【政務調査会】原子力委員会によるプルトニウム削減方針について

幸福実現党政務調査会ニューズレター No.17

幸福実現党政務調査会ニューズレター No.17
2018.08.02

原子力委員会によるプルトニウム削減方針について

  • 7月31日、内閣府の原子力委員会はプルトニウムの利用指針を改定し、日本のプルトニウムの保有量を減少させると初めて明記。
  • 今回の指針により、将来の日本におけるプルトニウムの自由な利用に支障が出るだけでなく、原発の運転を制限することにもつながりかねないため、日本のエネルギー政策への影響は甚大である。
  • エネルギーは経済活動の基盤であり、エネルギーの安定供給なくして、国家の自由と繁栄を守ることはできない。既存の原発の再稼動はもとより、原発の新増設、次世代原発の開発、高速増殖炉の実用化などにより、安定的で経済効率的なエネルギー需給構造の実現に努めるべきである。

 

プルトニウムの利用指針を15年ぶりに改定

 問題となっているのは、原発の使用済み核燃料の再処理で生じる「分離プルトニウム」で、日本は2016年末現在47t(国内に約10t、英仏に約37t)※1を保有し、その量は核兵器(長崎型原爆)約6,000発分に相当するとされている。米国を含め国際社会が日本の保有状況を懸念しているとされ、政府はその払しょくに努める必要があるとの認識を示していた。そして、北朝鮮の非核化を求める米朝首脳会談の開催(2018年6月)や、日米原子力協定の自動更新(2018年7月)などが重なったことも、今回の指針改定の背景にあった。

※1 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2017/siryo27/siryo2.pdf

 
 原子力委員会は2003年の旧指針で「利用目的のないプルトニウムは持たない」と定めていたが、今回の新指針では削減の時期や量については定めてはいないものの、「保有量が今の水準を超えない」との旨が定められ、初めて削減に踏み込んだ形となった。

 新指針では、建設中の再処理工場(青森県六ケ所村)でのプルトニウム分離を原発で使う分までしか認めず、再処理工場の運転を制限するとされている。電力業界は全国の原発16~18基(軽水炉)でプルトニウムを燃やすプルサーマルの導入を目指しているが、その進捗は大幅に遅れているのが実情。現在、新規制基準の下で再稼働した原発は全国で5原発9基であり、プルサーマル発電の原子炉は4基(関西、四国、九州の各電力)に留まっている。

 

政調会の見解

 エネルギー資源に乏しいわが国にとって、プルサーマルを含めた核燃料サイクルの重要性は極めて大きいというのが事実。今回、日本の原子力政策の長期的な方向性を示す責任を持つ原子力委員会が、上記のような指針を示したことは残念極まりない。

 今般の指針により、将来の日本におけるプルトニウムの自由な利用に支障が出るだけでなく、使用済み核燃料の再処理が滞り、高レベル放射性廃棄物の容量が増加し、原発の運転を制限することにもつながりかねないため、日本のエネルギー政策への影響は甚大である。

 日本のプルトニウム保有量だけが問題視されているが、民生用プルトニウムだけを見ても、イギリス、フランス、ロシアなどは保有量を増やしており、民生用の再処理工場が今後稼働する中国でも増加が見込まれ、各国とも長期計画に基づいてプルトニウムを消費する予定である。加えて、これらの国では軍事用プルトニウムも保有しているが、軍事用プルトニウムの保有量は正確に報告されているかどうかも疑わしく、日本だけがプルトニウムの削減を迫られることは、極めて不公平であると言わざるを得ない。

 この不公平の背景には、米英仏露中の5か国だけに核兵器保有の特権を認め、その他の国による核開発を禁じた核兵器拡散防止条約(NPT)があるが、NPTであっても原子力の平和利用を禁止しているわけではないので、日本が民生用プルトニウムの保有を制限される合理的理由はない。それにもかかわらず、日本が“国際社会”に配慮して貴重なエネルギー資源であるプルトニウムの利用の選択肢を軽々に手放してしまうことは、自虐史観に基づく謝罪外交にも似て、外交の失敗により国益を喪失し、国民にその負担を強いることになる。

 米国は日米原子力協定において、発電や研究開発など平和利用に限ることを条件に、日本が米国由来の使用済み核燃料を再処理しプルトニウムを分離することを認めているが、福島第一原発事故の後、プルトニウムは燃料として消費されずに在庫が増えていた。一方、プルトニウムは核兵器への転用が可能と喧伝されているものの、日本の軽水炉の使用済み核燃料の再処理で生じる「原子炉級プルトニウム」では核兵器の製造は不可能というのが専門家の見方であり、このようなプルトニウムの保有量をもって日本が「潜在的核保有国」であるというのは正しくない(ただし、日本は高度な原子力技術を有しており、技術的な潜在的核抑止力を持っているという見方は正しい)。

(注)日本のプルトニウム保有量が「原爆6,000発」に相当するというのは、国際原子力機関(IAEA)がプルトニウムの有意量(1個の核爆発装置が製造される可能性を排除できない核物質のおおよその量)を8kgとしていることを根拠としている。
しかし、分離プルトニウムのうち核分裂性のもの(主にプルトニウム239)は3分の2程度であり、原爆製造に適さないプルトニウム240が多く混合した状態(「原子炉級」プルトニウム)になっているため、原爆を製造することはほぼ不可能である。このため、プルトニウム型原爆はプルトニウム239の含有率が93%以上の「兵器級」プルトニウムによって製造される。なお、「原子炉級」プルトニウムでも核テロ攻撃等への転用は可能であるため、核セキュリティの観点から拡散を防止すべきことは言うまでもない。

 
 日本は使用済み核燃料の再処理で生じたプルトニウムを、当面は軽水炉でプルサーマルによって消費するとともに、将来は高速増殖炉の燃料として本格的に利用することを目指していた。しかし、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」は2016年末に廃炉が決定し、「もんじゅ」に代わる当面の高速炉技術開発のため国際協力を行うとしていたフランスの実証炉ASTRID計画も、フランス政府の方針変更により順調に進んでいない。

 高速増殖炉が実現すれば、他国に依存しない莫大な国産エネルギーを生むとともに、核変換によって高レベル放射性廃棄物を減容し有害度を低減できるなど、「技術の宝庫」としての側面もある。中国は2030年頃の高速増殖炉の商用化を目指して開発を進めており、万一日本が開発を放棄すれば、大きな技術格差が生じることになる。わが党が2016年10月28日付の声明「『もんじゅ』廃炉の検討方針を受けて」で述べたとおり、日本は絶対に高速増殖炉の開発を放棄せず、速やかに「新・もんじゅ」の建設に着手すべきである。

※2 「もんじゅ」廃炉の検討方針を受けて(党声明)

以上

 

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