一昨日14日、野田政権が「2030年代に原発稼働ゼロ」を目指す新たなエネルギー・環境戦略をとりまとめた。しかしながら、我が党がかねて主張してきたように、脱原発は国力の一層の低下を招き、日本経済の沈没をもたらす愚策にほかならない。政府には、その方針撤回を強く求めるものである。
今回のエネルギー戦略では、原発の新設・増設は行わないといった原則が掲げられ、原子力の代替として火力発電及び再生可能エネルギーが挙げられている。だが、天然ガスや石炭などの化石燃料に傾斜すれば、輸入金額の激増や燃料価格の高騰などによる貿易収支の悪化が避けられないばかりか、有事における途絶リスクの上昇を抱えることとなる。一方、太陽光や風力といった再生可能エネルギーは、出力が不安定であるうえにコストも高く、現時点で我が国の基幹エネルギーとすることは到底出来ない。その導入を急げば、国民経済に過大な負担を強いるだけである。日本経済が低成長にあえぐ中、コスト上昇や電力不足をもたらす原発ゼロが、産業界のさらなる足枷となり、立地競争力の低下による国富流出を促すことは明らかだ。
また、原発ゼロは日本の安全保障上も決して容認することが出来ない。核大国である中国や、核ミサイル開発を急ぐ北朝鮮などの軍事的脅威に直面する中、日本に必要なのは国防強化策である。しかし、脱原発は日本が潜在的な核抑止力を手放すことを意味しており、我が国を危地へと追い込むことになるからだ。
さらに、日本の原発ゼロは、大国として国際社会において果たすべき責任の観点からも許されない。新興国では、その旺盛なエネルギー需要を賄うために原発建設が進められているが、こうした中、最先端の原発技術を有する日本がなすべきは、事故の反省に立って、世界の原発の安全性確保に向けた主導的役割を果たすことにある。また、我が国は米国と原子力協定を締結して、その緊密な連携の下、原子力技術を推進してきたが、今回の方針策定で日本の原発技術が衰退するようなこととなれば、同盟国である米国の技術低下をもたらしかねず、安全保障面にも負の影響を与えることとなろう。ましてや、軍事的に膨張する中国が原発建設を急いでおり、中国の原子力大国化も予見される中にあって、日本が脱原発を進め日米の紐帯を弱めることは、中国を利することにほかならない。原発の分野において中国が大きな影響を持つことは、原発の安全性などの点からも不安が大きい。
したがって、我が国の持続的発展や核の潜在的抑止力の確保のみならず、世界の安全・秩序維持のためにも、日本は原発技術を維持し続けるべきなのである。政府は原発ゼロを打ち出す一方で、大間原発などの建設継続を容認しており、その政策決定が衆院解散・総選挙をにらんだものであることは明らかだ。経済や安全保障への影響を度外視して、国家の根幹たるエネルギー政策を進める現政権は、その存在が「国難」と化している。日本沈没をもたらす現政権の退陣を求めると共に、我が党として日本復活へ向けた活動を力強く進める所存である。
幸福実現党 党首 ついき秀学