【江夏正敏の闘魂一喝!】「日露平和条約の早期締結―中国包囲網の構築[ロシア・EU・北朝鮮・台湾・極超音速ミサイル・憲法改正]」

江夏正敏の闘魂メルマガ vol.122 2018年10月2日発行より転載

 
この度、わが党は「日露平和条約の早期締結を求める」党声明(9月24日付)を発表しました。9月12日の「東方経済フォーラム」で、プーチン大統領の「無条件で日露平和条約を締結する提案」を受けての党声明です。突然のプーチン提案に、安倍首相はじめ日本政府も戸惑っていたようです。ロシアとの間には北方領土問題があるので、その戸惑いも理解できます。しかし、わが党としては、従来の政府、自民党の主張を超えて、北方領土問題を棚上げしても、このプーチン提案に乗って、無条件で日露平和条約を締結すべきと考えます。その理由は中国の軍事的拡張、覇権国家になろうとする野心に対抗するためです。今回のメルマガは、この日露平和条約締結へ向けての論点整理と、膨張する中国に対する包囲網構築について述べていきたいと思います。

 

平和条約とは。

まず、平和条約とは何でしょうか。国同士が戦争となっても、いつかは、戦争は終了します。その際、平和が回復されたことを宣言し、国交が正常化するために結ばれるのが平和条約です。平和条約に盛り込まれる代表的な項目には、「国境」「賠償金」「難民」「負債」などがあります。

 

日本とロシアは平和条約を結んでいない。

第二次世界大戦後、日本はサンフランシスコ平和条約などで、各国と平和条約を結びましたが、唯一、ソ連の継承国であるロシアとは平和条約を結んでいません。それは北方領土問題が解決しておらず、国境線を画定できないからです。

 

日ソ共同宣言が締結されたが・・・。

しかし、北方領土問題があるにせよ、日ソ間に国交がないことは両国にとって不都合な状態です。主権が回復した後、日本は国連への加盟を目指していましたが、国連安保理の常任理事国であるソ連が拒否権を発動しないように関係正常化が必要でした。また、朝鮮戦争も終わり、ソ連ではスターリンが死去し、代わりにフルシチョフが登場してきました。そして、ソ連は西側との「雪解け」へと変化してきたのです。そこで、平和条約締結まで、外交関係を回復し、通商や漁業などの問題を現実に解決するために日ソ共同宣言が交わされました。
ただ、北方領土という国境問題は残されたままです。この日ソ共同宣言のなかに「日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡し(譲渡)する」とあります。

 

北方領土―日本政府の見解。

日本政府の見解は「北方四島は外国の領土になったことがない日本固有の領土であり、ソ連の対日参戦により占領され不法占拠が続けられている状態であり、この問題が存在するため日露間で平和条約が締結されていない」というものです。

 

日ソ共同宣言と日本政府の見解に相違が・・・

ここで、日本政府の「四島返還」と、日ソ共同宣言の「平和条約締結後に二島返還(譲渡)」の間に相違があるように見えます。当時の鳩山内閣は、二島返還を念頭に外交交渉をしていたようです。しかし、吉田前内閣からの現実的外交を、右派左派が糾弾する構図が国内に出来上がり、四島返還要求が国策となっていきました。さらに、米ソ冷戦の中で、北方領土の四島すべてがソ連に渡ることを嫌ったアメリカが、「残りの二島も放棄するならば、アメリカは沖縄を返さない」と日本側に圧力をかけたとも言われています。日ソ共同宣言にみられる二島返還を念頭に置いた鳩山内閣の外交は、内外の圧力で挫折することになり、日ソ共同宣言の締結と引き換えに、国連加盟を実現させ、総辞職になりました。少し中途半端感が残ってしまいました。

 

北方領土―ロシアの見解。

ロシア側の主張は「両国の平和条約締結および、ロシアの千島列島に対する領土権を国際法上で明確に確立するという国益のためならば、平和条約を締結後に歯舞・色丹の二島を日本側に『引き渡し』てもよい」「この立場は日ソ共同宣言で日ロの両国が確認しているので、これから遊離することはあり得ないだけでなく、四島『返還』を求める日本は不誠実である」というものです。さらに、ロシア側は「日本の領有権そのものがすでに消滅しており、両国の平和条約の締結における条件は日ソ共同宣言で確認済みであり、この合意を破棄した日本に問題の根源がある」と見なしており、現在では日本の領土返還主張全面放棄がよりよい解決策であるとの見解を示すようにもなりました。このように、平和条約の締結交渉は、北方領土の全面返還を要求する日本と、平和条約締結後の二島返還、もしくは日本の全面放棄で決着させようとするロシアとの間に、妥協点が見出せないまま、開始が延期されてきたのです。

 

アメリカを意識するロシア。

このように、ロシアはかねてから「日露平和条約締結により、北方二島の『譲渡』に応じる」としています。しかし、ソ連時代から、日露平和条約締結には、日米安全保障条約の破棄ならびに米軍を始めとする全外国軍隊の日本からの撤退が第一条件としています。つまり、ロシアは、米軍が日本に存在していること、さらに、北方領土を返還したら、そこに米軍のミサイル基地ができることを極度に恐れているのです。

 

クリミア問題以降の日米欧の制裁。

2014年にロシアがクリミアを編入して以降、ロシアは欧米各国から制裁を受けました。プーチン大統領の本音としては、経済発展のためにシベリアを開発したいのですが、日本が北方領土にこだわって、話が進まないことを残念に思っているようです。また、シベリアは中国と国境が接しており、中国人が国境線を超えて流入することを、ロシアは潜在的に恐れています。ですから、本来、プーチン大統領は極東アジア、シベリアで、日本をパートナーにして開発を行いたいと思っているのです。ところが、クリミア問題以降、日本もロシア制裁に加わってしまったので、別の方策を考えざるを得ない状況となっているのです。

 

中露接近という悪夢。

一方、独裁・専制国家である共産中国は、過度の軍事的拡張を続けており、世界の覇権国家になろうとする野望があることは明らかです。その一つに、途上国への経済支援という名目で「一帯一路」構想をぶち上げ、お金にものを言わせた新植民地政策を進めています。
世界は、少しずつ中国の危険性に気付き始めているのですが、人口、経済規模、軍事力が大きいため、沈黙しているか、経済援助になびいたりしています。クリミア問題以降、欧米や日本はロシアを経済制裁しましたが、この反動で、ロシアが中国に接近しようとしています。もしくは、日米欧と中国を秤にかけているとも言えるでしょう。ここで、国際正義の観点から考えると、ロシアが中国に接近することが、最悪の事態を招くことになります。この中露接近という悪夢を阻止するためにも、日本は日露平和条約の締結のチャンスをつかみ、早期締結を目指さねばなりません。

 

アジアの制海権。

着々と進んでいるように見える「一帯一路」構想ですが、真の目的は制海権と軍事利用と予想されます。「一路」とは南シナ海からインド洋、そしてヨーロッパへとつながる「21世紀の海上シルクロード」となっています。中国はこの「一路」によって、南シナ海からヨーロッパまでの制海権を握ろうとしています。沿線国に、多額のお金を貸付け、返済ができなければ、その国の土地を奪取するという「債務の罠」を仕掛けています。簡単に言えば「悪徳サラ金」のようなものです。この制海権を中国に握られれば、世界は中国の思惑で動くようになります。それは、近隣国の日本にとっては死活問題ですし、覇権国家アメリカにとっても看過できない事態です。この制海権を握る争いが、中国VS日米という形で、2025年~2050年の間に顕在化してきます。

 

「日露平和条約」締結を最優先に。

ということで、北方領土などの問題がありますが、中国の軍事的拡張、そして、覇権国家への野望を打ち砕くためにも、中国とロシアの接近を阻止し、逆にロシアを中国包囲網に取り込むべく、日露平和条約を今こそ締結すべきだと考えるのです。北方領土の問題を棚上げして、日本、ロシア双方の言い分を押さえて、無条件に平和条約を締結するメリットは大きいと思います。このまま中国が肥大化し、暴発すれば、数億人に及ぶ悲惨な未来が予見されるからです。

 

北方領土の価値。

北方領土の産業として、水産業、林業、農業・畜産業、鉱業があります。しかし、そのほとんどが水産業で、水産資源は百億~数百億と見られています。さらに、現在、良い悪いは別にして、ロシアの軍事基地が建設されていると言われています。訓練場や武器弾薬庫などもあるようです。もし、中露が接近した場合、これらの基地は脅威になりますが、日露平和条約を結び、ロシアと中国を離間させれば、ロシアの軍事基地は、中国から日本を守るものになります。東アジアの国際情勢と、経済的価値をトータルで見て、外交の方針を決めなければならないと考えます。

 

EUを主導するドイツと中国の関係。

ここで、EU、特にドイツと中国について考えてみます。ドイツにとって、中国は自動車などをたくさん買ってくれるお得意様です。さらに、EU諸国にとって、中国は遠い国であり、危険をあまり感じていません。ですから、特にドイツは中国から大きな利益を得ているので、中国の肩を持ちます。また、安全保障面でも、ドイツはロシアの核兵器を脅威に思っており、ロシアをけん制するために中国との関係を重視している面もあります。ドイツは、中国よりもロシアを恐れていると言えるのです。また、中国はマルクス主義の共産主義国家であり、そのマルクスを生み出したドイツを中国人は尊敬していることも、ドイツと中国の関係を良好にしています。

 

中国の危険性をEU(ドイツ)に理解させる。

ドイツのメルケル首相は、難民や移民を助けることを使命に感じている理想主義者です。彼らを救うための経済的利益を出すために、商売相手の中国を悪く思っていないようです。ただ、中国の習近平氏が独裁者ヒトラーのようになってきていることを知らないようです。もしドイツ人が第二次世界大戦を反省するのであれば、アジアに出現しつつある独裁者に警戒をしなければならないでしょう。ドイツはお金儲けではなく、国際正義の観点から外交を行わねばなりません。ドイツのマスコミ論調は「ヒトラーの罪を忘れるな」「我々は他国を侵略することを望まない」「戦争体制には反対する」とドイツ国民に呼びかけています。ならば、中国がまさしくヒトラーのように軍事的拡張をし、チベットやウイグル、モンゴルなどを侵略している事実を重く受け止めるべきです。日米欧が足並みを揃えて、中国に対する包囲網をつくらなければならないのです。

 

北朝鮮を自由主義陣営へ。

また、6月の米朝会談によって、北朝鮮の非核化、無血開城への道筋ができました。北朝鮮内の保守派による巻き返しの恐れなど、予断は許しませんが、日本、そして世界は、北朝鮮の非核化、民主化に準備をしなければなりません。トランプ大統領が敷いたレールに誘導し、北朝鮮の平和解体と、ボートピープルが出ないようにソフトランディングすることがベストでしょう。その際、日本にとって大切な拉致問題を、北朝鮮開国の自由化の流れの中で解決することが良いのかもしれません。開国しさえすれば、日本と北朝鮮を自由に行き来することができ、必然的に被害者家族の皆様が再会することが可能となります。日本はこの北朝鮮開国のチャンスを逃すと、逆に被害者家族の再会が遅くなってしまうことになりかねません。また、この開国、自由化の中で、北朝鮮を中国から分離することが肝要です。中国包囲網の一環として、北朝鮮を自由主義陣営にしっかりと組み込まなければなりません。

 

バチカンの敗北―台湾・香港の危機。

さらに、キリスト教カトリックの総本山バチカン(ローマ法王庁)が、中国国内の司教任命をめぐり中国政府と暫定合意に達したと発表しました。これまで中国は、ローマ法王が全世界の教区ごとに司教を任命する制度を認めず、政府公認の「中国天主教愛国会」が独自に司教を選んできた経緯があります。この合意に対し、香港の元司教である陳日君枢機卿は「ローマ法王庁は中国の信者を売り渡した。絶望している」と批判しています。さらに「暫定合意の内容を秘密にしていることからも、相当に悪いものだろう。問題は今後、中国政府が選んだ司教をローマ法王が拒否できるかどうかだ。拒否が可能だという人もいるが、難しいだろう」「(バチカンが北京に派遣した代表団は)信仰がなく、外交官だ。外交が成功し、信者をだまして喜んでいる。中国共産党がひどいということをローマ法王に伝えてない。だからローマ法王は楽観的だ。中国はバチカンを利用して信者を攻撃するだろう。中国の信者は売り渡された。とても絶望している」(9月25日東京新聞)と嘆いています。一方で、バチカンは欧州で唯一、台湾と外交関係がある国です。中国は「一つの中国」の原則を掲げ、世界各国に台湾との断交を迫っているなか、バチカンが中国との国交正常化に傾けば、台湾が受ける政治的ダメージは大きいと言えます。この合意は台湾・香港が中国に飲み込まれる転機となり得る重大事であり、看過できません。日本は、台湾防衛・独立支援を考えなければなりません。

 

極超音速ミサイル。

台湾・香港の危機とともに、尖閣諸島への護りも緊急の課題です。防衛省は、マッハ5以上の速度で飛行し、相手のレーダー網などをくぐり抜ける「極超音速ミサイル」の開発に乗り出すことにしています。核兵器に代わる次世代兵器とされており、相手のミサイル発射台などをたたく「敵基地攻撃能力」にもつながります。この極超音速の兵器は米国や中国、ロシアが開発を競っており、防衛省は島嶼防衛のための対艦ミサイルなどへの使用を想定しています。超音速で地上の目標に向け滑空、着弾するので、対空火器に迎撃されにくい兵器です。防衛省は「島嶼部に侵攻された場合には陸自の水陸機動団が投入されるが、機動団の上陸・奪還作戦を効果的に実施するには、対地攻撃能力が必要」と説明しています。わが党は「未来を築く123の政策」の016に「極超音速ミサイル」の実現をすでに提唱しており、今回の国際情勢の動きの中で、改めて防衛省の施策に賛意を表します。

 

憲法改正―自民党案はどうかと思うが・・・

このように国際情勢が険しくなっているなかで、日本は足元を固めなければなりません。その一つが憲法改正です。では、自民党の安倍首相が提唱している憲法改正の4項目を簡単に検証してみます。

 

憲法九条。

自民党の憲法九条改正案は加憲論です。すなわち、九条一項、二項を残しつつ、自衛隊を憲法に明記するというものです。自民党案は、九条二項の戦力不保持を残しつつ、自衛隊を明文化して合憲の存在と認めようとするものですが、嘘の上塗りになるだけです。わが党は、戦力不保持と交戦権否認を定めた九条二項を削除するなどして、自衛隊を「軍」と明確に位置づけるというのが基本方針です。ということで、自民党案は、憲法に詭弁を持ち込んでおり、不十分と考えます。

 

緊急事態条項。

日本国憲法には法律まがいの細かな条文が入っており、その影響もあってか法律や法令が煩雑になってきています。結果、国民の自由の領域が狭まっています。あるべき姿の憲法は、国家の理念を提示するものとし、必要最低限のことを定め、あとは法律に委ねることが理想であると思います。ということで、緊急事態への対処は大切なのですが、憲法に法律レベルの条項が増えるので、本来の憲法の姿からすると、あまりよろしくないと考えます。また、現行の制度でも緊急事態への対応は可能ということも付言しておきます。

 

合区解消。

参院の一票の格差による合区解消に向けて、自民党は憲法をいじろうとしています。なぜ、自民党は各都道府県に1名の参院議員にこだわって、憲法改正まで踏み込むのでしょうか。それは、自民党は地方に基盤を持ち、都道府県単位の地方組織が強いからです。都市部と地方の人口格差が広がれば、合区対象県が増え、地方選出の議席数が減るという危機感を持っています。細かいことは省きますが、この憲法改正案は、時代の変化に合わせた改革ではなく、一時しのぎの“誤魔化し”であり、自民党にとって有利になる“ご都合主義”と言えます。本来なら、もっと根本的な選挙制度議論をすべきだと考えます。

 

教育の充実。

教育の充実と言っていますが、本来の目的は教育無償化です。国民は公教育の質の高さを求めており、無償化路線は社会主義・共産主義の発想そのもので、教育のレベル低下を招くでしょう。結果、塾や予備校が喜ぶことになりそうです。とにかく「一律タダにすれば、それで教育がよくなる」というような考えは、責任の放棄であり、教育に対する尊厳を捨てたような感じがします。さらに、無償化は「選挙用のバラマキ」と言っても過言ではありません。

 

今の不十分な自民党案でも改憲すべき

このように、自民党の憲法改正案については、わが党として、言いたいことがたくさんありますが、先ほどから述べていますように、中国の野望によって、国際情勢の危険が増しているなか、早急に「自分の国を守れる体制を確立すること」が最重要と考えます。左翼の護憲勢力の言うままだと、日本の存続が危ういので、今の不十分な自民党案でも改憲すべきだと思います。

 

中国の野望を阻止するために。

いろいろと述べてきましたが、中国の野望を阻止し、日本を守り、世界平和のためにも、まずは、日露平和条約を、安倍―プーチン時代に締結すべきだと考えます。そして、EUと中国を離間させ、北朝鮮を自由主義国主導で非核化、民主化し、台湾防衛に力を入れなければなりません。その結果、中国の一帯一路構想を挫折させ、中国経済を軍事予算削減へと向かわせることが国際正義に適うことであり、世界平和への道であると思います。
多くの国民の皆様に、ご理解とご支援を賜ればと思います。

 


 

編集後記

日露平和条約の早期締結を街頭演説し、チラシを配っています。
国民の皆様の関心事は、年金、介護、医療、税金などが多いのですが、
外交が失敗した場合、それらはすべて吹っ飛ぶほどの影響があります。
世界が狭くなっていくなか、国際関係を適切に乗り切っていくことが、
国民の皆様の幸福の基であると感じます。
日本の未来が明るくありますようにと、祈りながらの毎日です。

 


 

江夏正敏

◆ 江夏正敏(えなつまさとし)プロフィール

1967年10月20日生まれ。
福岡県出身。東筑高校、大阪大学工学部を経て、宗教法人幸福の科学に奉職。
広報局長、人事局長、未来ユートピア政治研究会代表、政務本部参謀総長、HS政経塾・塾長等を歴任。
幸福実現党幹事長・総務会長を経て、現在、政務調査会長。

http://enatsu-masatoshi.com/profile

 


 

◆ 発行元 ◆
江夏正敏(幸福実現党・政務調査会長)

オフィシャルブログ http://enatsu-masatoshi.com/
公式Facebook https://www.facebook.com/Enatsu.Masatoshi.HR
登録(購読無料)はこちらから http://enatsu-masatoshi.com/mag

おすすめコンテンツ