ポイント
- 政府の補助金策は財政赤字拡大につながるのみで、これ以上行うべきではない。
- ガソリン価格を押し上げている主因である原油価格の上昇、円安、税金部分へのアプローチこそ必要。
- 原油価格の押し上げ要因となっているウクライナ戦争は、政府として早期停戦への働きかけを。
- ガソリン関連の税のあり方見直し、円安是正を図る環境整備に向けても、バラマキ是正が求められる。
ガソリン価格は上昇を続け、過去最高水準を突破
ガソリン価格の高騰が続き、経済への影響が深刻化しています。全国平均のレギュラーガソリンの店頭価格は、8月28日時点で185.6円/ℓとなり、統計開始以降の最高値である185.1円(2008年8月)を更新しています。
企業活動や暮らし、特に、自動車が生活に欠かせない地域社会に対する影響が深刻化しています。人の移動や物流がこれ以上停滞しないよう、ガソリン価格を高くしている要因に適切にアプローチし、間違った政策があればそれを正すことで、価格の適正化を図るべきです。幸福実現党政調会は、「小さな政府・安い税金」の哲学に基づいた価格是正策を提案いたします。
政府の「補助金策の延長」には、問題がある
政府は昨年1月から、補助金支給策により、ガソリン価格高騰の緩和を図っています。その仕組みは、目標価格を上回る部分に対して、一定の補助率で計算された補助金を、石油元売り会社に支給して、価格を抑えようとするものです(*1)。
今のスキームは9月末で終了することになっていることから、岸田文雄首相は先般、今のガソリン補助金策を年末まで延長すると表明しています(*2)。
しかし、この補助金策を行うことに正当性は見出せるのでしょうか。問題は、今後も原油価格が上がり続ければ、補助金を撒き続けることになってしまう点にあります。この補助金策を始める前、当初の予算総額は900億円とされていましたが、ガソリン価格の高騰が続いた結果、今年9月までに何と6兆円までに膨らんでいるのです。これは、政府が、ガソリン価格が上がる根本的な要因には何らアプローチせず、補助金の支給に歯止めが効かなくなった結果と言えるでしょう。
言うまでもなく、補助金の原資は税金です。一時的な緩和策のためにバラマキを続ければ、ゆくゆくは増税という形で、国民がツケを払わされることになるのです。ガソリン価格の抑制が必要だとしても、血税を垂れ流すだけの補助金策を延長すべきではないのです。
では、ガソリン価格を押し上げているのは、どのような理由でしょうか。それは、ドル建て原油価格の上昇、円安、そしてかねてよりガソリンにかけられている重い税金に大別することができます。ガソリン価格高騰の抑制のためには、根本的な要因にアプローチする施策こそ必要です(*3)。
(*1)基本的に、ガソリン価格の168円を超えた分は3割を、193円を超えた分は85%を支給するという、2段構えとなっている。
(*2)岸田首相は、今後、さらに補助金の規模を嵩上げし、185円を超えた分は全額を補助することも検討するとしている。
(*3)日本経済新聞・電子版(2023年8月30日付)「ガソリン最高値更新、円安の影響8割 原油高要因上回る」を参照の上作成。
(参考)ガソリン価格の変動要因(22年初時点の(164.7円)から23年8月21日(183.7円))
必要なのは、補助金ではなく根本的な対策
以上を踏まえて、ガソリン価格を下げるにあたっては、本来、本体価格を下げるか、税金部分の見直しを図る必要があるでしょう。その具体策のあり方について、下記の通り見ていきます。
①ウクライナ戦争の早期停戦を働きかけるべき
本体価格は概ね、ガソリンの元となる原油の国際的な需要と供給のバランス、そして為替動向で決まります。原油の需給が逼迫している理由には、今、ウクライナ戦争でG7をはじめとする各国が、ロシアが生産する石油に禁輸措置をとっていること、また、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」が協調減産を行う方針を示し、それを主導するサウジアラビアが既に自主減産を行っていることが挙げられます。
ガソリン価格を下げるためにも、日本は、ウクライナへの軍事的・経済的支援を即刻やめ、ロシアへの経済制裁を解除すべきです。日本にとってロシアへの制裁は、原油価格の高騰を招くのみならず、軍事面、経済面において、中露北を同時に敵に回す結果となり、国益に反するといえます。また、世界的な価格高騰を抑制するためにも、ロシア-ウクライナ戦争がこれ以上長期化しないようG7諸国に働きかけ、早期停戦を図ることが不可欠です。
同時に、ガソリン高の要因となっている、産油国の減産方針を見直すよう、日本政府として、最大限働きかけを行うべきです。
②税金のあり方見直しを
ガソリン価格を是正するには、税金の見直しも欠かせません。ガソリン価格は、(1)本体価格、(2)ガソリン税(揮発油税+地方揮発油税)(*4)、(3)石油石炭税、(4)温暖化対策税、(5)消費税により成り立っています。ガソリン価格を180円とすると、金額ベースの内訳は、下のように表すことができます。
(*4)ガソリン税 53.8円/lの厳密な内訳は、揮発油税48.6円[うち、本則24.3円]、地方揮発油税5.2円[うち、本則4.4 円])となっている。
(参考)ガソリン価格の内訳(180円/1ℓの場合)
レギュラーガソリン 180円 | |
本体価格 | 107円 |
ガソリン税(本則) | 28.7円 |
ガソリン税(暫定) | 25.1円 |
石油税 | 2.8円 |
消費税 | 16.4円 |
実に、ガソリン価格の40%以上は、税金で成り立っているのであり、中長期的に見ても、その見直しを図るべきです。もちろん、日本は1,200兆円を超える財政赤字を抱えていることから、財政状況は極めて危険な水域に達しています。ガソリン税の減税を行う前提として、社会保障の抜本改革をはじめとする歳出のあり方を徹底的に見直すことが必要です。
まず、ガソリン税の見直すべき点の一つ目は、税金の上に税金が課される「Tax on Tax」です。現在、10%の消費税が、ガソリンの本体価格のみならず、ガソリン税など税金部分にもかけられている状況にあります。これは即刻是正されて然るべきでしょう。これを是正するだけでも、現状で、1リットルあたり6円程度は引き下げることができます。
二つ目は、ガソリン税そのものの見直しです。ガソリン税の税収分は以前、道路特定財源として、道路整備などに活用されていましたが、2009年に一般財源化され、その税収分は、道路関係以外の分野にも使われるようになりました。元々、道路整備などの財源が足りないという理由で、ガソリン税の「本則」税率に「暫定税率」が上乗せされたという経緯がありました。しかし、道路特定財源でなくなった以上、暫定税率をなくすのが筋ではないでしょうか。他の使い道のために財源が必要というのなら、それが、人や物の流通を阻害する要因となるガソリン税である必要性はないはずです。
また、ガソリン税の暫定税率を一時的に下げる「トリガー条項」を発動させるべきだとの声も一部で聞かれます。ただ、トリガー条項の発動を行うならば、先述したように健全財政の議論も同時になされるべきです。一時的に痛みを和らげる形で発動されるならば根本解決にはなりえません。暫定税率分について恒久的な見直しを図るべく、無駄な仕事や行き過ぎたバラマキ政策をやめるべきです。
③金融政策の正常化に向けた環境整備を
ガソリン価格を押し上げているもう一つの理由が、円安です。円安は原油を含めて、輸入品の価格を押し上げる方向に働きます。
今、円安となっている大きな理由は、日本が行っている財政・金融政策にあります。米国のFRBはじめ、各国の中央銀行が、今までとってきた緩和路線を見直し、金利の引き上げを図っている中で、日銀は、これまで通り緩和路線を続けるとの方針を示しています。お金は金利が低いところから高いところへ流れると言われる通り、円を売ってドルを買うという流れが続き、それが円安を招いているのです。
日本も、各国が行っているように、金融緩和の見直しを行えば、円安は是正される方向に動くはずです。しかし、日本の場合、それができない事情があるのです。一つは、日銀の経営危機につながることです。金融緩和路線を見直し、国債の金利が上がれば、それはすなわち国債価格が下落することを意味します。そうすれば、日銀が買い上げてきた国債の価値は下がり、日銀のバランスシート上の資産が大きく目減りして、日銀は債務超過に陥り、経営危機に陥ることになりかねないのです。
もう一つは、政府の財政破綻の危険性を一層高めることです。政府にとってそれは、国債の利払費が上がることを意味します。そうすれば、政府の財政危機が一層深刻なものになるのです。こうした背景から、日銀はすぐには金融緩和方針を改めることができないわけです。
日本政府の秩序なきバラマキと、それにより生み出された国債を日銀が買い続けるという図式が、円安を生み出してきました。円安是正はもとより、そもそも日銀が金融政策を機動的に行えるようにするためには、まず、その構造転換を図らなければなりません。政府は秩序なきバラマキを続けてきたこれまでの路線を見直すことが、金融政策の正常化、円安是正に向けた出発点となるはずです。
このように、ガソリン高騰に補助金を投じること、健全財政の議論なくガソリン税の減税を進めることは、さらなる財政悪化を招くため、ガソリン価格高騰の根本解決とはならないのです。
以上
【全文】
詳細は下記のPDFをご覧ください。
PDF ガソリン価格の値下げに向けて、政府は根本対策を打つべき
ガソリン価格の値下げに向けて、政府は根本対策を打つべき 幸福実現党政務調査会ニューズレター No.34(2023.09.05)