「働き方改革」で貧しくなる日本
働きがいのある国にするために
幸福実現党
党首 釈量子
大手広告会社で2015年に起きた過労自殺をきっかけに、残業時間の上限などを定める「働き方改革」が2019年4月以降、順次施行されてきました。今年4月1日からは新たに運送業と建設業、医師の3つの業種に適用されました。しかし、一律の規制が人々の働き方の自由を奪っており、企業や業界に様々な悪影響を与えています。今こそ、自由のもとでの経済発展の大切さを見直すべきです。
働きたくても働けず手取りが減る
天候に左右される建設業は、工期に合わせるために休日も働かざるをえません。残業を制限するとより多くの人材が必要となって人件費が上がり、経営の圧迫や工事費の上昇にもつながります。運送業においては、長時間労働を伴う長距離輸送から撤退せざるをえない事業者も出ました。このままでは全国の貨物総量のうち、25年には28%が、30年には35%が運べなくなるとも指摘されています(※1)。さらに、労働時間が制限され「働きたいのに働けない」状況となり、十分な収入が得られないため離職する人もいます。そうなれば人手不足が進み、業界全体、ひいては日本経済に深刻な影響を及ぼします。
(※1)野村総合研究所の推計
助けられる患者も助けられない…!?
医療への影響も深刻です。慢性的な医師不足のなか労働時間が削減されれば、病院の経営悪化や、救急を含めた患者の受け入れ抑制につながります。すでに医療体制の縮小を見込む病院もあり、地域医療に多大な悪影響が出ることが懸念されます。さらに、一刻を争う循環器救急診療が崩壊し、心筋梗塞の死亡率が上昇するリスクがあるとの提言(※2)もあります。
(※2)一般社団法人日本心血管インターベンション治療学会の提言
稼げない日本に見切り?若者は海外へ「出稼ぎ」へ
日本の賃金は1992年から30年間、ほぼ横ばいです。それに対してオーストラリアは約2.6倍に増加しているなど、他の先進国と大きく差が開いています(右図)。そうした中、円安の影響もあいまって多くの若者が日本より賃金が高い海外へ「出稼ぎ」に行っています。このままでは日本の人材不足が一層進む恐れがあり、ある意味で日本が“三流国”に転落しつつあるとも言えます。
各国の名目賃金の推移
「小さな政府」こそ発展への道
「働き過ぎ」を国が一律に決めるべきではない
何時間の労働が「働き過ぎ」に当たるかは、当然ながら個人差があります。例えばトラックドライバーへの調査(※3)では、「収入が増えるならもっと働きたい」が42.5%と最多でした(下図)。政府が一律に口出しをすることで様々な歪みが生じて、正常な経済活動までもが妨げられてしまいます。特に中小零細企業には下請けも多く、納期に間に合わせなければ契約違反となってしまいます。仮に残業が少なく快適に働くことができたとしても、会社が倒産して失業することになれば元も子もありません。
(※3)自動車運転者の労働時間等に係る実態調査事業(厚生労働省 令和3年)より
収入のために「働きたい」が多数
「勤勉革命」あってこその経済成長
イギリスでは1700年から1870年までの170年間で、経済規模が10倍にまで拡大(※4)しました。この成長を裏付ける要素の一つが労働時間でした。1760年から1800年において、年間の平均労働時間は約2,631時間から3,538時間へと35%増加したと言われています(※5)。勤勉な努力が国を発展に導いたと言えます。一方、「働き方改革」では「年次有給休暇の取得」も義務付けられています。しかし、日本の有給休暇の取得日数はG7諸国でアメリカに次いで少ないものの、祝祭日の日数では最多です。休日全体はむしろ多い方であると言えます(下図)。これ以上休みを増やし続けるなら日本の生産力が落ちて円安も進み、ひいては国力がさらに落ちていきます。経済成長を目指すならば、人々の勤勉な努力がその原動力であるという視点を大切にすべきです。
(※4)マーク・コヤマ他『「経済成長」の起源』(草思社、2023年)より
(※5)永島剛「近代イギリスにおける生活変化と勤勉革命論」(専修大学経済学会、2013年)より
出典:エクスペディア「有給休暇の国際比較調査」(2022)およびJETRO「世界の祝祭日」より作成
“実はかなり休んでいる” 日本
努力の報われる社会へ
各人が自由意志に基づいて勤勉に働き、世の中を発展させていこうと努力するなかに経済的な発展も訪れます。そのためには「官」をスリム化し、「民」の負担を軽くすることが必要です。「働き方改革」はもちろん、インボイス制度や脱炭素の規制など、民間の経済活動を妨げるものは取り除くべきです。電気代を下げるために原発稼働を進めることも大切です。同時に、少子化対策やマイナンバー普及などを名目としたバラマキをやめて無駄な支出を抑えることが、国民負担率の増加を止めるためには不可欠です。「小さな政府、安い税金」こそ、日本の未来を開く選択であると言えます。
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