「円安」の背景にある日本の衰退
暮らしに豊かさを取り戻すには
幸福実現党
党首 釈量子
エネルギーや食品の値上がりが続き、家計や企業経営を圧迫しています。主な原因の一つは2022年以降、急速に進行し始めた円安です。これは30年間ゼロ成長を続ける日本経済への信用が失われているからだと言えます。経済を回復させるには、GDPの2倍を超える政府の借金を減らし、安い税金と少ない規制によって民間の努力を後押しすることが大切です。
止まらない円安
家計負担が年10万円増加!?
為替市場では今年4月29日、34年ぶりに1ドル160円台の円安を記録しました。政府は4~5月に過去最大の為替介入(※1)にも踏み切りましたが、円安の傾向は変わりません。6月初旬時点で円の購買力を示す実質実効為替レートは55年ぶりの過去最低水準にまで落ち込みました。行き過ぎた円安が輸入コストの上昇につながっており、今年の家計負担は昨年比で10万円余り増え(※2)、円安による食品の値上げ品目は約3倍に増加している(※3)との試算も出ています。
(※1)円相場の安定のために、政府と日銀が為替市場で大量の円とドルを売買すること。
(※2)二人以上の世帯の場合 みずほリサーチ&テクノロジーズの試算
(※3)帝国データバンクの調査
中小企業の負担増
実質賃金は25ヵ月連続減少
輸出で儲かる一部の大企業は、円安の恩恵を受けて収益を増加させています。一方、原材料費の高騰などによって下請け企業の経営は圧迫されます。円安について6割以上の中小企業が自社の利益に「マイナス影響」と答え、「プラス影響」と答えた企業は7.7%にとどまるとの調査も出ています(※)。そのため、実質賃金は前年同月比で25カ月連続マイナス(過去最長を更新)となり、物価高に賃上げが追いついていません(下グラフ)。
(※)帝国データバンクの調査
出典:厚生労働省
毎月勤労統計調査より(2024年4月分は速報値)
円安の理由は日本経済の衰退
現在、日本の低金利や輸出力の低下によって円売りが進み、円安につながっています。これは他国と比べて日本の経済の生産力が縮小していることの結果と言えます。実際、日本の名目GDPは2023年にドイツに抜かれ、2025年にはインドにも抜かれることが予想されています(右グラフ)。生産量が増えていないのに、バラマキなどで世の中に出回るお金が増えているので、相対的にお金の価値が下がっているのが現状です。
「大きな政府」が円安を加速させる
「円安対策」としてのバラマキは逆効果
円安で物価が上がると、各党からすぐに「給付金を出す」などという政策が出てきます。しかし、このような「大きな政府」の政策は全くの逆効果で、さらに円安を加速させる可能性があります。
政府が少子化対策、物価高対策などの名目でお金をバラまけば、国民の税金や社会保険料の負担が増し、働いても手取りが増えません。このように努力が報われない社会になれば、働く意欲は失われます。その上「働き方改革」などの規制で企業活動を妨げれば、モノやサービスを提供する力は弱まり、経済成長は止まります。この状態でさらに政府がバラマキをすれば、円の価値がさらに下がってしまうのです。
行き過ぎた円安を止める「小さな政府」
① 「規制緩和」と「減税」で経済に自由を
行きすぎた円安を止めるには、モノやサービスの生産を増やせるようにすることが大切です。そのためには「小さな政府、安い税金」で自由の領域を増やし、民間活力を取り戻すことが必要です。
例えば「働き方改革」のような残業規制は、民間企業に人件費増などのコストを押し付け、人手不足を加速させています。さらに原発への規制や再生可能エネルギー普及のための「再エネ賦課金」などは、電気代高騰を引き起こし、企業の国内回帰を妨げています。民間のコストにつながる規制を取り除くと共に、努力した者が報われる「安い税金」によって、生産力を上げて経済成長を実現するべきです。
② 政府の「減量」で健全財政を目指す
円安を止めるには、健全財政を目指す考え方も必要になります。現状では日銀が利上げをすると、政府にとって巨額の国債利払い費が発生して財政を圧迫します(※)。1200兆円にのぼる政府の借金が金融政策の自由性を奪い、日米の金利差を生じさせている面もあります。
バラマキ政策や新しい省庁をつくるといった政府の無駄な仕事を止め、無駄遣いを減らすことが、円の信用を取り戻す王道なのです。
(※)財務省の試算では、長期金利がこれまでの想定より1%上がった場合、2033年度の国債の利払い費がさらに8.7兆円増える。これは2024年度の防衛関係費(約7.9兆円)を上回る。
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