【政務調査会】「骨太の方針」に見る「高市政権の積極財政」の落とし穴

 

2026年8月1日
幸福実現党政務調査会
No.42

 

「骨太の方針」に見る「高市政権の積極財政」の落とし穴

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ポイント

  • 7月21日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる「骨太の方針」を閣議決定した。
  • 国債市場における金利上昇局面を踏まえても、政府には十分な財政的余力がないと言える。この中で、政府投資で経済成長を実現して、相対的な債務残高の大きさを低下させようとする考え方は、危険である。
  • 本来は、歳出カットを通じた減税や、規制撤廃・緩和といった「小さな政府・安い税金」をベースにした政策パッケージにより、民間投資を推し進めるべきだ。

 

高市早苗政権は「骨太の方針」を閣議決定

7月21日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる「骨太の方針」を閣議決定しました。

骨太の方針は、政権が直面する重要課題や、翌年度の予算編成の方向性を決定づける重要なマクロ経済政策の羅針盤と位置付けられます。

6月末、国債市場では、政府が「骨太の方針」の原案が公開されたことを契機に、国債の売り殺到、長期金利の急上昇という「骨太ショック」が生じました。これは、「骨太の方針」の内容から政府の財政規律への懸念が増大したと市場が判断したことによるものと考えられます。とりわけ、「骨太の方針」が閣議決定以降は、中東情勢の緊迫化に伴うドル買いの影響もあって、約39年半ぶりとなる1ドル=163円台の歴史的な円安水準となりました。

以下、今回の「骨太の方針」のポイントについて考えてまいります。

 

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「骨太の方針2026」に対する視点

①今、積極財政を行う財政的余裕はあるのか?

今回示された政府の積極財政の方針に対して、市場が警戒したことにより、「骨太ショック」が生じたわけですが、象徴的であるのが、従来の「骨太の方針」で使われてきた「財政健全化」という文言が使われなくなり、「財政の持続可能性」という表現に後退したというものです。

さらには、今回の骨太の方針では、財政運営目標の中核に、「政府債務残高対GDP比」が据えられることになり、従来掲げられてきたPB(プライマリーバランス)(*1)黒字化目標は明記されなかったことも大きな変更です。

財政破綻の危険性は、債務残高の絶対額そのものではなく、債務者の経済力との相対的な大きさで測られるべきなのは事実でしょう。政府が投資を行ってGDPを拡大させ、「債務残高/GDP」を縮小させることで、財政的持続性を担保しようとする意図も理解することはできます。

しかしながら、国債金利の上昇局面が続き、財政への懸念が見られる中、今、PB黒字化目標をなくし、財政を拡大してでも経済成長を目指すという考え方をとることに正当性を見出すことができるかどうかは、別問題です。

政府財政が破綻に向かわず、安定するには、一定の条件の下で、国債金利よりも(名目)成長率が高いという「ドーマー条件(*2)」を満たす必要があると知られています。

政府による戦略的投資が経済成長に寄与するかは定かではありません。赤字国債の発行を積み増しながら政府投資を行うことが、経済成長率に良い影響を及ぼさないばかりか、今回の骨太ショックでも垣間見られたように、政府財政への懸念により国債金利が上昇するということになると、「政府債務/GDP」は拡大・発散することになり、政府財政は破綻へ向かうことになります。

国債金利の行方は、人々が日本政府に対してどの程度「信用」しているのかに大きく左右されることになります。日本政府への信用が失われれば、英国が財政に対する懸念で実際に国債の大暴落を経験した、いわゆるトラスショックが日本でも起きることになります。

今の日本経済は、財政が破綻に向かうか、健全に向かうかの分岐点にあると言えるでしょう。かつて、アルゼンチンは過剰な政府歳出と中央銀行の財政ファイナンスもあって、深刻な通貨安、デフォルト、ハイパーインフレを経験してきました。自国通貨建の国債であってもデフォルトをしないわけではないのです。現在、アルゼンチンはミレイ大統領の下、歳出の大幅な削減など「小さな政府」化を推し進めていますが、日本は今、かつてアルゼンチンが経験した財政破綻の現実に直面かどうかの岐路に立たされていると言えるでしょう。

日本は今、インフレで税収が上振れしやすい中、過去に低金利で発行した国債が多く、利払費が低く抑えられるという、「財政ボーナス」の状況下にあります。今後は、低金利で発行した国債が、比較的高い金利の国債に借り換えられ、数年後には日本財政は高い利払費に直面することになります。本来、財政ボーナスが消滅しつつある今の時期に、財政が安定か破綻に向かうかわからない「賭け」をするのは、「責任ある積極財政」とは言えません。「収入の範囲内で支出を切り詰める」という健全な考え方を取るべきではないでしょうか。

 

②政府投資に正当性はあるのか

一国が長期的に経済力を高めるためには、労働投入量、資本ストック、全要素生産性(TFP)(*3) という要素を引き上げ、サプライサイドを強化することが必要とされています。

政府は、危機管理や成長分野への投資枠を、通常の歳出とは別枠で設けながら、2040年までに官民合わせて370兆円分の成長・危機管理分野(戦略17分野)(*4)に対する重点投資を行うことで、日本の成長の底上げを図ろうとしています。

しかし、特定分野に対して重点支援を行うという考え方は、従来の産業政策そのものと言えます。例えばGX投資などに見られる(*5)、質、採算性、成長性を伴わない分野への投資に政府がコミットすれば、限られた資源が非効率に使われるようになり、また、有力な産業であっても政府がお金を出せば補助金依存体質が定着し、産業の国際競争力がむしろ低下することに繋がります。

政府は、「先んじて」投資を推し進めることで、民間投資を呼び込むとしていますが、民間企業は採算性の合わない投資は行いません。高市政権の政府投資が民間投資を呼び込むという考え方に対し、企業自身は「半信半疑」であるのが実情です(*6)。政府の積極財政の反面として増税や、金利が上昇することで、民間投資を減退させることにもつながるでしょう。

政府が本来行うべき投資は、原則として、サプライサイドを強化するとともに、「市場の失敗」が見られ民間部門だけには委ねられない分野に限られます。「戦略17分野」はあまりにも総花的と言えます。特に財政余力が乏しい今、政府投資は、概ね防衛分野等に限られるべきと言って良いでしょう。

 

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③政府は民間投資が進む環境づくりに専念すべき

本来、政府は、民間が自由な経済活動の中で積極的な投資を推し進めるような環境整備として、政府の無駄な仕事の減量を通じた歳出カットで減税を可能にするほか、徹底的な規制の撤廃・緩和を行うべきです。

例えば、日本における厳格すぎる規制として挙げられるのが、労働規制です。労働の解雇規制が厳しければ、企業が柔軟に人員を柔軟に調整することを困難にし、リスクをとって投資を行うハードルを高めることにもなります。

また、顕著な例として、建設業においては、2024年に働き方改革関連法における時間外労働の上限規制が運用開始されました。これにより、この規制の中でこれまでと同等の工事量を行うには、新規に人員を確保しなければならず、結果として、投資コストの増大に直面することになります。また、人員を増やせない場合には、一企業が抱えられる案件数に限りが生じることになります。実際に、主に人手不足が原因で「大手・中堅の建設会社の約7割が2026年度内は大型工事を新規受注できない」といった調査報告も上がっています(*7)。

米国第二次トランプ政権では、政府効率化省(Department of Government Efficiency; DOGE)が、巨額の歳出削減、規制の撤廃、省庁再編を推進してきました。日本でも、高市政権が「日本版DOGE」として、「租税特別措置・補助金見直し担当室」を内閣官房に設置しています。しかし、現時点で日本版DOGEが実施しているのは、所得税や法人税の租税特別措置の見直し、つまり増税です(*8)。租税特別措置は税制を複雑にしているのは事実ですが、結果的に増税となったのは、米国のDOGEとは真反対と言えるでしょう。

民間企業は近年、利益を十分確保しているにも関わらず、内部留保を溜め込む一方で、賃上げや設備投資に十分にお金を回していないとする批判を多く受けてきました。しかし、過去の金融危機の際に、貸し渋りや貸し剥がしを経験した企業の立場からすれば、経済の先行き見通しが悪い中で、手元資金を残そうとする防衛意識を働かせて生き残りを図ろうとすることは、至極真っ当と言えます。

企業に設備投資を促し、民間主導の経済成長を実現するのであれば、政府は先行き見通しを良くするための政策パッケージを提示しなければなりません。そのあるべき方向性こそ、幸福実現党は「小さな政府・安い税金」であると考えています。今後とも、幸福実現党は「小さな政府・安い税金」を推し進めるための政策を提言してまいります。

 

以上

 

(*1)PB(プライマリーバランス)とは、政府が社会保障や公共事業などの政策的経費を、国債発行に頼らずにどれだけ税収で賄えているかを示す財政的指標である。「基礎的財政収支」とも言い換えられる。
(*2)ドーマー条件は、「国の経済成長率が国債の金利を上回っていれば、財政赤字を抱えていても、GDPに対する政府債務(借金)の割合は安定し、財政は破綻せずに維持できる」という、財政の持続可能性を示す経済学の定理である。
(*3)全要素生産性(TFP)とは、成長要因のうち、労働や資本以外の芸術進歩や効率化などによるもの。
(*4)政府が示している戦略17分野は、AI・半導体、デジタル・サイバーセキュリティ、情報通信、量子、防衛産業、航空・宇宙、海洋、造船、マテリアル(重要鉱物・部素材)、合成生物学・バイオ、創薬・先端医療、資源・エネルギー安全保障・GX、フュージョンエネルギー、防災・国土強靱化、港湾ロジスティクス、フードテック、コンテンツ。
(*5)幸福実現党政務調査会ニューズレターNo.41「日本経済を弱めるGX戦略は、根本的な見直しを」参照。
(*6)日本経済新聞(電子版, 2026年7月27日付)「高市政権の骨太方針、企業は半信半疑 数字先行の370兆円投資 骨太方針 その先の課題(上)」より。
(*7)日本経済新聞電子版(2026年1月16日付)「大型工事『26年度受注できず』建設会社の7割 成長投資阻む人手不足」参照。
(*8)7月31日時点で、約120件の租税特別措置のうち、廃止方針が示されたのは、わずか1件に留まっている。

 

【全文】

詳細は下記のPDFをご覧ください。

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