【Web限定ロングバージョン】在日ウイグル人ムカイダイス氏インタビュー

 

―『ウイグル・ジェノサイド』を読んでウイグルの歴史を学ぶと、なぜウイグルの方々がここまで抵抗されているのかが分かりました。

世界はウイグルに対して同情してくれてはいますが、それは同じ人間としての「人道的」な意味からです。しかしこれまでウイグル問題は「侵略されている国々の問題」としては一度も捉えられず、日本のマスメディアや学問は「1つの中国のある地域の民族弾圧の問題」とばかり取り上げてきました。

私は日本にぜひ、中立的な立場で「侵略者とはどういうものか」ということを言ってほしいのです。日本はずっと「日本がアジアを侵略し、中国が被害者である」というでたらめな歴史によって責められてきました。その汚名を「本当の侵略者」に返すべき時が来ているのにもかかわらず、日本では誰からも声が出ていません。

また中国の宣伝によって、「古からウイグルは中国の一部」という嘘が通っているため、私たちは「分離主義者だ」「国家分裂主義者だ」「民族を分断している」などと批判をされています。しかしこれは根本的に間違った考え方です。私たちウイグル人がいつ漢民族を分断したのでしょうか。私たちは北京や上海を分断しようとなどしていません。私たちは「侵略をされている」のであり、「一度失ってしまった主権と独立を取り戻そうとしている」のです。

 

中国共産党による人権弾圧を許してはいけない_10

 

―政治家がそれを知らないと、ウイグル問題を非難しようとしても中国のペースにのせられますね。

チベット人であれ、ウイグル人であれ、モンゴル人であれ、日本が大好きで非常に尊敬しています。どこか価値観的に、本質的な部分で「人間の尊厳」そのものを大事にするところは似ています。

日本には戦前、「防共回廊」という戦略がありました。これには「日本は技術力と軍事力があり、ウイグルやチベット、モンゴルには豊富な資源がある。これが一緒になったときにはじめて互いを補えてアジア共栄圏になる」という地政学的な側面があります。もう一つの側面は思想的なものであり、「共産主義を防ごう」という戦略です。これに対抗するものとして日本には「大和の文化と天皇」があり、ムスリムには「イスラム教」がありました。

 

―「共産党の恐ろしさ」について、どういうところがあると考えられますか。

中国共産党という政権は非常に悪質であり、300万人以上のウイグル人を強制収容所に入れて当たり前だと思っています。そして中国には「中国共産党に抵抗しただけで強制収容所に入れられてしまうなんて、ちょっとかわいそうではないか」という感情もありません。

中国が奉じる共産主義は、人間をモノとして扱い、尊厳を奪い、「生きるのも死ぬのも為政者次第」という考え方の下で人々を洗脳します。そうして育てられた人々には人間性がなくなり、中国共産党が「あの人を殺せ」と言えば殺すし、いつも恐怖の中に生きています。彼らはまず人口を増やし、それを自分の思う通りの「武器」にして、他国に大量に放ち、人々の文化や人間性を攻撃します。「誇り高く生きること」を奪うことが中国共産党の一番の恐ろしさです。

今、ウイグル人の戦う意思を支えている私たちの文学、言語、文学が消滅の危機にあります。一つの民族からそれらを取った時にどうなるか、中国共産党は計算し尽くし、奪おうとしています。「共産党に立ち向かったり、言うことを聞かなかったりすると死ぬんだ」という恐怖に陥れ、「奴隷的な人間」になってほしいのです。

一方でウイグルの文学は何一つ政治の悪口を言うことも、褒めることもありません。中国の文学は文学の本質から離れて、政治を褒めるか、政治への鬱憤を晴らしているかのどちらかです。しかし文学というのは人間の尊厳と、命、愛をうたうものであり、ウイグル文学は中国共産党に70年間脅されてもこの本質から離れたことがありません。決して政治の“おもちゃ”にならなかった文学であり、私はこれを誇りに思います。この文学を日本の皆さんに見ていただきたかったのです(『ウイグル・ジェノサイド』第六章参照)。

 

―そうしたウイグル人の誇り高き精神の根源にはその歴史や文学があります。マニ教やイスラム教の教えなど、そうした宗教的な側面からその強さが出ているのでしょうか。

私たちムスリムは「ジハード精神」を持っています。日本人の皆さんは「ジハード精神」と聞くと“自爆精神”とイメージするかもしれません。しかし、ジハードとは「自分自身を高める。精神的に強くする」ことを意味します。例えば、私が日本に来て日本語を勉強して、ここでみなさんとこのような交流をすることも私にとって一つのジハードなのです。またジハードの多くの意味の1つに「敵が自分の尊厳と自分の国土を踏みにじったとき、その民は命が乾くまで戦いなさい」というものもあります。これはコーランに書いてあります。日本にも「尊王攘夷」というものがありましたが、「敵が来た時にそれを追い出す」という意味では大きく変わるものではありません。

私たちの生命はアッラーが下さったもので、私たちのすべてはアッラーに委ねられています。また弱いところや足らざるところは許してくださいますし、そのアッラーが命じられた「敵と戦う精神」もまた、アッラーが私たちに与えてくださった尊いものなのです。私たちの命は、私たちの知らないようなものすごく尊いところからきていて、アッラーというのがそれだとしたら、命を下さった、私たちを超えた何かに対する礼をもって、与えられたものにお返しをするために生きると考えるのが人間かもしれません。共産党を「パパ・ママ」と言っている中国人はこの思想が理解できません。

 

―以前講演会で「武器を持って戦って死んだ方が幸せだ」と仰っていたことが衝撃的でした。

いま300万人以上のウイグル人が強制収容所の中に入れられ、無念の内に死んでいます。戦って死んだ方が幸せです。ウイグル人は皆そう思っています。

ウイグル人は死を恐れることはないのです。共産党を恐れることもないのです。恐れるべきは「死を恐れて家畜のように生きること」かもしれません。「政府の支配によっていつ殺されるか分からず、言うことを聞かないと死ぬという人生なんてまっぴらだ」と、皆思っています。それこそ共産党が一番恐れている「人間的な精神」です。

ただし、ジハードの本質は「自分の国に入った侵略者を追い出すために命を捧げること」であり、国外におけるすべての暴力に対しては、亡命政府はじめすべてのウイグル人は断固反対します。その意味で、例えば「(雲南省)昆明市でウイグル人が何か悪さをした」「北京の天安門広場でウイグル人がテロをした」という主張はすべて中国共産党の陰謀であり注意が必要です。ウイグル人がパスポートも持たずに北京や上海、昆明などを歩けるはずがないのです。日本の方々は、中国政府がそうした主張をした際はぜひ、その「証拠」を求めてください。私たちは中国政府のようなテロリストではないのです。

 

中国共産党による人権弾圧を許してはいけない_09

収容所内のウイグル人 9099340c-dd10-4392-80c6-8d7a1f90175e/Prachata

 

―世界の中でウイグルを解放できる軍事力を持っているのは現実的にはアメリカです。いまバイデン政権になってウイグルの方々は世界の流れをどのように見ていますか。

これは難しい問題で、私は非常に現実的に見ています。アメリカは「アメリカの国益が第一」で、ウイグルのために本当に何かしてくれるかどうかは分かりません。アメリカは2004年、国益のために実際にはなかった「東トルキスタン運動」を中国と一緒になって「テロ指定」をしたことがあります。

ただ、世界のどの国よりも、東トルキスタン、モンゴル、チベットの独立が日本の国益につながることは確かです。私たちが立ち上がる機会さえあれば、(位置的に)真ん中にいる漢民族、共産党が死ぬ日が来るのです。

日本はイスラム世界に対してもウイグル問題について、もっと情報を発信すべきです。日本の一番の外交の力は「イスラム世界とのパートナーシップ」であり、互いに友達になれたことであると思います。日本にはイスラム世界とウイグルの独立のために頑張っていただきたいのです。日本にはまだその力があると信じています。

難しいことも分かっています。しかし、100年単位で考えたときに、資源が豊かなウイグルとチベット、モンゴルといったところを日本のパートナーにして協力したほうが日本のためになります。私たちは将来、補い合える国家に成長していけると思っています。レアメタルなんて“そこらへんに転がって”います。

 

―いま、日本も尖閣問題をはじめ中国に安全を脅かされています。日本の防衛体制についてなにかご意見があればお聞かせください

私たち東トルキスタンの指導者はかつて共産主義の中国とロシアに挟まれていました。その時、「東トルキスタンが一斉に立ち上がった時に600万人の若者が一気に死ぬ」という計算が立ちました。それを上層部は恐れました。そして上層部は、共産主義の巧妙な外交によって「私たちは平等に連合国を作ろうとしている。あなた達は自治権ももらえてよく生きていける」という中国政府の言葉を信じました。中国はその時には力がありませんでしたが、今、結果的には力がついて、ちょっとでも独立精神があると邪魔になるということで、強制収容所を作って人々を入れていきました。

要するに「立ち向かって死んでいくのか」、それとも「強制収容所に入れられて無念の内に死んでいくか」の違いしかありません。国を植民地化されるということは「平和」ではありません。この違いを私は伝えたいのです。この意味で私は自分の祖先を「非常に愚かなことをした」と思います。先祖は自分と同じ血が流れている若者たちを、戦わせずに牢屋で死んでいく運命にしたのです。これは侵略者より重い罪だと思いませんか。

軍事力と武器さえあれば、私たちはこうはなっていなかったのです。「誰か武器をくれ」と思いました。「日本は戦わないことが平和」などと甘いことを言っていてはいけません。未来の子供たちに対し、大人として責任を持てないときの苦しさ、未練さをウイグルで起きていることをみて感じてほしいのです。

 

―最近、ウイグルで生まれた子供たちは家族と離されて、「共産党が父である」と教育されているということを聞きました。

一昨日からロンドンでウイグル法廷が始まり、証人たちが「強制収容所に300万人入れられて、子供たちも500万人から900万人がどうなっているか分からない」と証言していました。数字はもっと調べる必要がありますが、これほどの許しがたい犯罪はありません。

またBBCで報道されていましたが、強制収容所の女の人たちが“レイプツアー”の対象になっているのです。マスクをした男たちが強制収容所のなかの女の人たちを見て回って、きれいな女の人たちを連れ出すのです。これが「人間の暮らし」でしょうか。戦って死ぬかどうか、どちらかを選べと言われたら戦うでしょう。

私たちの現実を日本国民は知るべきです。一瞬たりとも、戦うこと、命を捧げることを「その時」が来た時にためらってはいけないのです。日本は間違った方向に導かれるべきではありません。日本人は特攻隊をもっと尊敬するべきであり、哀れな気持ちで彼らを見ることは間違いです。

東トルキスタンに戦う精神があれば、泣きながら「私の兄弟がこんなにひどい目に遭っている」というような屈辱的なことを皆さんに言ってはいなかったかもしれません。ご飯を食べて、90歳まで生きることが生きることではないのです。生きることの本質は、その短さや長さにあるべきではないと感じます。

 

―今、国連は役に立っているのでしょうか?また、日本には何ができるでしょうか。

国連は実際、何の役にも立っていません。非難決議一つ出していません。それよりもウイグルで起こっていることを「ジェノサイド」と認定してくれた五カ国の方がありがたいです。認定した時点で、「私たち人間の国は中国を許さないぞ」と態度を示したということです。やはり無実の人々を強制収容所に入れている中国の行為は「アジアの恥」と思うべきで、アジアの国々から声を上げるべきです。

日本にはせめてジェノサイド認定を出してほしいのです。日本はまた中国側についてどうするんだと思います。アメリカやイギリスという世界をリードする民主主義の素晴らしい国々が出しているのに、日本だけ出さないというのは国際的に孤立し、恥ずかしいことです。

 

―ウイグルに手助けするイスラム諸国が出る可能性はあるのか。

今までイスラム世界が声をまったく上げなかったことには二つ原因があります。

一つは「今、イスラム世界自体に力がない」ということです。イスラム世界には20億人近くがいますが、ウンマとしてのイスラム世界の共同体が非常にもろいのです。それにはその一番大きな担い手である「アラブ世界」がイギリスとアメリカによって分断されてしまっていることに原因があります。

そうした中、「アラブ世界を中国側につけるか、アメリカ側につけるか」ということが問題になったときに、中国はお金と外交で先手を打ち始めました。今、アラブ世界に対する中国のマスメディアの影響力は凄まじく、彼らは自分たちでおびただしい数の放送局を作り、美男美女が「宣伝」をしています。例えばカシュガルのモスクで人々が礼拝している映像を偽造し、それを毎日放送しています。

イスラム世界が声を上げないもう一つの原因に、「ウイグル問題はアメリカばかりが発信しているため、イスラム世界が信じていない」という実情があります。アメリカへの信頼がないので「アメリカは中国を悪くするために言っているのだ」と考えてしまうのです。

以上の理由から、私たち何名かがウイグル問題について証言をしたとしても、ほとんどのイスラムの国々はウイグル人の話が真実であるとは信じられないのです。もし日本みたいにイスラム世界から信頼されている中立的な国家が「ウイグル人が本当はこんなひどい目に遭っている」と伝え、イスラム世界の20億の人々がそれを信じ始めたら中国はおしまいなんです。

しかし日本はそれをしていません。学者たちは自分の研究対象でジェノサイドが起きているのに、この問題から逃げているのです。日本が「ジェノサイド認定」をするのにも積み重なった学術的なデータベースが必要です。アメリカでは学者たちが普通に研究しているから「ジェノサイド」であると言えます。一方、日本はそうした論文をまったく翻訳しようとしません。このため、私は日本の学者たちを大変厳しく批判しています。

 

―日本は中国との経済のつながりが大きくて、それが「がん細胞」の様になってしまっています。

日本をはじめアジアの人々に、せめて「中国共産党は悪質でいろんなことで人類を不幸にする」ということを知って頂きたいです。そして「アジアや世界の人たちが誰一人私たちみたいにならないように」という自覚をもって生きるべきであると、教えて頂きたいのです。そうした願いを込めてこの『ウイグル・ジェノサイド』を書かせていただきました。

私たちはどんなことをされても魂レベルで中国に屈服することはありません。そして武器があろうがなかろうが、必ず一回、中国の前に立ちたいと願っています。これがウイグル人の最後のけじめだし、その日は必ず来ます。その時はぜひ私たちの側に立ってください。

以上

ムカイダイス

(プロフィール)

東トルキスタン・ウルムチ出身のウイグル人。
千葉大学非常勤講師。上海華東師範大学ロシア語学科卒業。神奈川大学歴史民俗資料学研究科
博士課程修了。世界文学会会員。訳書に『ああ、ウイグルの大地』、『ウイグル新鋭詩人選詩集』河合
眞共訳( 左右社) 等、他に『万葉集』、『百人一首』、関岡英之著
『旧帝国陸軍知られざる地政学戦略―見果てぬ防共回廊』等のウイグル語訳を手掛ける。

 


 

東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)

中国共産党による人権弾圧を許してはいけない_01

強制収容所での暴行と虐殺

中国共産党は罪のない300万人以上のウイグル人を「再教育」と称して強制収容所に収容しています。そこでは拷問や虐待により、多くのウイグル人が命を落としています。

中国各省の出生率の比較

中国共産党による人権弾圧を許してはいけない_02

出典:オーストラリア戦略政策研究所「Family De-planning: The Coercive Campaign to Drive Down Indigenous Birth-rates in Xinjiang」より作成

 


 

参考 中国共産党による人権弾圧を許してはいけない

参考 幸福実現党NEWS vol.135 中国共産党による人権弾圧を許してはいけない

おすすめコンテンツ