首都直下型地震「日本の防災を考える」~濱口和久vs釈量子(未来対談vol.1)
【釈量子の未来対談】第1回 首都直下型地震「日本の防災を考える」
自然災害が多発する中、首都直下型地震に対する危機感も高まっています。
そこで今回は濱口和久先生をお呼びして「首都直下型地震 日本の防災を考える」をテーマに対談をいたしました。
今回はそのインタビュー全文を掲載します。
出演
- 釈 量子
- 幸福実現党 党首
- 濱口 和久
- 拓殖大学大学院 地方政治行政研究科 特任教授
一般財団法人 防災教育推進協会 常務理事
近年多発する自然災害について
釈 「昨今、自然災害が多発する中 首都直下型地震に対する危機感が高まっています。そこで本日は、濱口和久先生をお呼びし、さまざまなお話を伺っていきたいと思います。今日はよろしくお願いいたします。先生は防災に関して、『民間防衛』ですとか、ご著書もおありですが、昨今災害がものすごく増えてまいりました。まずは、その感触をお伺いできればと思います」
「日本版 民間防衛」2018/8/10発刊
濱口和久、江崎道朗、坂東忠信(著)
濱口 「『災害は忘れた頃にやってくる』という言葉がありますが、近年はどちらかというと『災害は忘れる前にやってくる』というような気象状態になってきていると思うんですね。特に今年の夏は、大阪で地震があったかと思ったら今度は西日本での大雨、そして台風21号、そして北海道の地震と本当に立て続けに大きな水害や地震が起こって、私たち日本人も今までに経験したことがないことが続いていると思うんですね。それに対して、じゃあ自分でも何とかしようとか、備えておこうだとか、そういう気持ちを持っている人がどれだけいるかというと、私が見ている限りにおいてはすごく少ないです。」
釈 「今年だけに限ってみても大阪北部地震がありまして、大阪での観測史上最大震度を記録しました。それから7月に西日本豪雨がありまして、各地で観測史上最大の降雨量を記録しています。それからこの夏の猛暑、9月には台風21号による高潮で関西国際空港が水没して、北海道で震度7の地震があり、全道でブラックアウトが起きました。ここまで災害のバリエーションも増えてきて、そういう意味で、ここでやはり、この国のあり方というのを本当に考えるべき時がきていると思います。」
濱口 「実際に私も講演でよく話すのですが、戦争とか紛争というのは確かに起こったら大きな被害が出ますよね。人的被害も物的被害も出ると思うんですけれど、ただ戦争とか紛争というのはもし人間に理性が働けば土壇場で防げますよね。ですが災害、天災というのは、なかなか人間の今の力では防ぐことができない。どんな科学技術力を使ったとしても防ぐことができないわけですから。だから起こることはしょうがない。起こった時にどういうふうに備えておくか。あるいはどう対応するかということが問われると思うんですね。」
ハザードマップを過信しすぎない
濱口 「自分の住んでいる所はハザードマップ上安全だからと思っていたら、そこに大きな被害が出る可能性もあるわけです。東日本大震災の『大川小学校の悲劇』をご存じでしょうか。小学校のグラウンドに避難したら、そこに津波が来て亡くなったという悲劇です。これは実は裁判にもなったのですが、この大川小学校というのは市が作っているハザードマップ上では、『川の洪水では水が来る』となっていたんです。ただ、海から(津波が)ずっと川を遡上してきて、そこまで津波が来るというハザードマップには、なっていなかったわけです。海から大川小学校まで約4キロあるわけですけど、結果的にふたを開けてみたら、津波が来て多くの児童と先生が亡くなったわけですね。ですから、あくまでもハザードマップは目安です。ただ、見ないよりは見ていたほうがいい。これを100%信じるんじゃなくて、あくまでも目安として見た上で自分でもやはり判断する。避難をする。そういう知恵は持っておきたいと思いますね。」
自分の命は自分で守る
釈 「結局、ハザードマップに載っているから危険で、載っていないから安全かというと、そういうわけではないということですね。結局、自分の意識として自分の命は自分で守るという、まさに国防と同じ考え方です。」
濱口 「そうなんですよ。自分の命を守る。家族を守る。それから地域を守る。そして国土を守る。国境を守る。同じ発想だと思うんです。『守る』ということから見た場合、防災も防衛も実は同じなんですね。」
もしも自分が被災したら
釈 「避難場所についてですが、被災地で体育館に避難されている方の所に伺ったんですけれども。ものすごい喪失感で、横になって何もやる気がしないとおっしゃっていました。その理由をお知り合いの方が言っていたのですが。とにかくやらなきゃいけないことが次々にあるんです。家のこと、ローンのこと、家族のこと。やらなきゃいけないことがものすごくのしかかってくるので、それでもう心がいっぱいいっぱいになって、横になって寝ていて何もしたくなくなると。そこから立ち上がるのがものすごく大変だという話をしていました。そうした話を聴くにつけ、そうならないで済むようにするのが防災の使命だと思いますので、もっともっと考えていかなきゃいけないと思います。」
濱口 「確かに、自分の住まいが災害によって被害に遭うというのは、これはハザードマップで安全かどうかに関係なく、起こる時は起こるわけですね。自分の命が助かれば、家族の命が助かれば、また次に何とかつながると思うんですよ。ただ、そうは言いながらもやっぱり、今言われたようないろいろな悩みや心配が出てくるわけです。ローンの問題はどうするのとか、いろいろあると思うんです。それは法律や制度をしっかり知っておけば、こういう制度があるから仮にこうなったとしても、これを申請すれば、とかそういうことを事前にあらかじめ知っておくと全然違うと思うんです。」
自助・共助・公助-①自助について
釈 「自助・共助・公助とよく言われます。一番最初の「自助」の部分が自分の命は自分で守るということになりますけれども。」
濱口 「自助をしっかりできれば人に迷惑をかけないわけですね。そこが大前提です。」
釈 「ご高齢の方を避難させるのが大変だと、よく消防団の方からお話を聴くのですが。」
高齢者など要援護者の避難について
濱口 「今、気象情報が早めにわかりますよね。高齢者の方など、避難するのに介助が必要な人がいる家庭の場合は、まず早めの避難をする。これは自分と家族ができる自助ですよね。早めに避難されておけば助かるわけです。」
釈 「じゃあ、『空振りした』時に『避難して損した』というのではなくて。」
濱口 「そうです。空振りを恐れるんじゃなくて、逆に『よかったね』というふうに持っていく方が良いでしょう。」
釈 「もしかして、何もないかもしれないけれども。それでも談笑しながら『今日は逃げておこうか』ということですね。」
濱口 「そのぐらいの意識を持って『早めの避難をする』のが防災上、災害から身を守るための、一つの行動パターンだと思います。
自助・共助・公助-②「共助」について
濱口 「『共助』といった時に私が最近言うのは、自助と共助の間にもう1個あってもいいだろうと思うんです。それは何かというと『近助』です。『共助』まで行かないんだけどもその間の近くでの助け合いのことですね。自分の家のまわりは『近所』じゃないですか。お隣さんにおじいちゃん、おばあちゃんがいるかもしれない。じゃあ、身寄りがないおじいちゃん、おばあちゃんは、誰が避難所に連れていくの?ということがあるじゃないですか。だからやっぱり、近所の助け合い、そういうのもあっていい。その先が『共助』につながっていくのかなと思うんですね。」
自助・共助・公助-③「公助」について
釈 「自助・近助・そして共助。そして『公助』。」
濱口 「共助もですね、これはやはり日頃から訓練などに参加して、お互いの顔も分かり、そしてお互いにそういうスキルもあることで、『助かる』ということにもつながっていくと思うのですね。」
濱口 「また、基本的に公助はあまりあてにしないことですね。」
釈 「先生、はっきりおっしゃいますが。」
濱口 「あてにしない。公助は、『あればいいな』ぐらいに思ってほしいんですね。逆に公助を期待しすぎて、自助ができなかったら何も意味がないわけです。」
学校での避難訓練・防災教育について
釈 「昔、小学校でよくやった避難訓練で、防災ずきんをかぶって机の下に隠れて、みんなで一斉に校庭に出て終わりというものがありましたね。」
濱口 「これが定番ですね。」
釈 「今の防災教育は変わってきているんでしょうか。」
濱口 「そうですね。最近の防災教育は大分変わってきています。災害の調べ学習とか、あるいは自分の町歩きをして自分の町はどうなっているのか、など、そういうものに変わりつつあるんです。ただ、大半は、今言われたような定番の防災訓練、避難訓練をやっているところが多いです。しかし、それをやっていると子供たちは防災訓練が嫌いになるんです。サイレンが鳴って、学校の校内放送が鳴って、『またか』と、あまり面白みを感じない子供もいるので。」
濱口 「子供たちが自分で興味を持って、こういうものについて考えよう、という形に防災教育も変えていく必要があるでしょう。実際に既にやっているところもありますけど。今、大学受験で理科と社会という科目があるじゃないですか。その時に多くの受験生は、社会科は日本史か世界史で受けるわけです。理科は、物理、化学、生物で受けるわけです。ところがいま起こっている災害の現象だとか、防災の知識というのは、高校の地理や地学で実はある程度カバーできる内容なんです。ところが今ほとんどの高校生は、地学も地理もあまり選択していないわけです。なかなか防災の知識が広まっていかない理由には、それもあると思います。そういう意味では、地学や地理も、ちゃんと高等学校のレベルぐらいでも教えるような形に戻したほうが、今起きている災害に対する人間力、知識も含めて身につくと思います。」
釈 「日本という国の上に住んでいる私たちが、どういう国土で、どういう自然災害にさらされているかを、しっかり学べるというのは大事ですね。」
濱口 「そういう知識があれば、心配されている南海トラフ巨大地震とか、あるいは首都直下型地震、あるいは富士山の噴火、あるいはこの首都圏に大型台風が来た時の対応だとか、そういうことも自ずと自分の中で考えることができると思います。」
首都直下型地震への備え
釈 「首都直下型地震。これが非常に心配されています。M7程度の地震が30年以内に起きる確率は70%もある。そういうことで、いつ起きても不思議ではないという状況です。このあたりの切迫感というのはあまり首都の人たちには……。」
濱口 「ないと思います。もし『30年以内に70%』という地震が今、あるいは明日起こった場合、どうなるかということを考えた場合、寝れませんよ。」
釈 「本当ですね。例えば内閣府が、首都直下型地震の被害想定として『死者2万3000人』としています。」
濱口 「人口も増えて、金融も経済も情報も政治も行政もこれだけ密集している東京でひとたび首都直下の地震が起こった場合は、たぶん、今の内閣府の中央防災会議が示している想定以上の被害が出てもおかしくないと思っています。それに私は、東京発の世界恐慌とは言いませんが、それくらいの大きな被害が出てもおかしくないと思っているんですよ。」
釈 「恐慌ですね。」
濱口 「日本発、東京発の世界恐慌的なものです。
ただ、インフラの整備とか、老朽化したいろいろな施設なども改修・補強などをしておけば、起こるであろうことに対しても被害をかなり少なくすることは可能だと思います。」
電力確保の問題
釈 「電力のところではいかがですか。」
濱口 「今年の北海道の地震でブラックアウトが起こったわけですが。特に日本では今、原発が止まっていますね。そうすると首都圏の電力はどこから来ているかというと、だいたい東京湾周辺の埋め立て地の火力発電所なんです。そうすると、火力発電所のある場所は液状化が起こる可能性がある。液状化によって石油のタンクが傾いたり、そこで漏れたりした場合はとんでもない火災が起こる可能性もある。沿岸部の埋め立て地で火災が起こると、火災はますます広がりますからね。」
釈 「火力発電は地震に弱いですね。」
濱口 「火力発電所も原子力発電所と同じでどちらかというと海側に造ります。やはり液状化や津波など、いろいろな災害に巻き込まれる可能性が大きいと思います。やはり電力に関していうと、日本は非常に脆弱ですよね。」
釈 「結論としては強力な電源を分散して配置する。そういう意味で、原発の耐震性の問題は、新規制基準でクリアしているところの再稼働は、政治の責任でどんどん進めなければいけないと思います。」
濱口 「原発はやはり積極的に再稼働すべきだし、福島原発で津波によって水をかぶって電源が止まったというのは、電源をどこに置いておくかだけの問題です。基本的には日本のエネルギー安全保障を考えても石油に依存する、火力発電に依存するというのは、エネルギー政策上も日本の安全保障を脅かすと思いますので。」
釈 「北海道で今回、ブラックアウトになりましたが、札幌市が試算を出しています。厳冬期の朝5時に震度7の地震が起きた場合、8000人が亡くなってそのうちの6000人が凍死するという試算です。」
濱口 「そういうことも起こりますよね。凍死というのは起こりますね。」
釈 「泊原発の再稼働は早く進めていただかないといけません。」
濱口 「逆に、東京で同じようなブラックアウトが起きた場合、真夏に起こったら大変ですよ。」
釈 「夏ですね。」
濱口 「熱中症、暑さ対策ということから考えると、今年のような夏は猛暑でしたから。猛暑も災害ですからね。(ブラックアウトが)真夏に起こったら電気が使えない、となったら今度は相当、暑さで亡くなる人が出てくると思います。
避難所・避難生活の改善を
濱口 「いまだに避難所って体育館とかに設置されますよね。実は、あの避難所のスタイルというのは、23年前の阪神淡路大震災の時から何も変わってないんですよ。」
釈 「多少、段ボールの間仕切りがしっかりしたのでプライバシーが保護される程度ですね。」
濱口 「二十数年経っても、災害が起こって避難所生活というとほとんど同じ光景じゃないですか。 何の進歩もしていないわけですよ。別に体育館に避難しなくても、私は1家に1台テントがあれば良いと思います。車の中に避難してもエコノミー症候群になったりするじゃないですか。体育館とかだとプライバシーがありません。だけど、だいたい家族4人ぐらいが足も伸ばして寝泊まりができるようなキャンプ用のテントを1家に1台持っておくといいでしょう。仮に避難生活といった時に、水や食糧はもらう所に行けばいいわけですから。家族4人ぐらいが入れて、足を伸ばして寝られるぐらいのテントも災害用の備蓄品として持っておいて、そういうものに行政が補助を出すという。」
地震発生!その時どうする?-高層ビルの倒壊
釈 「高層ビルの倒壊の危険というのは。」
濱口 「あります。」
釈 「ありますか。ビルもある一定の周期を超えると倒れますから。耐震とか免震とかありますが、これは震度7でも耐えられることになっていますが。」
濱口 「それは確かにそれによって揺れが薄まる場合もありますが、これこそまさにさっきの『何が起きてもおかしくない』。倒れる時は倒れます、ビルは。」
地震発生!その時どうする?-ガラスの飛散から身を守る
濱口 「もっと言うとガラスですね。東京や大都市圏は高層ビルのガラスがありますよね。そういうガラスの破片が上から落ちてくることだって十分にあります。」
釈 「大変なことですね。それはどうやって身を守れば良いでしょうか。例えば新宿を歩いていたり、渋谷を歩いていて地震が起きた場合、高層ビルの付近にいたら高層ビルの中に入った方がいいですか?」
濱口 「中に入ったほうがいいです。頭を押さえて(保護して)ビルの中に入ったほうがいいです。間違いなく看板も落ちてきます。そうなった場合は、ガラス、看板、揺れに対して気をつける必要があります。」
地震発生!その時どうする?-地下で地震に遭遇したら
釈「地下にいた場合はどうですか。」
濱口 「地下鉄に乗っていた時は、地下鉄は一応止まります。基本的にはパニックにならないで、そこにいる駅員さんや駅の関係者の指示に従って行動することが大前提です。勝手にバーッと走り出したりすれば、それが逆にパニックになる原因ですから。」
釈 「率先避難の時によく言われますね。一人が走り出すとみんな逃げてくれるという。」
濱口 「だけど、地下などの場合は停電して非常灯だけがついていることもありますね。そうすると1人が変な行動をするとみんな『あっ、ヤバい、ヤバい。ヤバい』と、本当にパニック状態になってしまいます。率先避難というケースも大事ですが、地下などにいる場合は、駅員などの指示に従って行動することを大前提にしないと結果的にパニックになってかえって大きな被害になってしまいます。」
地震発生!その時どうする?-エレベーターに乗っていた場合
釈 「エレベーターの中にいた場合は?」
濱口 「エレベーターにいた場合は一番最寄りの階で下りればいいわけです。とりあえず全部のボタンを押すことです。」
濱口 「最悪、出られなくなる場合があるじゃないですか。一番いいのは普段からエレベーターに閉じ込められた時の脱出方法という訓練があるんです。マンションにお住まいの人、タワーマンションとか、そういうマンションにお住まいの人たちだったらマンションでやる防災訓練、避難訓練でエレベーターに閉じ込められた時の脱出の仕方を毎年訓練すれば、どこのエレベーターに閉じ込められても、脱出できる可能性が大きいと思います。
「防災頭巾」では頭は守れない
濱口 「頭を守るのにさっき避難訓練の防災頭巾という話がありましたが、防災頭巾じゃ守れません。」
釈 「あれは意味ないですか。」
濱口 「意味がないです。もっと言うと、最近はだいぶ変わりましたけど、防災頭巾もつい最近まで耳をふさいでいました。ところが耳をふさぐと音が聞こえません。ということは指示されても聞こえないわけです。だからやはり、耳が出せる、ちゃんとしたヘルメットのほうが自分の身を守る上では間違いなく大事です。」
釈 「1家に1台テントと人数分のヘルメットあったほうがいいですね。寝る時に枕元に置いておいて。」
My「非常持ち出し袋」
釈 「自分の場合には何が必要かというのをシミュレーションしないといけないですね。」
濱口 「『家族の防災パンフレット』にも、今回非常持ち出し袋の例を紹介していますけれども、これはもちろん、すべてあったら一番いいんですよ。ただ、自分は最低限、何を持っておかなきゃいけないかということは、自分で決めておくことが大事ですね。」
釈「自分の命は自分で守る。自分の暮らし、生活を自分で守る。」
濱口 「薬などもそうですね。持病があってこの薬がないと困るってあるじゃないですか。それだけは絶対持っておくというふうにした方がいいと思います。」
「減災」のためのインフラ整備
濱口 「これだけ災害が多くなると、今まであったインフラはもう老朽化しています。それを変えていかないといけません。間違いなく大きな災害は起こっていくわけですから。」
釈 「まさに『コンクリートから人へ』という 民主党政権時代の……。」
濱口 「あれはね、とんでもないスローガンですね。」
釈 「ひどかったですね。」
濱口 「東日本大震災で大きな津波被害を受けた所などは高い防潮堤を造っていますね。確かに、あれだけ高い防潮堤を造ると景色がよくないというのはあると思います。ただ、私が思うのは、やり過ぎは困るけど必要なものはやっぱりちゃんと造っていかないといけない。それがいつ起こるかわからないかもしれない。いつ起こるかわからないけど、起こった時のコストを考えた場合、起こらない時につくるコストのほうが安くつくと思うんです。だからこれはしっかりと整備していくことが大事だと思います。」
「防災シェルター」の整備
釈 「高知県などでは住民全員が入れるような避難塔、タワーのようなものを造っている所もありました。山を大規模にくりぬいて。例えば被災した時のシェルターですね。」
濱口 「シェルターって、どうしても日本の場合『核シェルター』という印象が強すぎるんですよ。核シェルターも防災上、有効的に使えます。お年寄りや足の悪い人は高い所に逃げるのは大変ですが、シェルターであれば、そんなに高い所に逃げなくても少し歩くぐらいで避難できたりするわけです。それを考えた場合、シェルターというのは一つの投資設備として考えた場合、積極的に日本もつくっていくものに変わっていくと思います。」
「復興増税」ではなく「減税」を
釈 「普通、災害があった場合は、増税ではなく減税だと思うんですね。これも早く景気がよくなって経済活動が再開できたら元通りになるわけですので。逆に私たちは政治の考え方としては復興増税ではなく減税だろうと。」
「防災」は「国防」と直結している
濱口 「減税することによって消費を回していく形のほうがいいと思います。『備えあれば憂いなし』という言葉もありますけれども、まずは自分でできることから始めることによってそれが家族に伝わり、そして地域、そして国の防災力にもつながってくると思うし、ひいては防災力が国防、国を守ることにもつながってくると思う。まずはしっかりとそういうところから 考えてもらえれば日本という国が、『強靱化』という言葉もありますが、まさに強靱化した国家になるだろうと思っています。」
釈 「今日お話を伺って私がハッと思ったのは、基本的には国防と防災は一緒。これは両輪だという。まさにこのあたりですね。自分の命は自分で守る。この自覚が日本人隅々まで持てるかどうか。これが決定的なものになるなと感じました。特に首都直下型地震がもし起きた場合、これは国が滅びるかどうかという国難で、日本が最貧国に転落して二度と立ち上がれないような、そういう事態に陥りかねません。そこまで想定してそうならないために投資を国が責任を持ってしっかりとやっていく。この政治のあり方についても深く大きな示唆をいただいたなと思います。本日は本当にありがとうございました。」