税制改正議論について──②企業関連(事業承継税制など)

幸福実現党政務調査会ニューズレター No.12 2017.12.10

幸福実現党政務調査会ニューズレター No.12
2017.12.10

税制改正議論について──②企業関連(事業承継税制など)

現在、中小企業の後継者不足が深刻の度を増しています。この状況を踏まえ、自民党税調は「事業承継税制」の要件を緩和し、事業のスムーズな承継をすすめるとしています。また、企業の内部留保が拡大する一方で、それが賃金上昇や設備投資拡大に直結していないという状況を打破すべく、賃上げや設備投資を行う企業を対象に法人税を軽減する措置をとることも検討されています。いずれの改正案についても、問題の抜本的解決につながるとは考えられません。以下、詳しく見ていきます。

 

事業承継税制

同税制を受けるための要件変更だけでは、事業承継問題の解決は危うい。相続税・贈与税の撤廃こそ、真の解決策だ。

 

政府内での議論

幸福実現党政務調査会ニューズレター-No.12-2017.12.10

 中小企業は日本の企業の99.7%を占めており、雇用全体の7 割を支えています。日本の経済と雇用を支
える中小企業の存在なくして、日本経済の活性化はありません。

 その中で、現在、中小企業の後継者不足が深刻化しています。今後10年で70歳を超える中小企業の経営者は約245 万人で、そのうち約半分の127万人が後継者未定となっている状況です。経済産業省・中小企業庁の試算によれば、後継者不足をこのまま放置すれば、今後10年間で約650万人の雇用と約22兆円のGDP が失われる可能性があるといいます(注1)。

 事業承継の大きな壁になっているのは、承継の際に課される多額の相続税・贈与税です。これらが、中小企業経営者にとって大きな負担となっているのは事実です。

 円滑な事業承継を進めるという目的のもと、2008年5月に「経営承継円滑法」が制定されました。これを受け、事業承継関連税制(巻末参考1)が創設されています。

 2013年度に、同制度の適用条件の見直しや手続きの簡素化が行われました。こうした税制改正にも関わらず、2016 年8 月時点で事業承継税制の活用認定を受けた例は、相続税が959 件、贈与税が626 件に留まっています(2008年10月〜2016年8月)。100万件以上とされる後継者未定の状況を打破するには、より思い切った対策が必要ではないでしょうか。

 現行の制度は、「5年間は、平均で8割の雇用を守る」といった制限があることから、その使い勝手の悪さが指摘されています。今回の税制改正においては、雇用確保に関する要件などを緩和することにより、制度を使いやすくし、事業承継をすすめようという狙いがあります。

 

政調会としての考え方

 事業承継税制の要件緩和が行われたとしても、同税制の利用がどのぐらい伸びるのかは未知数です。宮沢洋一・自民党税調会長は「徹底的に中小企業の経営者の世代交代を進める」としていますが、かけ声倒れに行きつくことになりかねません。

 事業継承を円滑に進めるための抜本的な解決方法として、幸福実現党がかねて訴えている通り、事業承継の妨げとなっている相続税・贈与税を廃止するのが最善策だと考えます。

(注1)経済産業省「中小企業・小規模事業者の生産性向上について」より。中小企業庁は、25年までに経営者が70歳を超える法人の31%、個人事業者の65%が廃業すると仮定しています。

 

法人税(賃上げ・積極的な設備投資を行う企業への税制優遇)

インセンティブを付与するだけの姑息な税制改正では不十分。経済の見通しを明るくするために、消費減税・法人税の大胆な引き下げが必要。

 

政府内での議論

 安倍政権の経済運営において、「デフレ脱却」が最大の課題と位置付けられています。企業が賃金アップや設備投資を積極化することで、経済の好循環化を促進することが望ましいものの、企業の収益の多くは内部留保に回り、現在その額は406兆円(2016年度時点まで膨れ上がり、過去最高を記録しています。

 こうした中、企業に賃金上昇や設備投資を促そうと、①積極的な賃上げや設備投資を行う企業を対象に、法人税を29.97%から20%台半ばまでに引き下げ、さらに、②革新的な技術へ投資を行う企業に対しては、税負担を20%前後に引き下げるという条件付きで「2段階の減税」を行うことが検討されています。

 一方で、賃上げ、設備投資に消極的な企業には「租税特別措置(注2)」を縮小したり、除外したりすることで、実質的な増税を行うということも、検討項目の一つとなっています。

 また、中小企業に対しては、賃上げをすれば固定資産税を免除するなどして税負担を軽減することに加え、社員の教育・訓練を行えば軽減幅を拡大することも検討されています。

 

政調会としての考え方

 企業に賃上げや設備投資を促進させようとする「姑息」な税制上のインセンティブ付与、賃上げに協力しない企業への増税措置は、民間の自由な経済活動をコントロールしようとする安倍政権の性格をよく表しています。

 業績が低迷して賃上げを行うことができない企業は、減税措置を受けることができないという問題があリますが、今のところ、その解決策が明示されているわけではありません。

 賃金アップ・所得の増加、消費の拡大、企業収益の拡大といった経済の好循環を形成するためには、将来の先行きを明るくするための、消費税の5%への減税、法人税の無条件での10%台への大胆な減税策が必要です。

(注2) 租税特別措置とは、設備投資の促進など、ある政策目的に沿って税の優遇を与える政策上の例外規定のことを言います。

 

参考1:事業継承税制の要件

 

<事業承継税制とは>

 事業承継税制とは、後継者が、都道府県知事の認定を受けた非上場会社の株式等を先代経営者から相続又は贈与により取得した場合において、相続税・贈与税の納税が猶予(一定の条件で免除)される特例制度のことです。

 

<納税の猶予要件(相続税・贈与税)>

○申告期限から5年間は、以下の要件を満たして事業を継続することが必要となります。
  1. 雇用の8割以上を5年間平均で維持。
  2. 後継者が代表を継続。
  3. 先代経営者が代表を退任。
  4. 同族で過半数の株式を保有。
  5. 後継者が同族内で筆頭株主。
  6. 対象株式を継続して保有。
  7. 上場会社、資産管理会社、風俗関連事業を行う会社に該当しないこと等

 

○5年経過後は、以下の要件を満たすことが必要。
  1. 対象株式を継続して保有。
  2. 資産管理会社に該当しないこと。

 

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