【江夏正敏の闘魂一喝!】「憲法九条改正はいかにあるべきか―幸福実現党的に考える」

江夏正敏の闘魂メルマガ vol.106 2018年2月6日発行より転載

 

「憲法九条改正はいかにあるべきか―
幸福実現党的に考える」

憲法改正について、自民党の憲法改正推進本部などで議論されています。

前回のメルマガでは、緊急事態条項の是非について論じさせていただきました。今回は、憲法改正の本丸である九条について論じてみたいと思います。

そして、幸福実現党的な考え方からすれば、「現行九条については、このようにすべきではないか」という案を提示させていただきました。

ただ、憲法の条文を決めることは、一個人としては荷が重すぎます。権威をともなった発信がなさねばならないと感じています。

しかし、今回のメルマガで「安倍首相の加憲論は正しいのか、また、自民党が議論していることに正当性があるか」ということに関し、考える材料にしていただければ幸いです。

 

日本国憲法第九条とは。

 
まずは、現行憲法の九条を確認してみたいと思います。条文は以下の通りです。

[日本国憲法 第二章 第九条【戦争放棄、軍備及び交戦権の否認】]

1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2.前項の目的を達するために、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 

第九条の問題点。

 
この九条は正しいのでしょうか。

まず、「平和を希求する」という平和主義は結構なことだと思います。私たち幸福実現党は世界平和を目指しています。

しかし、「すべての戦争を放棄する」ことは行き過ぎです(いろいろ解釈があると思いますが)。

自衛のための戦争は、憲法以前に存在する国家の固有の権利です。その戦争まで放棄することは主権国家としてはあり得ません。

また、PKOやPKFなど、自衛隊の海外での任務遂行が増えています。

例えば、自衛隊が海外に行って海賊などを追い払うことは、「武力による威嚇」そのものであり、現行憲法では憲法違反となってしまいます。

さらに、「戦力を保持しない」とありますが、では自衛隊の存在は一体何なのでしょうか。

普通に現行憲法を読めば、自衛隊は軍隊であり違憲です。

その上、「国の交戦権は、これを認めない」というのは、完全に、かつてのアメリカがインディアンを征伐したときのような文章の書き方です。

これは人間としての尊厳を認めていないということです。

このように様々な矛盾や、主権国家としてはあり得ない条文が存在していますが、今まで解釈で乗り切ってきました。

ただ、憲法に嘘があることが混乱の原因と言えます。

 

全体的に言えること―半身不随国家。

 
幸福実現党の大川隆法総裁は現行九条に対して「完全に武器を取り上げられて、戦争を放棄し、占領軍に丸裸にされた状態と言えます。

『二度と武器を持って立ち上がることなかれ』と言われているような状態です。

諸外国も同じ状況なら構いませんが、このような状況の国は日本以外にないのです」と懸念を述べています。

このように、日本は、国の主権が認められていない“半身不随国家”の状態なのです。

 

主権の放棄。

 
そもそも、日本国憲法は占領下の憲法なので、国家の主権とうい点において非常に問題があります。

国家には「領土」「国民」「主権」という「国家の三要素」があると言われていますが、この九条の規定は「主権の放棄」と同じことです。

自分の国を自分で守ることができない、それを決断できない、他国に隷属しないと生きていけないということは、「国民の意思で物事が決められない」という主権がない状態なのです。

左翼の人たちは、「主権を放棄すれば平和になる」と言っていますが、それは「敵の監獄のなかに入れば、もう襲われることはない」と言っていることに近いのです。

 

憲法九条が憲法違反。

 
また、「憲法九条自体が“憲法違反”である」と言われています。「国家の主権を認めない憲法などありえない。九条自体が憲法違反している」ということです。

世界各国の情勢が日本と同じようなものであり、日本が“憲法九条体制”のような国に囲まれているのならば、軍隊は別に必要ないでしょう。

しかし、日本を取り巻く情勢は厳しさを増すばかりです。

人間には生きる権利があります。それは国家も一緒です。外国に侵略されるとき、国は自衛権を行使して国民を護ることができます。

それは憲法に明記しようがしまいが、国家は自衛権を持っているのです。その自衛権を否定する憲法自体が憲法違反と言えるのです。

 

安倍首相の加憲論。

 
そこで、2017年5月初旬に、安倍首相が自民党総裁としてのビデオメッセージで、2020年の新憲法施行を目指し、改正項目として、九条一項、二項を残しつつ、自衛隊を憲法に明記する意向を表明しました。

いわゆる加憲論議です。

 

加憲は正しい?

 
この加憲論は正しいのでしょうか。幸福実現党は安倍首相の加憲論に対して、次のように考えます。

「安倍首相の現行九条の一項、二項ともそのまま残しながら、自衛隊の存在を書き加えるというのでは、『白馬は馬にあらず』を憲法に書き込むことであり、解釈論と条文の改訂とを混同している。このような提案をすること自体、リーガルマインドの低さが露呈しており、右も左も抱き込もうとする姿勢が見え見えといえる。

国の交戦権も認めず、戦力も保持しないまま、自衛隊が憲法上の存在となるのは、国の主権を考えていない、情けない政治と言わざるを得ない」

ということで、安倍首相の加憲発言に対して、その撤回を求める党声明をすぐに発しました。

戦力不保持と交戦権否認を定めた九条二項を削除するなどして、自衛隊を「軍」と明確に位置づけるというのが、幸福実現党の基本方針です。

安倍首相の意向は、九条二項の戦力不保持を残しつつ、自衛隊を明文化して合憲の存在と認めようとするものですが、嘘の上塗りになるだけであり、また、国防の手足が縛られた現状になんら変わりはありません。

憲法に詭弁を持ち込んで、また解釈をややこしくすることは、はたして良いのでしょうか。良くないと思います。

 

幸福実現党の「新・日本国憲法試案」での提言。

 
では、現行九条をどのように改正すればよいのでしょうか。

幸福実現党の大川隆法総裁は、2009年に「新・日本国憲法試案」を発表しています。

それは聖徳太子の「十七条憲法」に似たスタイルの、プラグマティックな考え方をも加味した規範的な近未来憲法と言えます。

しかし、幸福実現党の現状から、残念ながら「新・日本国憲法試案」への道のりは遠く感じられます。

ただ、私たち幸福実現党が目指す方向性をご理解いただくために、ここで、「新・日本国憲法試案」の国防に関する条文を紹介いたします。

[新・日本国憲法試案]

第一条 国民は、和を以って尊しとなし、争うことなきを旨とせよ。また、世界平和実現のために、積極的にその建設に努力せよ。
第四条 大統領は国家の元首であり、国家防衛の最高責任者でもある。大統領は大臣を任免できる。
第五条 国民の生命・安全・財産を護るため、陸軍・海軍・空軍よりなる防衛軍を組織する。また、国内の治安は警察がこれにあたる。

 

1997年「(新・第九条)自衛隊とその任務」【参考】。

 
また、1997年にペルー人質事件が起きました。その際、自衛隊の在り方が議論され、大川隆法総裁によって、新・第九条改正案が示されたことがあります。

参考までに、当時の条文を紹介します。

[1997年:新・第九条改正案]

1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を実現し、わが国の平和と独立を守り、国に安全を保つため、陸海空にわたる戦力として、自衛隊を保持する。

2.前項は、在外邦人の生命、安全、財産が、ゲリラ等の武装勢力に脅かされた際に、自衛隊を派遣することを妨げるものではない。

また、同盟国との条約維持上の義務や国際連合等の国際機関の要請によって、自衛隊が海外派遣されることを妨げるものではない。

3.自衛隊によるわが国の防衛、在外邦人の救出、及び、国際信義の履行以外の国内任務については、別途、法律に定めるところによる。

1997年度版を見ると、当時の時代背景がお分かりになると思います。

在外邦人を救出するために自衛隊を派遣すること自体、大議論になっていました。

その不毛な議論に一定の方向性を与えるために九条改正案という形で啓蒙をしていたのです。

現在、安保法制などで、議論が前進しつつあり、わが党は、本来あるべき憲法議論へとシフトしています。

 

現行九条の修正案提示。

 
しかし、上記のような本来あるべき憲法議論としての「新・日本国憲法試案」まで至らない当分の間、現行日本国憲法の解釈とその一部修正案の検討という過渡的な考え方も提示しなければなりません。

そこで、大川隆法総裁は『「現行日本国憲法」をどう考えるべきか』という著書の中で、

「私の『新・日本国憲法試案』に書いたものもありますが、そこに行く前の段階としては、正攻法で、自衛隊の存在を憲法に明記すべきですし、『自衛隊は、国際正義と秩序や平和を護るために機能すべきだ』ということを入れるべきではないかと思います」

と述べています。

 

現時点における九条改正案(私見)。

 
以上の議論から、現行九条改正に向けて、幸福実現党的な考え方をベースに、九条改正案を提示するとするならば以下のようになるのではないかと思います。

 

[九条改正案]

日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を実現し、わが国の平和と独立並びに国民の生命、安全、財産を護るため、陸軍、海軍、空軍よりなる防衛軍を保持する。

 
国の最高法規である憲法の条文を提案することは、一個人の意見では荷が重すぎます。

やはり、権威ある主体からの発信とともに、国会や国民レベルでの議論が必要となるでしょう。

この九条改正案は、「あくまで、幸福実現党的な考え方をベースに提示するとこうなるのではないか」というものです。

 

嘘があることは良くない

 
現行憲法の九条には、芦田修正や解釈によって現実政治に適合しようとしてきました。

しかし、国の最高法規である憲法に、子供でも分かるような嘘があってはならないと思います。

自衛隊は明らかに「陸海空軍その他の戦力」です。外国から見れば、自衛隊は陸軍、海軍、空軍と認められていて、それ以外の解釈をしているところなどありません。

大川隆法総裁は「少なくとも、憲法で嘘を放置し、解釈でそれを逃れるようなことは、長く続けるべきではないし、それができない国民は勇気がなさすぎる」と警鐘を鳴らしています。

軍隊は必要です。これだけの大国になったら、軍隊を持つことは当たり前です。

当然、侵略はしません。その代わり、日本が侵略された時には、国民を護るために、きちんと戦います。

自分の国は自分で守ることができる普通の国になるために、小賢しい加憲論ではなく、正々堂々の憲法改正論を展開すべきだと考えます。

 


 

2、編集後記

自民党などの憲法改正論議は、法律レベルのものを憲法に入れようとしています。

「本来あるべき憲法とはどういうものか」という議論を行いたいのが本音です。

人間がこの地上で生きる意味、そのために自由がどれだけ大切な概念なのか。

その自由を阻害する憲法や法律とは何か。逆に自由を尊重する憲法、法律とは何か。

法哲学や宗教にまで話は及ぶでしょう。

それでこそ、何十年、何百年と耐えうる憲法となると確信します。

 


 

江夏正敏

◆ 江夏正敏(えなつまさとし)プロフィール

1967年10月20日生まれ。
福岡県出身。東筑高校、大阪大学工学部を経て、宗教法人幸福の科学に奉職。
広報局長、人事局長、未来ユートピア政治研究会代表、政務本部参謀総長、HS政経塾・塾長等を歴任。
幸福実現党幹事長・総務会長を経て、現在、政務調査会長。

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◆ 発行元 ◆
江夏正敏(幸福実現党・政務調査会長)

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