中小企業の活力向上に向けて(1)

幸福実現党政務調査会ニューズレターNo.14 2018.1.30

幸福実現党政務調査会ニューズレターNo.14
2018.1.30

中小企業の活力向上に向けて(1)

消費増税の中止・消費税率5%への減税

 2014年4月に、消費税率が5%から8%に増税され、日本経済は大きなダメージを受けました。その後、大企業を中心に回復基調を見せていますが、中小企業をはじめ規模の小さな企業ほど、依然として厳しい状態が続いています(注1)。

 2019年10月に消費税率が10%に増税されることが予定されていますが、消費増税は、日本経済に深刻なダメージを与えかねません。

 また、政権与党は19年10月の消費増税時に軽減税率を導入するとしています。消費税はそもそも事務手続き上、大変複雑な税であるとも言われています(注2)。これに加えて、軽減税率が導入されると、事務処理はさらに複雑になり、企業負担は一層大きなものとなります。

 景気悪化や事務負担の増加により、中小企業の経営が圧迫されるような事態を避けるためにも、19年10月に予定されている税率10%への増税、および軽減税率の導入は中止すべきでしょう。また、経済の活性化のためにはむしろ5%への減税を実施するべきと考えます。

(注1)企業規模別の業況判断指数(*)を見ると、14年4月の消費増税が影響して、大企業・中小企業ともに14年第Ⅱ四半期に指数が急落している。その後、大企業に関しては回復基調を示しているが、とりわけ規模の小さな企業ほど低い水準に留まったままとなっている(「2017年版中小企業白書(中小企業庁)」より)。

(*)業況判断指数(DI; Diffuion Index)とは、日銀短観で発表される景気判断指数のこと。「景気が良い」と感じる企業の割合から「景気が悪い」と感じる企業の割合を引いて算出される。

(注2)企業が行うすべての取引に消費税がかかるわけではないため、企業は消費税の納入に際しては、仕入れ、売上含めた全取引を「課税取引」「非課税取引」「不課税取引」に分類しなければならない。企業にとって多大な事務的負担を要している。

 

法人税10%台への大幅引き下げなど

 日本の法人実効税率は2017年1月現在、29.97%です。2018年度から29.74%に引き下げられる予定となってはいますが、中国が25%、シンガポールは17%と、アジア各国と比較しても日本の法人税は比較的高い水準に留まることになります。また、アメリカは先般成立した税制改正法案により、法人税が35%から21%と大幅に引き下げられることが決まっており、国際的にも法人税減税競争のうねりが生じつつあると言える状況です。

 日本の立地競争力を高めるという観点や、資金繰りに窮することも多い中小企業に対する負担を軽減すべきという観点からも、法人実効税率の10%台への大幅引き下げを行うべきです。また、中小企業の活性化に向けては、中小企業に対する法人税の軽減措置(注3)を拡大すべきと考えます。

 赤字企業も業績に関係なく課税対象となる「外形標準課税」の適用拡大に反対します(注4)。

 また、償却用資産に対する固定資産税を廃止するべきでしょう。課税の対象となる事業用資産は付加価値創造の元手に当たるものであり、この部分に課税することは新規設備投資のブレーキともなり、経済成長の阻害要因となります。そもそも、事業用資産へ課税することは国際的に見ても稀であると指摘されています。

(注3)法人税の国税部分の税率は23.4%ですが、中小法人(*)に関しては、課税対象となる所得のうち年800万円以下の部分については、税率を15%に軽減するという措置がとられています。その他、中小企業に向けた優遇措置として、「交際費課税の特例」や「中小企業投資促進税制」などが整備されています(「中小企業税制 平成29年度版(中小企業庁)」参照)。

(*)中小法人とは、(各事業年度終了時において、)資本金又は出資金の額が1億円以下の法人又は資本若しくは出資を有しない法人のことを言う。

(注4)外形標準課税とは、資本金、給与総額、事業所の床面積など事業規模に応じて税額を算出する課税方式のことで、赤字法人も課税対象となる。現在は、資本金または出資金1億円超の法人を対象としている。

 

相続税・贈与税の廃止

 現在、中小企業の後継者不足が深刻化しています。今後10年で70歳を超える中小企業の経営者は約245万人で、そのうち約半分の127万人が後継者未定となっている状況です。経済産業省・中小企業庁の試算によれば、後継者不足をこのまま放置すれば、今後10年間で約650万人分の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があるといいます。

 事業承継の大きな壁になっているのは、承継の際に課される多額の相続税・贈与税です。

 円滑な事業承継を進めるという目的のもと、2008 年5月に「経営承継円滑法」が制定されました。これを受け、相続税・贈与税の一部納税猶予を認める「事業承継関連税制」が創設されています。

 2013年度に、同制度の適用条件の見直しや手続きの簡素化が行われましたが、2016 年8月時点で事業承継税制の活用認定を受けた例は、相続税が959件、贈与税が626件に留まっています(2008年10月~2016年8月)。100万件以上とされる後継者未定の状況を打破するには、より思い切った対策が必要ではないでしょうか。

 2018年度税制改正では、同制度を使いやすくして事業承継をすすめようという狙いにより、雇用確保に関する要件などが緩和されましたが、同税制の利用がどのぐらい伸びるのかは未知数であるというのが実情です。

 事業承継を円滑に進めるための抜本的な解決策として、幸福実現党がかねて訴えている通り、そもそも(非上場株式にかかるものを含め)相続税・贈与税の廃止を推し進めるべきと考えます。

 

労働法制の見直し

同一労働同一賃金

 働き方改革の一環として、同一労働同一賃金を導入することが検討されています(注5)。

 同一労働同一賃金を進めることで、非正規雇用者の賃金を上げるよう制度で押し付けることになれば、企業側にとっては、パート、アルバイト、派遣社員などの待遇改善を行う必要に迫られ、人件費などの面で負担が増大することが予想されます。

 一方、労働者側にとっては、非正規社員に対する人件費が上昇するのに伴い、正規社員の賃金が低下する事態も予想されます。また、これまでの待遇であれば雇われていた非正規社員であっても、人件費の上昇により、企業が新規雇用に消極的になることも考えられます。

 そもそも賃金のあり方については、労使で決めるべきであり、国が介入すべき問題ではないでしょう。同一労働同一賃金の法制化には反対します。

(注5)同一労働同一賃金とは、正社員と非正規社員との間で不合理な格差をなくし、職務内容が同等の労働者に対しては、基本給や賞与、有給休暇など待遇面において対等に扱うべきだとする考え方のことを言う。

 

残業規制

 働き方改革関連法案の柱の一つとして、残業の上限を「月100時間未満」に設定するなどとした罰則付きの「残業規制法案」があります。

 しかし、一律に残業規制を行えば、労使双方が不利益を被ることになりかねません。例えば、従業員の中には、残業代を頼りに生計を立てている人もいるでしょう。また、経営者の立場に立てば、残業を行わないことにより極端に給料が安くなってしまわないよう、労働時間当たりの報酬を増やす必要に迫られる可能性もあります。大企業の中には業務内容の工夫で対応できるところもあるかもしれませんが、中小企業にとってはハードルが高いのではないでしょうか。

 残業規制は政府による過度な民間への介入に他なりません。こうした労働規制の強化に反対します。

 

最低賃金

 働き方改革の一環として、政府は最低賃金を1000円とする目標を掲げています(注6)。

 最低賃金の上昇により企業が負担する人件費が高まることになれば、体力の弱い中小企業に対して大きなコスト負担を押し付けることになります。また、最低賃金以下であれば雇われていた労働者が、最低賃金の設定によって職に就けなくなり、失業者が増えることも予想されます。いずれにしても最低賃金法の見直しを図るべきです。

(注6)最低賃金とは、「最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に払わなければならない」とする制度であり、その水準は、厚生労働省の中央最低賃金審議会がまとめた目安を参考に、各都道府県が定めることとなっている。同制度について、施行日を原則2019年度とし、中小企業に対しては1年間の猶予が与えられることになっている。

 

マイナンバー制度の抜本的な見直し

 現在、金融資産への課税などを念頭にマイナンバーの普及が推し進められています。

 マイナンバーの管理等にかかるコストや事務負担を企業に押し付けたり、また、情報漏えいを行った企業に対しては罰則が科されるなど、企業側に大きな負担を強いているのは明らかです(注7)。

 そのほか、マイナンバー制度は、情報漏えいの危険性があるほか、国家による監視社会の構築や資産課税の強化など自由の抑圧につながるため、廃止を含めた抜本的な見直しを行うべきだと考えます。マイナンバーの適用範囲の拡大を中止するとともに、分野別番号への移行を進めるべきです。

(注7)マイナンバーは個人番号を国民に割り当て、行政機関が社会保障や税、災害対策の3分野で情報を管理するという制度である。マイナンバーの交付が開始されたのは2015年10月。2018年1月からは預貯金口座へのマイナンバーの付番が任意で開始され、預貯金口座とマイナンバーとのひも付けが始まった。このほか、今後、戸籍事務や旅券事務をはじめとして、適用範囲をさらに拡大することが検討されている。

 

人手不足対策

 中小企業を中心に、人手不足の深刻化が指摘されています。昨年の中小企業基盤整備機構によるアンケート調査では、全体の7割以上の中小企業が「人手不足を感じる」と回答しています。

 中小企業の人手不足に対処するために、女性や高齢者が生きがいをもって活躍できる場を提供することはもちろん、有能な外国人人材の積極的な受け入れに向けた環境整備を推し進めるべきです。また、企業・求職者の双方が求める職種のミスマッチの存在も指摘されています。こうしたミスマッチの解消に向けた取り組みも促進すべきでしょう。

 このほか、国の先行き見通しが十分に立たない中で、企業が人手不足を感じながらも雇用を積極化できないという面も否定することはできません。基幹産業となり得る未来産業への戦略的な投資やインフラ整備計画などについて、国として明確な未来ビジョンを提示すべきと考えます。

 

幸福実現党政務調査会ニューズレター No.14

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