幸福実現党政務調査会ニューズレター No.11
2017.12.05
税制改正議論について──①所得税の控除見直し
現在、政府・与党内で税制改正議論が進められています。今回、所得税のあり方が最大の焦点となっており、働き方の多様化に合わせて控除制度の見直しを進めるとしています。自民党税制調査会の宮沢洋一会長は、昨年の税制改正議論で焦点となった「配偶者控除の見直し」に引き続き、「所得税改革の第2弾をやる」と意気込んでいます。しかし、その「改革」の実態は、高所得者層に対する「増税」に他なりません。以下、詳しく見て参ります。
「所得税改革」の実態
中・高所得の給与所得者を狙い撃ちにした「増税」。
政府内での議論
今回の税制改正議論においては、「働き方の形態によって税の計算方法が大きく異なっており、働き方が多様化しつつある情勢に合わせた所得税制に変更するべきだ」という考え方が背景にあります。
これにより、どのような働き方であっても一律に適用される控除(「基礎控除(注1)」)を拡大する一方、比較的控除が手厚いとされるサラリーマンへの控除(「給与所得控除(注2)(注3)」)を縮小する方向で議論が進められています。
一方で、「高所得者にまで税負担を軽減する必要性は乏しい」「高所得ほど税負担が軽減されることは望ましくない」といった指摘から、基礎控除を高所得者ほど段階的に縮小する案も取りざたされています。
また、自民党税調は、年金受給者に対する控除制度(「公的年金控除」)の見直しを行うとしています。年金収入1,000万円超の人に対する控除に上限を設けたり、年金以外に1,000万円以上の収入がある年金受給者に対する控除を縮小するという方向で、検討されています。
(注1)基礎控除とは、所得税額の計算の際、会社員やフリーランス、年金受給者など全ての納税者に対して一律に適用される控除制度。控除額を現在の38万円から50万円程度に引き上げる方向で調整されています。
(注2)給与所得控除とは、会社員などの収入の一部を(スーツ代など)会社勤めに必要な経費とみなして税額の負担を軽くする仕組みのことを言います。現段階では、控除額を一律に12万円引き下げるほか、現在の控除額の上限額220万円を引き下げる方針です。
(注3)高所得の会社員であっても、子育て世代や介護を抱える世帯は、増税対象から外れる見込みです。
政調会としての考え方
控除のあり方については別途検討が必要ですが、今回、政府・与党が中・高所得者層に対して所得増税を行う方向で議論を進めているのは確かです。しかし、所得増税を行えば、納税したあとに残る所得(可処分所得)が減ることになり、消費が停滞し国内景気が悪化することになるのです。
また、過度な増税によって、働く意欲が減退することも無視できません。中・高所得者をターゲットにする課税強化は、長い目で見て、経済の停滞を招くことになるでしょう。