。

トランプ大統領はパレスチナを訪問し、パレスチナ自治政府のアッバース大統領と会談をしました。会談後、パレスチナ自治政府のTwitterにこのような、ツイートが出ています。

 

 

「アッバース大統領は記者会見で、こう言っている。パレスチナの自由こそが、(世界の)平和と安定を実現する鍵である」

 
これは、実際に記者会見でアッバース大統領が述べた言葉です。

 

トランプ大統領とアッバース大統領の共同記者会見

パレスチナ自治政府 アッバース大統領

トランプ大統領とアッバース大統領の共同記者会見がありましたが、この中でアッバース大統領が述べたことは、大きく分けて2点です。

 

①「トランプ大統領と会談をして、希望が持てた」

パレスチナ問題は、イスラエルとパレスチナの和平成立が長年の問題ですが、今は暗礁に乗り上げているわけですね。もう解決不能だと思われている問題ですが、今回トランプ大統領と会談することで、希望が持てた――それを、正直に述べていました。

 

②「このパレスチナの自由と独立こそが、パレスチナの問題だけではなく、世界平和実現の鍵なのだ」

非常に大げさな言い方に聞こえますが、真実かもしれません。それくらい、このパレスチナ問題の解決は、世界中のありとあらゆる問題の中で、もっとも難しい問題だと言われています。

このパレスチナ問題のポイントについて、簡単に振り返ってみたいと思います。

 

パレスチナ問題の根底にあるユダヤ人の歴史

 

 
今から約2000年前の西暦70年頃、ユダヤ人の国が当時のローマ帝国によって滅ぼされました。それ以来、ユダヤ人達はいわゆる放浪の民族となり、世界にバラバラに散っていくわけです。そして20世紀、ヒトラーによるユダヤ人の大迫害がありました。

戦後、世界はユダヤ人に対して、非常にかわいそうだということで、欧米諸国、主にアメリカとイギリスが、ユダヤ人の国である「イスラエル」を建国することを許してあげました。その“許された場所”が、中東のパレスチナ人が住んでいる地域にあたります。しかし、この方法が、まずかったわけです。

そもそも、パレスチナ人が住んでいる地域(日本でいうと四国くらいの小さな地域)に、無理やりユダヤ人たちを移民させ、そこに一つの国を造らせた。そこに何十万、何百万というイスラエル人たちが入ってきた。

土地を奪われたパレスチナ人たちは、当然怒りますね。そして、イスラエル人は次から次へと入ってきて、力を持ち、武器も持ち始め、次第に強くなってしまい、それが脅威になってしまった。その結果、イスラエルとアラブ諸国との中東戦争が何回にもわたって、続いたわけです。

この問題の根底にあるのは「十字軍」の存在です。今から千年前にキリスト教とイスラム教は十字軍の戦いを通して、血で血を洗う戦いを続けていました。しかし、決着がつかず、現在に至っています。

現在、キリスト教側は、イスラム教側と戦うために、このイスラエル、ユダヤ教と組んで戦う形になっています。

また、このイスラエル側も独自では戦いきれずに、キリスト教側(主にアメリカ)を引き込んで、アラブ・イスラム教側と対立するという、「十字軍」以来のユダヤ・キリスト教 V.S.イスラム教という対立構図が、そのまま残っているわけです。

 

キリスト教によって滅ぼされた2つの宗教

しかし、宗教という観点でもっと古くさかのぼって見てみると、この中東には、イスラム教ができるはるか前に、マニ教やゾロアスター教という宗教がありました。

現在、それらはありません。なぜ、なくなったか。それは、キリスト教が滅ぼしたからです。このキリスト教によって滅ぼされた中東の宗教。その恨みが現在も、「パレスチナ問題」として残っているわけです。この問題の根源をさかのぼると、2000年以上にわたる問題なのです。

 

東エルサレムは誰のもの?

イスラエル ヨルダン川西岸の障壁、イスラエルとパレスチナ間の紛争のシンボル

エルサレムの東側にある旧市街地は、正方形の形をしており、1つ目はイスラム教地区、2つ目がユダヤ教地区、3つ目がキリスト教地区、4つ目がアメリカ地区と、4分割した地域で出来上がっています。誰がこの地区を治めるかというのが、大問題となっています。

さて、イスラエルの首都は、いったいどこでしょうか? イスラエル自身は、このエルサレムだと言っています。しかし、国際社会はそれを認めていません。

国連は、「イスラエルの首都はあくまでもテルアビブだ」と言っています。一方でパレスチナは、「旧市街を含む東エルサレムがパレスチナの首都だ」と主張しています。

しかし、実際には、このエルサレム全体をイスラエルが実効支配しています。こういう複雑な状況になっています。

 

トランプ大統領の公約

トランプ大統領は選挙戦時から、現在テルアビブにあるイスラエルのアメリカ大使館をエルサレムに移す、という公約を出しています。

実は、これが重要な公約で、何を意味しているかというと、アメリカ政府が正式にイスラエルの首都をエルサレムだと認める、という意味なのです。

実は、アメリカ政府ではなくアメリカの議会は、90年代にすでにこれを認めています。イスラエルの首都は、あくまでもエルサレムなのだと。

そして、アメリカ大使館をエルサレムに移すという法律まで、もう作っているのです。しかし、アラブ側との軋轢を恐れ、歴代アメリカ大統領は大統領令を出して、この実行を凍結してきたのです。

 

中東問題の本質とは?

さて、中東問題の本質は、いったい何でしょうか。

この問題にかかわっている人たちは、「これはあくまでも領土問題なのだ。決して宗教の問題ではない」と、口を揃えて言います。宗教問題だと認めたくないためです。しかし、どう考えても、中東問題の本質は宗教の問題です。

確かにイスラム教やキリスト教、ユダヤ教、それぞれは誕生した時代も、地域も、民族も違います。これらの宗教は、こういう時代や民族によって、大きな影響を受けているために、欠けているものがあります。それは何かというと、「地球レベル」という意識です。

 

中東問題を解決する「地球レベルの意識」

なぜならば、これらの宗教が誕生した時代には、そもそも「地球」という概念がありませんでした。しかし、今はどうでしょうか。交通手段や通信の手段が非常に発展しているので、この「地球レベル」という意識ができています。

私自身、日本にいながらアメリカのラジオ番組に、国際政治コメンテーターとして電話で出演しています。時差はありますが、この電話でアメリカのラジオ番組に出演して、北朝鮮問題が起これば、この北朝鮮問題は日本ではどう扱われているかを、アメリカのリスナーに直接コメントしています。

この地球レベルの意識がつくられている現代と、民族意識レベルの宗教で、レベル感が合わなくなっているんですね。

ユダヤ教というのは、イスラエルの光です。

イスラム教は、アラブの光です。

確かに、こういう光は必要です。しかし、今本当に必要なのは、地球の光だと思うのです。アッバース大統領が述べた通り、パレスチナ問題を解決するということは、この世界平和を実現する鍵になるでしょう。しかし、現状の宗教の意識のままでは、この問題の解決は、ほぼ不可能でしょう。

現状の宗教や民族の意識、その違いを超えた「地球レベルの意識」というものが、今必要だと思うのです。この「地球レベルの意識」こそが、中東の問題を解決する本当の“鍵”ではないでしょうか。私は、そう思います。

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